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8月11日(金) 幕引きのためのアリバイ作りにすぎなかった日報隠蔽疑惑についての閉会中審査 [国会]

 自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)の部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題に関する閉会中審査が衆参両院で開かれました。この隠蔽に稲田朋美前防衛相がかかわっていたのではないかとの疑惑を解明するためのものでしたが、中心人物は招致されず、事実関係ついての説明が拒まれ、再調査もしないなど、結局は幕引きのためのアリバイ作りにすぎなったようです。

 そもそも、隠蔽問題を協議したのではないかという疑惑の中心である稲田前防衛相や防衛省事務方トップの黒江哲郎事務次官、陸上自衛隊トップの岡部俊哉陸上幕僚長の出席が自民党によって拒否されました。疑惑解明のための参考人招致であるにもかかわらず、その疑惑の中心人物を招致しなかったわけです。
 初めから疑惑を解明する気がなかったと言うしかありません。野党の要求に応えたポーズをとり、国民の批判を和らげるためのアリバイ作りにすぎない対応でした。
 自民党は辞任したことを招致拒否の理由としていましたが、田中真紀子元外相を招致した例がありました。今回の対応によって、辞任すれば説明責任を逃れられるという前例を残したことになります。

 委員会の冒頭、小野寺五典防衛相は特別防衛監察の結果を説明して「大変厳しく反省すべきものだと受け止めている。再発防止に努めたい」と述べ、「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しい中、国民の皆さまに本当に申し訳ない」と陳謝しました。そのうえで、「情報公開に対する姿勢に疑念を抱かせ、防衛省・自衛隊のガバナンスに対する信頼を損なった」と反省の弁を述べました。
 しかし、質疑では、野党が防衛監察報告の有無やそれぞれの証言者の内訳などを追及したのに対し、防衛監察本部の担当者は「個人が特定され、供述が明らかになる恐れがあるので差し控える」と踏み込んだ説明を拒み、防衛省の辰巳審議官も「これ以上申し上げることは差し控える」と繰り返し、具体的な説明を拒否ました。また、稲田防衛相に日報データを報告した際のやりとりを残したとされるメモや、陸自がまとめた調査結果の公表を要求されると、小野寺さんは「入手した資料を開示すれば、今後の監察業務に支障をきたす」とノーコメントを連発しました。
 新しい事実が出てこない不毛なやり取りが続いたわけですが、それは関係者が新しい事実を出すことを拒み、隠蔽問題の解明にかかわる事実関係についても更なる隠蔽を繰り返したからです。不毛なやり取りは、野党の質問に対して誠実に答え事実を解明すると言う姿勢が欠落していたからにほかなりません。

 野党側は、防衛省が行った特別防衛監察では引稲田朋美元防衛相の関与の有無が曖昧だとして再調査を求めたのに対し、小野寺防衛相は稲田さんにも間違いがないかを確認したとして「しっかり報告された内容だ」と強調し、再調査を行う考えがないことを明らかにしました。
 これで幕引きを図るために開かれた閉会中審査でしたから、こう答えるのは当然かもしれません。しかし、それで世論は納得するのでしょうか。
 国民の信頼を回復するためには、「隠蔽内閣」としてのあり方を一掃しなければなりません。真相を明らかにするために必要なこと、国民が知りたいことを包み隠さず明らかにすることが必要です。

 自衛隊が日報を公表しない判断をした背景には、安保法に基づく「駆け付け警護」などの新しい任務を付与するために撤収するわけにはいかないという政権への忖度があったのではないでしょうか。この判断については稲田さんだけでなく安倍首相も関与していたのではないかという疑惑は残ったままです。
 第三者による再調査や国会による真相解明、稲田さんだけでなく黒江前防衛事務次官や岡部前陸上幕僚長ら関係者らの証人喚問などが不可欠です。幕引きを図ってウヤムヤにしようという「隠蔽内閣」の目論みを許してはなりません。

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7月11日(火) 加計学園疑惑の参考人質疑で前川「奇兵隊」の逆襲が始まった [国会]

 注目の参考人質義でした。加計学園疑惑での焦点の人である前川喜平前文科省事務次官が国会で初めて証言しました。
 当初、中継しないと言っていたNHKも、世論に押されて中継することになったようです。午前中に衆院で、午後には参院での質疑が放映されました。

 質疑では前川さんと菅官房長官、萩生田官房副長官、山本地方創生担当相などの証言が真っ向から食い違う場面がたびたび見られました。どちらが正しいのか、どちらが嘘を言っているのか、よく分かりません。
 このような質疑を見て、所詮は水掛け論だから真相がはっきりすることはないと思われたかもしれません。しかし、この質疑の開かれ方やそこでの応答から明確になったことがあります。
 加計学園疑惑をめぐる状況証拠からすれば、どう考えてみても安倍首相は「真っ黒」だということです。見解が対立しているということは、どちらかが嘘を言っているということになりますが、今回の質疑によってそれについいての判断材料が沢山提供されたからです。

 まず明らかになったことは、政府・与党が真相解明の場を設定することから逃げ続けてきたということです。野党が憲法によって要求している臨時国会の開会を拒み、当初は閉会中審査もやらないと言い、都議選での敗北を受けて前川さんを国会に呼ぶことになっても証人喚問は避け、質疑での資料の扱いについても難癖をつけて開始時間を遅らせました。
 しかも、重要な主役である安倍首相と準主役である和泉首相補佐官、藤原内閣府審議官は出席せず、前川さんが「在職中に担当課からの説明を受けたときに入手した、目にした文書に間違いない」と存在を確言し探せばあるはずだという「萩生田副長官ご発言概要」という内部文書についても松野文科相は再々調査をしないと答えました。カギを握る重要人物であるからこそ出席させないということであり、見つかっては困るからこそ調べないということなのでしょう。
 答弁についても、菅官房長官はつっけんどんな受け答えに終始し、山本地方創生担当相は聞かれてもいないことに早口で延々と答えて時間稼ぎをするなどの醜態をさらしました。落ち着いて堂々とした態度で正確に受け答えしていた前川さんとは大違いです。

