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10月2日(火) JR採用差別事件はその後の問題の先駆け [労働]

 昨日のブログで、JR採用差別事件でのインタビューについて触れました。旧国鉄の分割・民営化が地方衰退の第1段階となったという指摘は、インタビューで語った一部にすぎません。
 私が強調したのは、JR採用差別事件は、その後の日本が直面した問題の先駆けであり、それを解決できなかったために、今日のような深刻な問題を抱えることになったのではないかという点です。
 それはどういうことでしょうか。

 第1に、その後に続く大量リストラの先駆けだったということです。JRの採用差別事件は、国家的不当労働行為でした。
 労働組合を色分けし、労働者を差別し選別しました。「鬼の動労」と言われるほど戦闘的だった動労も、旧国鉄の分割・民営化を認める限りでは猫のように扱われ、JRへの採用を拒否されることはありませんでした。この一事を見ても、一定の基準によって労働者が選別されていたことは明らかです。
 このような労働者の選別と大量リストラは、この時点ではほんの始まりにすぎませんでした。その後は、中高年を中心に、嵐のようなリストラが続くことになります。

 第2に、旧国鉄の分割・民営化は、その後に続く民営化や規制緩和の始まりでした。専売公社が民営化され、電電公社も分割・民営化されました。
 そして、昨日からは郵政も民営化されています。民間開放、民間委託など、民営化の嵐は地方自治体にも及び、それは今もなお続いています。
 国鉄の分割・民営化を阻止できなかったツケが、こうして回ってきていると言って良いでしょう。いわば緒戦における敗北が、その後の巨大な後退戦を招いたということになりましょうか。

 第3に、その後の労働組合つぶしの走りだったということです。JRの発足にいて選別され排除されたのは、「鬼の動労」ではなく国労と全動労の組合員でした。
 その主たる狙いは国労の弱体化にありました。中曽根元総理が語っているように、「総評御三家」の一角を切り崩し、あわよくば総評の解体を狙おうとしたのです。
 そして、その狙い通りになりました。力を弱めた総評は同盟と統合し、今では姿を消しています。

 旧国鉄の分割・民営化は、やがて訪れる嵐の前触れだったのです。残念ながら、それをはね返すことができなかったために、日本の社会は大きな嵐にさらされることになりました。
 そして、その後にやってきたのは、働いてもなお生きるに困難なワーキングプアの社会です。108人もの人名を奪ったJR福知山線の脱線・転覆事故でした。
 構造改革の光と影という言い方は嘘です。構造改革によって光が当たったのは大企業だけで、庶民の生活に光は射さず、大きな影で覆い尽くされようとしています。

 それにしても、20年間はあまりにも長い。国鉄の分割・民営化が強行され、採用差別事件が発生した年に生まれた子どもが、今年には成人するほどの年月が経っています。
 これほどの長い期間、この問題を放置してきた政府・与党の責任は重いと言うべきでしょう。問題の解決に対して、全くの無為・無策であったことは否定できません。
 政府やJRに対しては、問題を放置してきた不作為の罪を問わなければなりません。その間の1047人の人々の怒りや悲しみ、苦労に思いをいたすことはあったのでしょうか。

 事件の本質は、国家による犯罪です。罪を犯した以上、謝罪と賠償は避けられないでしょう。
 参院選での与野党逆転は、この問題でも新しい条件を開きました。この条件を生かして、問題の解決を図るべきです。
 参院を突破口に、今こそ、問題の解決に向けて政治がイニシアチブを発揮しなければなりません。野党の積極的な取り組みを期待したいものです。

 なお、明日、法政大学大原社会問題研究所とILO駐日事務所の共催で、第20回国際労働問題シンポジウム「持続可能な企業の振興:企業の社会的責任/企業の人材育成と活用」が開催されます。
 午後1時~5時30分、国連大学ビルのエリザベスローズ・ホールです。詳細につきましては、http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/notice/sympo07.htmlをご覧下さい。
 当日参加も可能で、無料です。私も出席します、多くの方のご参加をお待ちしております。


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L

 小生も、10年位前から似たようなことを考えておりました。
 このことは、スペイン内戦での人民戦線の(分裂と)敗北が、ヒトラーらの驕りを招き第2次大戦の勃発に繋がったと言う故事を思い起こさせます。
 昔、宮崎駿が、「フランスの酒場で、『私たちの力が及ばなかったために、ファシストの暴走を防げず大戦で何千万人も殺させてしまった。申し訳ない、申し訳ない』といって夜ごと酔い潰れ、泣き潰れている人民戦線の老兵の話」を紹介していました。
 国鉄分割民営化を阻止できず、「選別と排除」は許せないが『大同団結』は良いことだと『連合路線』を支持してしまった総評系組合員の私も、展望を持てぬ今の若い人や子供たちにになにも申し開きが出来ません。(『明日の自分』だから、集会に顔を出し『こくろうラーメン』も買いはしたけど。)
by L (2007-10-02 22:33) 

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