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7月3日(火) 大臣の椅子を防衛できなかった防衛大臣 [内閣]

 研究所に、AP通信社の記者から電話がかかってきました。受話器を取ると、こう仰います。「久間大臣が辞任したんですが……」

 久間防衛相の辞任は「しょうがない」というより、当然のことでしょう。職を辞して責任を取るべき発言を行ったのですから……。
 久間さんの選挙区は長崎です。久間さんに1票を入れた有権者の中には被爆者もおられたでしょう。これらの人々を代弁して原爆の恐ろしさと核の廃絶を訴えるべき立場なのに、久間さんは原爆投下を弁護することで被爆者の方々を冒涜し、その気持ちを逆なでしました。
 唯一の被爆国である日本の防衛大臣であるなら、先頭に立って核兵器の廃絶を世界に向かって訴えるべきでしょう。それなのに、原爆の使用を正当化するという過ちを犯しました。

 しかも、参院選挙直前という時期に、大学の教室の中で、多くの学生を前にして、久間さんは原爆投下は「しょうがない」と言ったのです。このようなときにこのような発言をすれば、どのような波紋が広がるか、予測できなかったのでしょうか。
 その発言を聞いて被爆者がどう思うか、分からなかったのでしょうか。世論によって厳しく批判されるとは考えなかったのでしょうか。
 選挙への影響や与野党の反応に、思いは至らなかったのでしょうか。もしそうだとすれば、何という政治音痴。政治家としての判断力ゼロ、と言うほかありません。

 もともと、久間防衛相には多くの問題がありました。このような発言がなくても、初代防衛大臣としては不適格であったと言うべきでしょう。
 沖縄の辺野古沖に海上自衛隊の掃海艇「ぶんご」を派遣して反対運動を牽制したとき、その根拠を問われて「札幌の雪祭りだって、山中の捜索活動だって、根拠はどこかと問題にされた。でも、国民に支持されており、省の仕事の一助になるならいい」と答弁した過去があります。また、自衛隊の情報保全隊による監視・スパイ活動が発覚したときにも、「自衛隊が情報を収集して分析することは悪いことではない」と居直りました。
 防衛大臣として、自衛隊に対するシビリアン・コントロールを完全に放棄し、その代弁者にすぎなかったと言えるでしょう。もっとも、自分の発言すらコントロールできない人に、自衛隊をコントロールできるはずがありませんが……。

 なお、ここで指摘しておかなければならないことは、久間さんの発言は、安倍政権中枢部における反核政策の揺らぎを背景にしているということです。核兵器を絶対悪とし、いかなる理由があってもその使用を許さず核兵器の廃絶を目指すという立場に立ちきれていないのは、久間さん1人ではありません。
 日本政府はアメリカの“核の傘”を容認し、核抑止力に頼っています。安倍首相自身、小型であれば、憲法上、核兵器の所有は可能であると発言したことがあり、安倍政権発足直後、中川政調会長や麻生外務大臣は日本の核武装をめぐる議論を容認する考えを示していました。
 安倍政権の中枢部では、このような核兵器に対するあいまいな態度が共有されているのです。今回、それが久間さんの口を通じて表面化したにすぎず、だからこそ、当初、安倍首相は理解を示して不問に付そうとしました。

 今回の事態に当たって、安倍首相が全くリーダーシップを発揮できなかったのは、偶然ではありません。それは、多分、安倍さんも原爆の投下は「しょうがない」と考えていたからでしょう。
 だから、世論の批判が高まるまで、久間発言の何が問題なのか、理解できなかったのではないでしょうか。その後、世論の批判が高まったため、さすがに不問というわけにもいかなくなりましたが、それでも「厳重注意」にとどまりました。
 このとき安倍さんが「発言に注意するように」と言ったのは、批判を招いたという結果に対してであり、批判を受けた発言の中身そのものではなっかったのです。この時点でも、そして今になってもなお、安倍首相は、久間発言の内容が辞任しなければならないほどの問題を孕んでいたとは考えていないでしょう。

 安倍首相は、久間さんの後任に、小池百合子国家安全保障問題担当首相補佐官を任命しました。またも、「少年官邸団」の「仲良しクラブ」からの起用です。
 参院選対策のための“サプライズ人事”でしょうか。防衛大臣としての適格性を吟味したうえでの起用とは、とうてい思われません。

 これでは、内閣支持率の下降現象は収まらないでしょう。失言では森内閣の、選挙では宇野内閣の頃と似た雰囲気が漂ってきています。その結果もまた、似たものとなるかもしれません。


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