 テレビでの放映を見ていた人のほとんどは、証言の内容もさることながら、異なった立場にある当事者相互の対応から、どちらが信用できるのかということを感覚的に判断できたのではないでしょうか。閉会中審査によって参考人質疑を行い、その映像を放映したことは無駄ではなかったと思います。
 証言の中身としても、判断材料がたくさん提供されました。おなじみのセリフである「記憶にありません」という言葉も登場しました。
 この言葉は、都合が悪い事実について肯定するわけにも否定するわけにもいかず、さりとて嘘をつくのも避けたいという場合に用いられる独特の用語です。そして、重要なポイントにさしかかるたびにこの用語を多用していたのは萩生田官房副長官と文科省の常盤高等教育局長でした。

 今回の質疑を通じて、安倍首相の関与を示唆する事実が一つ明確になりました。それは和泉首相秘書官の存在です。
 以前から前川さんは、昨年秋、和泉さんに呼ばれて加計学園の獣医学部の開学手続きを急ぐように催促され、その際、和泉さんが「総理は自分の口から言えないから私が言う」と発言したと証言していました。その内容が事実かどうかは分かりませんが、少なくとも国家戦略特区とは職務上のかかわりを持たないはずの首相秘書官が文科省の次官を呼びつけたことは事実です。
 国家戦略特区については内閣府の所管であって官邸や首相秘書官とは無関係のはずなのに、首相秘書官が登場したということ自体、首相の指示なり依頼なりがあったと理解するのが自然でしょう。「自分の口から言えないから君から行ってくれないか」と。

 和泉さんこそ、カギを握る人物なのだということがはっきりとしてきました。だからこそ、政府・与党はこの人の国会での証言をかたくなに拒んでいるのではないでしょうか。
 隠せば隠すほど、そこには真実が存在しているのではないかとの疑いが増すものです。嘘をつき誤魔化しているからこそ、逃げ回っているのです。
 安倍首相本人もやましいところがないのであれば、堂々と国会を開いて疑問に答えればよいではありませんか。「反省している」「丁寧に説明したい」という自らの言葉が嘘でないというのであれば。

 水掛け論になるのは、嘘を言っても罰せられない参考人質疑だからです。真実を語らなければ罪に問われる条件の下で、改めて証人喚問するべきでしょう。
 早急に臨時国会を開いて予算委員会での集中審議を設定し、安倍首相や前川さんをはじめ関係者の証人喚問を行い国民の疑惑に答えるべきです。逃げれば逃げるほど、「私は真っ黒です」と自白しているようなものなのですから。
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6月15日(木) 「森友」「加計」疑惑封じ込めを狙った共謀罪法案の強行採決を断固として糾弾する [国会]

 本日の朝、政府・与党は「共謀罪」の成立要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を参院本会議で強行採決しました。自民党と公明党の与党と、それに手を貸した日本維新の会の暴挙を断固として糾弾するものです。

 この採決は、与党が参院法務委員会での採決を省略する「中間報告」という異例なやり方で強行されました。野党の抵抗に対して機先を制し、何としても会期内に成立させるための「奇策」が採用されたためです。
 しかし、これこそ究極の強行採決にほかなりません。審議を途中で打ち切り、野党の裏をかいて委員会での採決を行わず、突然本会議を開いて採決を強行してしまったのですから。
 こんな議会運営が許されるのでしょうか。「中間報告」という異例の奇策による完全な「だまし討ち」ではありませんか。

 国民の多くが不安に思っており、最近の世論調査では反対が増え、成立を急ぐ必要はないという意見も多い法案です。これまでの審議でも、心の中が取り締まられるのではないか、一般の人が対象とされるのではないか、拡大解釈によって適用範囲が広がるのではないか、政府に都合の悪い運動などが日ごろから監視され委縮してしまうのではないかなどの疑問が出され、国民の懸念は解消されていません。
 これらの疑問や懸念に丁寧に答えるどころか、問答無用の強権的な対応が取られました。しかも、「良識の府」とされてきた参議院で。
 一体、どこに「良識」が示されているというのでしょうか。まさに立法府の劣化そのものであり、審議の場としての議会の「自殺」ではありませんか。

 政府・与党があえてこのような「禁じ手」に訴えたのは、危機感の裏返しでもあります。都議選を前にして会期延長は避けたかったからであり、安倍首相夫妻にかかわる「森友」「加計」疑惑に一刻も早く幕を引きたかったということでしょう。
 追い込まれていたのは安倍首相です。疑惑は膨らむばかりで、「総理のご意向」と書かれた内部文書の「追加調査」の結果はまもなく公表されます。
 その前に共謀罪を成立させたいというのが、安倍首相の狙いだったのではないでしょうか。自分の都合で国民の懸念を置き去りにし、議会での審議を足蹴にして逃げ込みにかかったというわけです。

