SSブログ

10月3日(水) 日本の労働組合はもっとILOを活用すべきだ [労働]

 昨日、このブログでも告知した国際労働問題シンポジウム「持続可能な企業の振興:企業の社会的責任/企業の人材育成と活用」に行ってきました。約100人ほどの方が参加され、大変充実した議論が行われました。

 私は今、『労働政策』という本を執筆中です。この本のコンセプトは、持続可能な社会にふさわしい労働の実現と、そのための政策的対応ですから、シンポジウムのテーマ「持続可能な企業の振興」についての報告と討論は、大いに参考になりました。
 これは、今年の第96回ILO総会の第6議題となったもので、一般討議がなされました。この総会での事務局長報告は、「持続可能な開発のためのディーセント・ワーク」というものです。
 この「ディーセント・ワーク」という言葉はかなり広まってきましたが、日本語として定着した適訳はありません。ILOの長谷川駐日代表は、「働きがいのある人間らしい仕事」と訳していました。このほか、「人間らしい適切な仕事」という訳もあります。

 この日のシンポジウムは20回という節目に当たります。これを記念して、わざわざILOの本部から「仕事創出・企業開発局長」のマイケル・エンリケスさんが来日して下さいました。
 記念講演のなかで、総会での討議の内容や結論についての報告がありましたが、残念ながら、詳しく紹介することはできません。詳細は、来年の『大原社会問題研究所雑誌』4月号に掲載されますので、そちらをご覧下さい。
 私としては、モラル・エコノミーの下でのCSRの徹底とディーセント・ワークの実現こそが、持続する社会を実現できる労働政策のあり方だと確信したとだけ書いておきましょう。これについても、詳しい内容は、現在執筆中の『労働政策』に譲りたいと思います。

 それにしても、日本の労働組合はもっとILOを活用すべきだと思います。そこで展開されている議論、ILOの目標や条約・勧告は、ほとんど労働者の要求に沿ったものになっているからです。
 これを活用すれば、日本の労働者の労働条件は、今よりもずっと向上することは明らかです。これまでに採択された187条約のうち、日本が批准しているの48にすぎません。
 全ての条約の批准を政府に迫っていくという運動を、労働組合はもっと本格的に取り組むべきでしょう。国内からの運動と、国外のILOからの働きかけで政府を挟撃し、ILOの条約の批准をテコに労働条件の改善を図るという戦略を立てるべきではないでしょうか。

 ILOの条約・勧告は、実は、経営者にとっても大きな効用があります。というのは、途上国などの労働条件を引き上げ、競争条件の平準化を図ることができるからです。
 途上国の製品価格の安さは、低賃金や労働条件の低さに起因しています。これを多少でも引き上げることができれば、低コストという武器を奪うことができるでしょう。
 日本の経営者団体は、何故、ILOを通じて途上国にこのような圧力をかけようとしないのでしょうか。国際労働基準の徹底によって平等で公正な競争を実現しようと、どうして考えないのか、私には不思議に思えます。

 と、書いたところで、ふつふつと怒りがわいてきました。今朝、都心に行く電車の中で読んだ『朝日新聞』の記事を思い出したからです。
 そこには、こうありました。「法政大、総長選で内紛 新制度に過半数の学部長が反対」
 とうとう、昨年からの理事会暴走についての新聞記事が出てしまいました。法政大学の校名を傷つけ、泥を塗った理事会の責任は重大です。

 法大の総長選は以前、専任教員10人以上の推薦を得た専任教員なら、だれでも立候補できた。しかし、理事会が今年3月、学部長らから選出された推薦委員会が3人の候補者を選ぶ新制度への変更を決めた。「確かな経営判断とリーダーシップを備えた人材が必要」との理由だ。
 これに対し、12学部長中7人が「教員側の意見を聞くことなく強行した」として「決定の凍結」を要求。さらに、約170人の教員が「法政大学のガバナンス問題を考える教員有志」というグループを結成し、「理事会の意に反する人は選ばれなくなる」などと反対してきた。
 このため、21人の推薦委員のうち8人を期日の8月末までに選出することができなかった。そこで、残りの委員を9月27日の学部長らの会議で選出しようとしたところ、7学部長が抗議して退席。その後に委員を選出した。

 これが、『朝日新聞』の記事の中心部分です。総長選挙への立候補者を制限しようとし、その推薦委員の選出を強行したというわけです。
 この選挙規定の変更には、12学部長のうちの7学部長、約170人の教員が反対しています。ちなみに、「約170人の教員が『法政大学のガバナンス問題を考える教員有志』というグループを結成」とありますが、もちろん私もそれに加わっています。
 付け加えれば、これ以前に提案された役員選出規定の変更には、教員の3分の2が反対していました。それに代えて新たに提案してきた規定にも、教員の多くや学部長の過半数以上が反対しているのに、理事会が独走し、力ずくで役員選出規定を押し通そうとしているというわけです。

 このような形で反対を押し切り自分たちの主張を無理強いすることが、民主社会で許されることなのか、理事会は頭を冷やして考えるべきでしょう。民主主義のなんたるかもわきまえない強行は、大学における意思決定のあり方ではありません。
 しかも、このような形での報道が、法政大学にとって不名誉なものであることは明らかです。それをも覚悟の上で、どうして理事会がこのような愚行を繰り返しているのか、私には理解できません。
 どんなことをしてでも、自分たちの息のかかった総長や理事を後釜に据えたいということなのでしょうか。大学の名前に泥を塗ってでも、無理を通さなければならない特別の理由でもあるというのでしょうか。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0