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8月5日(土) 行き詰まる岸田政権 総選挙に向けての課題 [論攷]

〔以下の論攷は『全国革新懇ニュース』第451号、7・8月合併号に掲載されたものです。〕

 地獄の蓋が開いたような通常国会でした。日本は平和を維持できるのか、貧しさから逃れられるのか、という岐路に差しかかっています。というより、もはや「崖っぷち」でしょうか。
 1980年代を頂点に90年代からの「失われた30年」の間、下り坂をたどってきました。中曽根康弘首相の時代を転換点に、米国からの軍事分担要請に応じて「不沈空母論」という軍拡路線に転じ、日米構造協議や年次改革要望書などで米国の要求に屈してきたからです。
 政治・行政、経済・貿易、農業や研究開発の各分野で偽りの「改革」を強行し、その行き着いた先が日本の国力低下と自民党の右傾化・劣化でした。米国に隷属した大軍拡と人権・ジェンダー平等の無視という時代逆行の政策も目に余ります。その背景には日本会議と世界平和統一家庭連合(統一協会)の暗躍がありました。

 出口が見えない行き詰まり

 通常国会での悪法のてんこ盛りは、岸田政権が行き詰まり、先進諸国と価値観を共有せず、東アジアの平和を守れないことを示しています。経済の破綻と物価高によって命と暮らしを危機にさらし、難民やLGBTQなどの人権を守れずジェンダー平等を実現する意思を持たないことも明らかになりました。
 核をめぐっても、日本は福島第1原発の過酷な事故を経験し、広島・長崎での唯一の戦争被爆国であり、核廃絶に向けて先頭を切るべき特別の地位と役割をもっています。それにもかかわらず、原発依存から再生エネルギーへ、核抑止への依存から核兵器なき世界へという歴史の流れに逆らい続けてきました。
 マイナンバーカードの強要とマイナ保険証への切り替えの義務化でも様々なトラブルを生み出し、破綻が明瞭になってきています。カードの返上が50万枚近くに達するなど国民の不安と反発は高まっており、このまま強行すれば政権の命取りとなるでしょう。
 深刻なのはこれらの困難を打開するビジョンがなく、トラブルに対する解決策をもちあわせていないことです。出口が見えないという点では正真正銘の行き詰まりだというほかありません。本当の失敗は、失敗したことが明らかになってもやり直しができないことではないでしょうか。
 米国に踊らされて大軍拡に転じた途端に米国は方向転換を始め、「日本が二階に上ったからもういいや」と梯子を外そうとしています。対決路線一辺倒ではやっていけません。中国との緊張緩和、北朝鮮のミサイル発射や核実験の停止などをどう実現するのか。東アジアにおける平和と共存共栄に向けてのビジョンが本格的に問われることになります。
 大軍拡の裏付けとなる国民負担と大増税も大きな問題です。物価高にあえぐ国民生活を直撃することは明らかで、さらなる貧困化は避けられません。少子化対策のための財源確保も増税や負担増に結びつきます。税と社会保障関連費の国民負担率は約5割に近づき、まるで「五公五民」の江戸時代に逆戻りしたようなものです。

 打開への唯一の活路

 これらの困難を打開する唯一の活路は「市民と野党の共闘」です。先の総選挙で、負ければ下野という危機に瀕した自公政権は全力で巻き返し、「第三極」が受け皿となって政権批判が途中下車する結果となりました。
 しかし、維新や国民などの「第三極」との連携では政権の「交代」ではなく政権「後退」になってしまいます。これしかない唯一無二の選択肢が市民と立憲野党の共闘にほかなりません。政権獲得は立憲単独は不可能で、維新は拒否しています。できるところと手を組むしかないでしょう。
 立憲を支持しながら共産党との共闘に反対している連合は、イデオロギー的な偏見を捨て、労働者の利益になるかどうかで判断すべきです。共産党と協力・共同の関係にある全労連とは、実質賃金や最低賃金の引き上げ、労働条件の改善、働く者の人権の重視という点で大きな違いはありません。
 通常国会では、防衛産業支援法以外のすべての法案で立憲と共産は共同歩調をとり、岸田内閣不信任案に賛成したのも立憲と共産だけでした。通常国会の審議では事実上の共闘が実現していたのです。
 これを次期衆院選でも選挙共闘として定着させなければなりません。一時、立憲の泉代表は共産党を含めて選挙協力せずと発言しましたが、立憲内で野党の一本化を求める動きが強まり、実情に応じて柔軟に対応するとの姿勢に変わりました。岡田幹事長も一本化調整を徹底的に追求すると言明しています。
 市民連合を介したなし崩しの連携では「本気の共闘」になりません。小選挙区での統一候補の当選が62、惜敗率80%以上が54、1万票以内が31という前回総選挙の実績を踏まえ、共闘の意思を確認して政策協定を結ぶことが必要です。そのための働きかけを草の根から強めることが総選挙に向けての最大の課題であり、そこにこそ行き詰まった政治の混迷から抜け出せる唯一の活路があります。

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