 このような強権的で国会軽視のやり方が都議選にどう影響するか、不安を抱えたままの強行だったにちがいありません。こうなった以上、都議選できっぱりとやり返すほかありません。
 野党や国民を馬鹿にした「だまし討ち」によってどれほど大きな代価を支払うことになるのか、目にものを見せてやろうではありませんか。そのチャンスは直ぐにやってきます。
 2013年の特定秘密保護法、15年の安保法、そして17年の共謀罪と、アベ政治の暴走は続いてきました。この戦争できる国造りへの道は、9条改憲へと結びつけられようとしています。

 それをストップさせるためにも、来る都議選で自民党と公明党、維新の会を惨敗させなければなりません。自民党には天罰を、公明党には仏罰を、そして手助けした維新の会には懲罰を……。

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6月8日(木) アベ政治の凶暴化と逆行を象徴する共謀罪法案の強行を許してはならない [国会]

 「いい加減なことばっかし言ってんじゃねーよ」
 これは暴力団の言いがかりでしょうか?
 そうではありません。安倍首相が自席から発したヤジだそうです。

 驚きましたね。こんな人が総理大臣だなんて。
 安倍晋三にトランプ、それに金正恩。こんな人たちが一国のリーダーとして国を率いているなんて、信じられない思いがします。

 その安倍首相は、いよいよ本性を明らかにしてきました。改憲の“本丸”である9条を標的にすることを宣言し、この9条改憲のために共謀罪を新設して反対運動を抑え込もうとしています。
 テロ等準備罪という名前に変えて粉飾を凝らし、オリンピックを名目にして成立を強行しようという狙いです。テロやオリンピックという看板を掲げれば、国民を騙せると高をくくっているのでしょう。
 騙されてはなりません。やってもいない犯罪を取り締まるために、市民や市民活動との違いを曖昧にし、拡大解釈の余地を残しているのは、政府に都合の悪い発言をしたり活動に加わったりする一般市民や正当な市民活動、社会運動を取り締まるためであり、拡大解釈によって共謀罪を適用する余地を残すためです。

 この共謀罪法案の成立に向けて、与野党の攻防が強まっています。加計学園疑惑と「前川の乱」によって追い詰められた安倍首相は、ますます焦りの色を濃くしています。
 野党の質問に対して、思わず口ぎたなくののしってしまったのは、この焦りの現れでしょう。それだけ、余裕を失っているということでもあります。
 共謀罪法案の審議では来週がヤマ場になります。野党が結束して強行採決を許さず、ぜひ審議未了・廃案に追い込んでもらいたいものです。

 国連人権理事会の特別報告者であるジョセフ・ケナタッチさんがプライバシーを制約する恐れを指摘し、報道の自由に関して懸念を表明しています。菅官房長官は口汚く批判するだけでまともに回答していません。
 報道の自由については、日本の「表現の自由」の状況を調査するために昨年4月に訪日した人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者も特定秘密保護法について、ジャーナリストに萎縮効果を与えることのないよう改正を促しました。また、共謀罪については、組織犯罪防止条約についての立法ガイドを執筆した刑事司法学者のニコス・バッサスさんが「条約はテロ防止を目的としたものではない」と語り、「新たな法律などの導入を正当化するために条約を利用してはならない」と警告しています。
 日本政府がこれほどに国連や海外の識者から懸念を表明されたり警告されたりしたことが、かつてあったでしょうか。「美しい国」を唱えていた安倍首相によって、この国は国連や国際社会から後ろ指を指されるような「醜い国」「恥ずかしい国」になってしまったというわけです。

 ここでストップしなければ、取り返しのつかないことになりかねません。そのために残されている時間はそれほど多くないのです。
 追い込まれているのは、安倍首相の方です。森友学園疑惑や加計学園疑惑で国民の信頼を完全に失ってしまった権力者の逆走と強行を、もうこれ以上許してはなりません。

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5月24日(水) 共謀罪の強行採決で安倍首相が作ろうとしている「恥ずかしい日本」 [国会]

 「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法改正案が23日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過しました。維新と自民の「共謀」によって衆院法務委員会で行った強行採決に次ぐ暴挙です。
 これこそ、安倍政権の「狂暴」化を示す何よりの証拠ではありませんか。舞台は参院に移りますが、今後の審議のあり方や加計学院疑惑の進展などによっては廃案に追い込む可能性が生まれてきています。

 この法案は犯罪の合意段階で罪に問い、実行段階から処罰する日本の刑事法の原則を大きく変えるもので、「内心の自由を侵害する」との強い批判がありました。「一般の人」は対象にならないとされましたが、警察などの捜査機関が権限を乱用して市民への監視を強めるのではないか、どういう人が何をした場合に処罰されるのか、は明確になりませんでした。
 また、条文で「準備行為」は「資金や物品の手配」や「下見」とされましたが、普通の市民生活での行為と「準備行為」を区別する基準もはっきりしません。桜並木の下を歩くのが「花見か下見か」が議論されましたが、結局は心の内にまで分け入って調べなければ分かるはずがありません。
 そもそも、この法案でテロが防止できるのか、そのために277もの罪が必要なのかなどの根本的な疑問も解消されないままです。東京オリンピックやテロ防止は、モノ言えぬ社会を作るための口実にすぎません。

 この法律の必要性を裏付けるためにイギリスでのテロ事件などが例に挙げられています。しかし、欧米でのテロ事件の続発は、組織犯罪防止条約によってテロを防止することができないということを証明しています。
 このようなテロ事件は許されず、防止するためのあらゆる手段が用いられなければなりません。その一つがこの条約の締結だとされていますが、近年のテロはこの条約を締結しているイギリス、フランス、アメリカなどで続発しています。
 逆に、この条約を結んでいない日本では、今世紀に入って思想的背景に基づくテロ事件は起きていません。テロ防止のためにすでに13の条約を結んでおり、重大犯罪については予備罪なども導入されており、これらが一定の効果を発揮しているからです。

 このようななかで、共謀罪法案についてプライバシー権に関する国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が懸念を表明した公開書簡を安倍政権に送付しました。「国連人権理事会の特別報告者」とは、単に「個人の資格」でものを言う専門家ではありません。
 国連人権理事会に任命されて報告義務を負い、個別のテーマや個々の国について人権に関する助言を行う、独立した立場の人権の専門家です。「個人」で不適切だとして抗議した菅官房長官は、このことを知らなかったということになります。
 ケナタッチ氏は「早まった判断をするつもりはありません」と断ったうえで、情報の正確性を確かめるための4つの質問を行いました。指摘に間違いがあれば正して下さいと質問をし、「日本政府はいったん立ち止まって熟考し、必要な保護措置を導入することで、世界に名だたる民主主義国家として行動する時だ」と訴えています。

 この問題をめぐって国内の人権団体や国際NGOなど6団体が記者会見を開いて、国連人権高等弁務官事務所に抗議した日本政府を批判しました。法案の審議をストップし、国連の懸念にきちんと対応するよう訴えています。
 会見で「共謀罪NO!実行委員会」の代表の海渡雄一弁護士は、ケナタッチ氏が「日本政府の抗議は、私の懸念や法案の欠陥に向き合っておらず、拙速に法案を押し通すことの正当化は絶対にできない」と反論していると紹介し、「国連からのこのような問いかけに、いったん採決手続きを中止して、きちんとした協議をして欲しい」と述べました。また、ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士も、「政府の態度に遺憾に思っている。特別報告者は、日本だけをターゲットにしているわけではない。日本政府は昨年立候補して、人権理事会の理事国になり、今後3年間、人権理事会規約や特別手続きを重視することを約束している。国際社会から出された声にきちんと、耳を傾ける必要がある」と政府の対応を批判しています。
 日本政府が書簡を無視して抗議したことについて、当のケナタッチ氏は本質的な反論になっておらず「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘し、報道ステーションのインタビューでは「日本政府からの回答を含めて全てを国連に報告する」と述べています。今まで以上に強い対応を検討しているようで、もし国連が動き出すということになれば共謀罪をめぐる状況は大きく変化するにちがいありません。

 安倍政権は国際社会との協調を掲げながら、国際社会から示された懸念を足蹴にして応えようとしていません。日本は何という「恥ずかしい国」になってしまったのでしょうか。
 国会での審議を軽視し、国民に説明して納得を得る努力もせず、採決を強行するばかりか国際的な懸念にも耳を貸そうとしないのが、今の安倍政権の姿です。このような国が、安倍首相のめざす「美しい国」なのでしょうか。

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4月25日(火) 共謀罪で恐るべき監視社会が当たり前になってしまうという悪夢 [国会]

 国会の衆院法務委員会で、共謀罪の審議が進んでいます。特に目立つのは、自民党による慣例を無視した強引な国会運営です。
 野党の反対を押し切って、職権で刑事局長を参考人登録したり、職権で委員会を開いたり、強引に参考人質疑の開催を決定したり、異様なやり方が続いています。これは、何としても今国会中に成立させたいという安倍首相の執念を示すものですが、同時に、このような強引なやり方が野党の反発を強めて世論の警戒心を高め、逆に審議を遅らせるという側面も生まれています。

 異常で強引な運営が行われているのは、正常で普通の運営方法では会期中での成立が危ぶまれるからです。それだけ、この共謀罪法案には問題が多くあります。
 先週の21日に共謀罪法案を審議した衆院法務委員会で、盛山正仁法務副大臣は「一般の人が(共謀罪の捜査の)対象にならないということはない」と明言しました。「一般の方が対象になることはない」と繰り返し強調してきた安倍首相や菅官房長官、金田法相の発言を否定したのです。
 井野俊郎法務政務官も「捜査の結果、シロかクロかが分かる」と、一般の人に対する捜査の可能性を示唆しました。捜査してみなければ怪しいかどうかわからないと言っているわけで、「一般の人」が捜査対象になるのは避けられません。

 それだけではありません。法務委員会で民進党の階猛議員が枝野幸男議員と少々相談をしたとき、それを見ていた自民党の土屋正忠理事が大声でこう叫んだのです。「あれは、テロ等準備行為じゃねえか!」
 共謀罪については「話し合うだけで罪になる」危険性が指摘されてきました。土屋議員の野次は、議員2人の話し合いを「テロ等準備行為」だと恫喝したわけで、まさにこのような危険性を裏付けるものでした。
 たとえ話し合わなくても、準備行為に当たるとみなされるような連絡がメールやラインで送られていれば、それを読んでいなくても「共謀」の罪に問われる可能性があります。そして、このようなメールなどを幅広く監視できるシステムが、すでに存在していることが、今日の『朝日新聞』で次のように報じられました。

 調査報道を手がける米ネットメディア「インターセプト」は24日、日本当局が米国家安全保障局(NSA)と協力して通信傍受などの情報収集活動を行ってきたと報じた。NSAが日本の協力の見返りに、インターネット上の電子メールなどを幅広く収集・検索できる監視システムを提供していたという。

 報道によると、NSAは60年以上にわたり、日本国内の少なくとも3カ所の基地で活動。日本側は施設や運用を財政的に支援するため、5億ドル以上を負担してきた。見返りに、監視機器の提供や情報の共有を行ってきたと指摘している。
 たとえば、2013年の文書では、「XKEYSCORE」と呼ばれるネット上の電子情報を幅広く収集・検索できるシステムを日本側に提供したとしている。NSAは「通常の利用者がネット上でやりとりするほぼすべて」を監視できると表現している。ただ、日本側がこのシステムをどう利用したかは明らかになっていない。

 このような「通常の利用者がネット上でやりとりするほぼすべて」を監視できるシステムが、今のところ、どのように使われているかは不明です。もし、共謀罪が成立すれば、このようなシステムが全面的に活用され、「ネット上でのやり取り」が監視されることになるでしょう。
 すでに、街中には数多くの監視カメラが作動しています。通信傍受法の「改正」によって盗聴の対象が拡大され、知らないうちに通信の内容が傍受される危険性が高まっています。
 超小型発信機によって位置を測定できるGPS(全地球無線測位システム)も犯罪捜査で使われています。3月15日に最高裁は令状なしでの使用は違法だとの統一判断を示して歯止めをかけましたが、共謀罪が成立すれば捜査手段として活用することが合法化されるにちがいありません。

 さらに、コンピューターに蓄積されたビッグデータの犯罪捜査への活用も図られるでしょう。このデータには、ネット通信での情報、監視カメラによる映像、盗聴による音声、そしてGPSによる所在情報など、多様な個人情報が含まれることになります。
 これらの情報を用いて犯罪の計画、準備、相談をでっち上げ、「共謀」した罪によって社会から抹殺することは、今までよりもずっと容易になるでしょう。「犯罪」は犯される前に取り締まられ、当局の判断に応じて恣意的に「犯罪者」が作られることになります。
 監視されていることに気づかず、権力者にとって不都合な言動を行ったとたん「テロ等準備」のための「共謀」を行ったかどで逮捕される、などという恐るべき監視社会が当たり前になるという悪夢が現実となるでしょう。

 たとえそうならなくても、そうなるかもしれないと国民に思わせることが本来の目的なのかもしれません。監視を恐れて不都合な言動を行わず、従順な国民が増えていけば、このような法律の発動さえ必要なくなるのですから……。
 でも、そのような社会になれば、権力の暴走を抑えることができなくなり、民主主義は死滅することになるでしょう。自由な言動が圧殺された息苦しい社会の出現こそ戦争前夜を予示するものであったことを、今こそ思い出す必要があるのではないでしょうか。

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4月14日(金) 共謀罪法案の審議が抱える3つの弱点と1つの壁 [国会]

 いよいよテロ等防止罪という形で「化粧直し」された共謀罪法案が国会に提出されます。自民党の「オウンゴール」続きで予定されていたスケジュールより大幅に遅れました。
 今日、衆院法務委員会で共謀罪の趣旨説明が行われることになっています。すでに3回も廃案になっていますから、与党からすれば「4度目の正直」を目指したいところでしょうが、その前途には「3つの弱点と1つの壁」が立ちはだかっており、そうは「問屋が卸さない」でしょう。

 3つの弱点のうちの一つは法案自体にあります。政府の説明は嘘ばかりで、全く説得力を持ちません。
 実際に罪を犯さなくても計画して準備したと認められれば、捕まえることが可能です。それを認めるのは取り締まる側で、その取り締まりは思想や内心にまで及び、このような法律を制定すれば近代刑法の基本が崩れ、市民や市民運動までが監視の対象となり、モノ言えぬ世の中、政府にとって邪魔なものを排除することのできる社会が出現することになります。
 組織犯罪防止条約の批准やテロ対策を名目にしていますが、組織犯罪とはマフィアなどの経済犯罪であってテロを対象としているわけではありません。この条約を批准しているからといってテロが防げるわけではなく、批准していない日本はすでに多くのテロ対策のための法律を持っていますから今世紀に入ってテロ事件などは起きていず、オリンピック招致の際に安倍首相が胸を張って言ったように、「東京は世界で最も安全な都市」になっています。

 2つめの弱点は、この法案を担当する法務省の金田法務大臣です。金田法相はこの法案の内容を全く理解していず、すでにこれまでの国会審議で明らかになったように、きちんとした説明をする能力を持っていません。
 金田法相は、まだ法案が出ていないからきちんとした説明ができないのだ、本格的な審議は法案が提出されるまで差し控えて欲しいという趣旨の文書を配ったという「前科」があります。大臣が立法府の審議に注文を付けるのかと批判され、撤回して謝罪しました。
 いよいよ法案が提出されるわけですから、本格的な審議が始まり「まだ法案が出ていないから」と逃げ回ることはできなくなります。この法案をめぐっては与党の「オウンゴール」が目立っていますが、本格的な審議が始まって金田法相にまともな答弁ができるのか、自民党執行部としてはヒヤヒヤものでしょう。

 第3の弱点は、与党の一角を占めている公明党です。公明党は国会に提出する以上は成立に全力を尽くすと言っていますが、内心ではそれほど積極的ではなく、腰が引けています。
 もともと、公明党は前の国会から継続審議中の民法改正案と性犯罪を厳罰化する刑法改正案の審議を優先すべきだという立場でしたから、この法案の優先順位は高くありません。そのために与党間の協議に手間どって閣議決定や国会提出が遅れてきたという経過があります。
 この共謀罪法案は「平成の治安維持法」とも言われていますが、その治安維持法によって公明党の支持団体は大きな被害を受けた過去があります。創価学会の創設者である牧口常三郎初代会長は治安維持法違反と不敬罪で逮捕され、獄中で死亡しました。この苦い過去からすれば、やがては創価学会も監視や取り締まりの対象にされてしまうのではないかとの懸念や危惧はぬぐい切れず、公明党支持者の間にも不安があります。

 以上の3つの弱点を強めているのが、通常国会直後に予定されている都議選という「壁」です。都議選の結果はその後の国政選挙に大きな影響を与えてきており、今回の選挙は「都民ファーストの会」を率いる小池都知事による旋風が巻き起こって大きな注目を集める政治イベントになろうとしています。
 共謀罪の成立を目指している与党にとっても、この選挙への影響は意識せざるを得ません。都議会への進出から政治の舞台に登場してきた公明党にとしては最も重視する選挙であり、「離党ドミノ」が止まらず苦戦が予想されている自民党にとっても死活をかけた選挙戦になることでしょう。
 その選挙の前に共謀罪成立に向けて遮二無二強行突破することは、自滅覚悟の「自爆路線」を選択するのでなければ難しいでしょう。この法案がそれほどの緊急性や必要性があるのかという声は、与党の中からも聞こえてきます。

 外交面でも、北朝鮮をめぐって危機的な状況が高まっています。安倍首相の約束と全く逆に、安保法成立以降も日本周辺の安全保障環境は改善せず、悪化を続けるばかりです。
 トランプ政権の樹立を歓迎していた安倍首相ですが、4月16日には東京で日米経済対話が始まります。2国間交渉の開始によってどのような要求が突き付けられるのか、予断を許しません。
 26日からは安倍首相のロシア訪問も予定されていましたが、シリア空爆への支持表明によって実現が危ぶまれています。行ったとしても、大きな成果は期待できないでしょう。

 内政外交ともに、八方ふさがりの状況が強まっています。アベ政治の「黄昏」が訪れてきているということでしょうか。
 このような閉塞状況の下で始まった共謀罪の国会審議です。その前途は決して容易ではなく、野党が結束して対応し、市民とともに手を携えて反対運動を強めていけば、廃案に追い込むことは十分に可能です。
 「2度あることは3度ある」と言うではありませんか。共謀罪を廃案にして、「3度あることは4度ある」ということを証明したいものです。

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3月22日(水) 安倍政権の「狂暴化」を示す「何もしなくても捕まる」共謀罪の国会提出 [国会]

 悪いことをすれば捕まるというのが、これまでの犯罪でした。これからは、悪いことを共謀、つまり、考えたり計画したり相談したり合意したりすれば捕まるという時代になりそうです。
 テロ等準備罪という名前ですが、テロの取り締まりとは無関係です。「狂暴」な人を取り締まる法律なのでは、という誤解もありますが、安倍政権の凶暴化を示す新しい法律だというのが正解でしょう。

 政府は昨日、安倍首相が外遊中で不在であるにもかかわらず、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」法案を閣議決定し、国会に提出しました。「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案という名前になっていますが、共謀罪としての本質に変わりありません。
 この法案では2人以上の計画と準備行為の段階で摘発できます。実際に犯罪が実行される以前の段階での処罰です。準備行為とは何かについて明確な定義はなく、捜査当局にどのように解釈されるか分からない心配があります。
 改正法案の目的は国連の組織犯罪防止条約の締結にあるとされています。この条約はマフィアなどの経済的利益を目的にした犯罪を対象としており、イデオロギーや民族、宗教などを背景としたテロを対象にしたものではありません。

 しかし、安倍首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をしました。五輪招致の演説で、「世界で最も安全だ」と売り込んでいたのは誰だったのでしょうか。
 すでに、日本はテロ対策のために13もの国際条約を締結しており、国内法も整備されています。事実、今世紀に入って日本でのテロ事件は起きていません。
 逆に、テロ防止のためとされている国際組織犯罪防止条約を締結しているアメリカ、イギリス、フランスなどでは、いずれも大きなテロ事件が発生しています。この逆転現象を、安倍首相はどう説明するのでしょうか。

 この法案はテロ防止とは関係なく、この法案が成立しなくても組織犯罪防止条約を締結することは可能だというのが多くの法律関係者の意見です。テロ防止を看板にしたのは国民を騙して共謀罪を新設するための誤魔化しだというべきでしょう。
 実際、「テロ等準備罪」の名前でありながら、条文の中にテロの定義も文字もありませんでした。批判されてからあわてて法案の中に「テロリズム集団」という文字を入れましたが、条文の目的にはテロという言葉は入っていません。
 しかも、この条約を結んでもテロを防止することはできません。テロの根本原因である差別や貧困、格差や憎悪などを解決することができないからです。

 それなのに何故、今になってこのような「心を取り締まる」法案を提出してきたのでしょうか。何もしなくても、目くばせしたりメールが送られてきたりしただけで犯罪に合意したことになり、実際には何も悪いことをしなくても共謀の片棒を担いだことになって捕まってしまう懸念のある法律を。
 取り締まる側の拡大解釈によって内心が取り締まりの対象となり、思想弾圧の手段として用いられるのではないかとの心配もあります。これによって正当な市民活動が委縮し、政治的社会的な運動の自主規制が始まるのではないかという懸念もあります。
 実は、ここにこそ、この法案の真の狙いがあるのではないでしょうか。これまでは不可能であった捜査対象の拡大をちらつかせながら、普通の市民を威嚇して市民活動の足を鈍らせ、運動が発展する前に芽を摘むことができるような取り締まりのための手段を整備することに。

 共謀罪は別名「平成の治安維持法」と呼ばれています。反政府的な思想や運動を取り締まった戦前の悪法の再来という本質を持っているからです。
 再びこのような法律が登場しようとしているのは、反政府的な思想や運動へと発展する可能性のある市民活動が高まってきたからではないでしょうか。派遣村の運動から始まって、脱原発運動、特定秘密保護法案反対運動、安保法制(戦争法)反対運動を経て、昨年の参院選での市民と野党の共闘など、段階を踏んで市民活動は発展を遂げてきました。
 これに待ったをかけ委縮させるための手段として共謀罪のお出ましを願おうとしているのではないでしょうか。国会では与党多数の「一強」体制で、東京五輪やテロ対策を名目にすれば成立させることは可能だと考えたのかもしれません。

 しかし、森友学園にかかわる「アッキード事件」や南スーダンの自衛隊PKOでの日報隠蔽問題などで潮目が変わりました。与党が多数に任せて強行できるような状況ではなくなってきています。
 加えて、法案自体が説得力を持たず、公明党は腰が引けており、金田法相はまともな答弁ができず、都議選を控えていて会期延長や強行採決をやりにくいという4つの弱点を抱えています。強行採決を繰り返してカジノ法案など問題法案の成立を図った昨年の臨時国会とは勝手が違います。
 審議未了・廃案に追い込むことは十分に可能です。反対運動によってどれだけ世論を変え、与党を追い込むことができるかにかかっていると言って良いでしょう。

 この法案は一般市民を対象にしていないと説明されています。ここで言う「一般市民」とは物言わぬ「従順な」市民たちであり、物言う「反抗的な」(と目される)市民たちは除外されています。
 一般市民であっても、「従順」でなくなり「反抗的」に「一変」したとみなされれば、ただちに取り締まりの対象とされるでしょう。「一変」したかどうかは、当局の判断に任されているのです。
 この法律によって、権力者にとって都合の良い「不穏な」ことは考えない市民が増え、政府に楯突けず異論も言いにくい戦前のような「治安維持」社会が実現するかもしれません。そしてそのとき民主主義は死滅し、戦争へのブレーキも失われてしまうのではないでしょうか。まさに戦前がそうであったように……。


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2月21日(火) 通常国会での第4の「アキレス腱」になりつつある森友学園への疑惑 [国会]

 南スーダンPKO、共謀罪、文科省の再就職あっせんという3つの問題に続いて、通常国会での新たな火種が登場したようです。大阪豊中市での森友学園に関する疑惑です。
 疑惑は沢山ありますが、大きく分ければ3つあります。一つは小学校の設立認可に関するもの、2つは小学校の用地である国有地の購入にかんするもの、そして3つは安倍首相並びに昭恵夫人との関係です。

 この4月に「瑞穂の國記念小学院」の開校を目指している森友学園は「塚本幼稚園幼児教育学園」を経営しています。それは普通の幼稚園ではありません。
 教育勅語や五箇条の御誓文を暗唱し、伊勢神宮への合宿参拝を行ったり軍歌を歌ったりという特異な教育を行い、最近ではヘイト文書まで配布しています。戦前型軍国主義教育を堂々と復活させ、それを実践しているわけです。
 このような教育を受けた園児が普通の小学校に入ることによって戦前型教育の効果が薄れないように、同じような教育方針と教育内容での小学校教育を行うために新しい学校を作ろうとしたのがことの発端でした。

 そこで生じている第1の疑惑が、設立に当たっての認可承認の問題です。認可されなければ小学校は設立できません。
 しかし、ここにも二つの問題があります。小学校用地が決まっていない段階での認可という問題と極めて短期間で承認が下りたという問題です。
 設立認可が用地取得のめどが立たないうちに下りたとすれば極めて異例で、普通に考えれば文科省の判断が「異常」であることは明らかです。認可承認には通常1年ほどかかるそうですが、3カ月ほどの短期間で承認されたのも特別扱いされたように見えます。

 第2の疑惑は、不明朗な小学校用地の取得です。これについてはすでに多くの報道がありますが、ほとんど無料で用地を手に入れたことが明らかになりました。
 国有地払い下げに当たっては費用が公開されますが、何故かここだけが公開されませんでした。その後、裁判が提起されて公開されましたが、隣接国有地の約10分の1にあたる1億3400万円で払い下げられています。しかも、一括でなく10年払いで。
 この大幅な値引きについて財務省の佐川宣寿理財局長は「更地の不動産鑑定価格、9億5600万円」から「新たな埋設物があって、その埋設物を撤去する費用を見積もって差し引いた額」と答弁しましたが、売買が決まる前に除染費用として1億3176万円が森友学園に支払われていました。この用地の売買代金が9億5600万円だとされていますから、ほぼタダ同然でこの土地を手に入れたことになります。

 そして第3の疑惑は、前に挙げた二つの疑惑に安倍首相夫妻が深くかかわっているではないかとの疑惑です。森友学園理事長の籠池泰典さんは「日本会議」の幹部で、安倍首相とは10年も前から懇意にしていたと言われています。
 小学校の設立に当たっての寄付金の振込用紙には、当初「安倍晋三記念小学院」の設立のための資金だとの記載があったそうです。現在も名誉校長は「安倍昭恵」とされ、その肩書は「安倍晋三内閣総理大臣夫人」と記載されています。
 つまり、個人ではなく首相夫人としての資格で、名誉校長を務めていることを明記しているわけです。明記する側からすれば首相夫人としての信用と威光を利用しようとする意図があり、明記される側からすれば、それを良しとするほどの強いつながりと教育方針に対するシンパシーがあるということは明らかです。

 これらは疑惑の一部にすぎず、なかには刑事事件に発展する可能性のある事案も含まれています。政治力を背景にした国有地の不正な払い下げ事件はこれまでにもしばしば発生してきましたから。
 今回も臭い匂いがプンプンしています。司直による追及の手が安倍首相の周辺に及べば、安倍内閣は瓦解するでしょう。
 テレビのワイドショーなどのマスメディアが報道に及び腰なのは、それだけ影響が大きいからです。ビビってしまうだけの十分な理由があるということではないでしょうか。

 国会での追及と真相の解明が待たれます。安倍「一強」政権が露呈させた稀有な「弱み」なのですから。
 「ポスト真実」によってウヤムヤにされ、疑惑が握りつぶされてしまうのか。「真実」を明らかにする場としての国会や国会議員の真価とマスメデイアの姿勢が問われています。


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2月9日(木) 通常国会のアキレス腱となった金田と稲田、それに文科省 [国会]

 通常国会で予算員会での審議が続いています。沢山の問題点が明らかになっていますが、なかでも共謀罪、南スーダンへのPKO派遣、文科省の天下り問題が焦点になりつつあります。
 いずれも、安倍政権にとってのアキレス腱になってきています。とりわけ問題の文書を配った金田勝年法相、国会答弁で居直っている稲田朋美防衛相は責任を取って辞任するべきでしょう。

 民進・共産・自由・社民の野党4党は国対委員長会談で「共謀罪」の成立要件を絞って「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐる法相の対応が「資質に欠ける」との認識で一致し、金田法相の辞任要求を自民党の竹下亘国対委員長に電話で伝えました。法案について「国会提出後に議論すべきだ」とした法務省文書を記者団に配布して批判され、撤回した不始末の責任を問われたわけです。
 この法案は「病気の予防を名目にして毒を飲ませる」ようなもので、「現代の治安維持法」にほかなりません。「一般人は対象にならない」などと言って「飲ませ」ようとしている点も、治安維持法のときとそっくりです。
 罪を犯せば捕まるというのが近代刑法の原則ですが、「犯罪」の相談をしただけで捕まえられるようにしたいというのが、この法案の目的です。「考え」や「思い」が取り締まりの対象になり、その相談内容が「犯罪」であるかどうかは捕まえる側の判断に任されます。

 論点は多岐にわたりますが、金田法相はちゃんと答えられません。「法律は得意じゃないんだ。どんな内容になるか分からないし。答えるの面倒だから、質問するのは法案が出てからにしてくれないかなー」と思ったのでしょう。法務省の役人に文書を書かせて記者団に配ってしまいました。
 行政府の責任者が立法府での法案審議について注文を付けたことになります。 政府の長でありながら「立法府の長」だと言ってのけた安倍首相と同様の大間違いです。
 法案提出前からの辞任要求は異例ですが、それだけ問題が大きいということになります。金田さんは「国会の審議テーマに注文をつけるような意図は全くない。文書を撤回し、おわびする」と改めて謝罪していますが、とっとと辞任すべきでしょう。

 辞任すべきなのは、稲田さんも同様です。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の昨年7月の日報に、南スーダン政府軍と反政府勢力との間で「戦闘が生起」と記述されていた問題で、「法的な意味での戦闘行為ではない。武力衝突だ」と説明しました。
 「一般的な辞書的な意味で戦闘という言葉を使ったと推測している。武器を使って人を殺傷したり、物を壊したりする行為はあった」とも述べています。また、防衛省が当初、日報を「廃棄した」としていたことについては「私もさらに探索するよう指示していた。隠蔽(いんぺい)との指摘はあたらない」と釈明しました。
 この日報の公開要求を行っていたのは『平和新聞』編集長の布施祐仁さんです。2月1日付でこのブログにアップした記事「政治転換の機は熟している」は、この布施さんからインタビューされたものでした。

 日報の公開要求が出されたのはPKOへの追加任務が問題にされていた頃で、安倍首相も「戦闘」ではなく「衝突」で現地は安全だと強弁していました。そのような時に「武力衝突」が明記されている文書が明るみに出れば、大騒ぎになったことでしょう。
 「こんな時に公開することはできない。廃棄したことにしよう」と考えたのではないでしょうか。その後、再調査が指示されたこともあり、いつまで隠せるかわからないから「別のところから発見されことにして公開しよう」と思ったのかもしれません。
 「見つかった」とされるのは昨年12月の末です。その後、実際に公開されるまで1カ月もかかったのは、「どのように言い逃れしようか」と頭を悩ませていたからではないでしょうか。

  稲田さんは、「戦闘行為」の有無について「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と述べています。つまり、「戦闘行為」が9条違反であるということを知っているのです。
 だから、この言葉を使うのを避けたというわけです。しかし、現地の自衛隊員は、そこで「戦闘行為」があったことを認めていました。
 言い変えによって事実をねじ曲げ、憲法違反を誤魔化し、隠ぺいした責任を回避しようとしているのが、稲田さんの答弁にほかなりません。このような「ポスト真実」による居直りを許してはなりません。

 許してならないのは、文科省の再就職あっせん問題も同様です。松野文科相は人事課OBである嶋貫和男氏の仲介について同省が「再就職支援業務」と認識し、必要な執務室や活動資金などを差配してあっせんを組織的に依頼していた可能性が高いとし、歴代の事務次官らもそれを認識していたと語りました。
 歴代の事務次官にすれば、「やっていたのは知っていたよ。悪いことだと思うわけないだろ。先輩が後輩の就職を世話してんだから。それに、いつかは私もお世話になるつもりだったし」というところでしょうか。文科省の組織ぐるみだったということです。
 それがどれほどの規模になるのか、他の省庁はどうなのか。全容解明はこれからの課題になります。

 国会と野党の真価が問われています。事実の解明と責任の追及という点でも、野党共闘の力が発揮されることを期待したいものです。

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