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12月27日(土) 「労働再規制」への「反転」を生かして更なる攻勢へ [論攷]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
 ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
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 水島朝穂さんの「平和憲法のメッセージ」http://www.asaho.com/jpn/index.htmlで拙著『労働再規制』に、加藤哲郎さんの「加藤哲郎のネチズンカレッジ」http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtmlと「世に倦む日々」http://critic5.exblog.jp/10088909/#10088909_1で、私のブログ「五十嵐仁の転成仁語」や私に言及していただきました。有り難うございます。
 この間、ひどい「悪口」に付き合わされた後だけに、ひとしお有り難さが身にしみます。

〔以下の論攷は、『HEERO REPORT』No.84(2008年11月)に掲載されたものです〕

「労働再規制」への「反転」を生かして更なる攻勢へ―最近世に問うた拙著に寄せて
                 
 「労働再規制」?
 あまり聞き慣れない用語だと思います。本の表題を検討しているうちに行き着いたのがこの言葉です。労働の規制緩和からの「反転」を表現するためには、「再規制」という用語を用いるのが良いと考えたからでした。これを表題としているのが、今度、ちくま新書として刊行された『労働再規制-反転の構図を読みとく』という拙著です。

明らかになった新自由主義政策の破綻

 「世界大恐慌の再現か」というほどの金融・経済危機が発生しました。アメリカの金融危機に始まった経済の混乱は世界中の国々を巻き込み、株価が乱高下しているだけでなく実体経済にまで影響を及ぼし始めています。
 新自由主義政策によって促進されたマネーゲームとカジノ資本主義の誤りが明らかになりました。その本家本元であるアメリカでさえ、企業の破産を防ぐために巨額の公的資金が注入されています。市場を支配していたのは「神の手」ではなく、「悪魔の手」だったのです。この「悪魔の手」から市場を救い出すために、政治の介入が必要になりました。
 拙著は、このような新自由主義政策の破綻を、日本における労働の分野に焦点をあてて明らかにしたものです。本の帯に「新自由主義政策 幻想の破綻」と書いたのは、労働の規制緩和という形で猛威をふるった新自由主義政策も、その幻想が破綻し「再規制」に向けての「反転」が生じていることを強調したかったからです。
 このような「反転」は、これまでも「潮目の変化」という表現で注目されてきました。それは、深部で進行していた「反転」によって引き起こされたものだったのです。このような「反転」が始まったのは、2006年からであると私は考えています。
 何故、2006年から始まったのでしょうか。それには、はっきりとした背景があります。これについては、格差の拡大と貧困の増大という経済的背景、規制緩和の「負」の側面の表面化という社会的背景、小泉内閣から安倍内閣への交代という政治的背景、アメリカの没落という国際的背景という4点にわたって明らかにしました。
 今もなお、このような「反転」は進行中であり、それをさらに押し進めていくために、私は本書を書きました。何故そうなったかが分かれば、どうすればそうできるかが分かるからです。本書を読んで、この「反転」のプロセスをさらに押し進めていただきたいと思っています。

ポイントとなるいくつかの点

 本書の中では、とくに強調したかったポイントがいくつかあります。簡単に、ここで紹介しておきましょう。
 その第一は、政界も財界も官界も、決して一枚岩ではないということです。雇用・生活調査会の発足や「重鎮」の発言などに示される自民党内での意見の違い、「今井・宮内論争」に示される財界内での違い、経済財政諮問会議内での意見の違い、労働改革専門調査会と規制改革会議やタスクフォースとの違いなどに焦点を当て、政官財の支配層内部における分岐と亀裂を明らかにしました。
 第二に、「反転」はこのような意見の違いによって分かれる多様な勢力間の複雑な作用によって生じたということです。自民党内で市場原理主義的な考え方への反発が生まれ、財界内で一度は劣勢となった今井さんなどの国内派が巻き返して宮内さんなどの国際派の力が弱まり、労働の規制緩和の急先鋒だった規制改革会議は孤立していきます。本書では、できるだけ具体的かつ詳細に、このプロセスを跡づけようとしました。
 第三に、「反転」を生み出したのは、マスコミと労働運動の力だったということです。独力ではこのような力を発揮できなかった労働運動は、マスコミという「援軍」を得ることによってホワイトカラー・エグゼンプションの導入を阻止し、労働の規制緩和の政策転換に向けての流れを生み出しました。これを引き継ぐ形で、労働者派遣法の改正に向けての動き、偽装請負などの不正雇用の取り締まり、最低賃金の引き上げなどの「反転」が続いています。これは、今後の労働運動の発展にとっても教訓とするべき重要な点でしょう。
 第四に、新しいやり方が失敗したからといって、元に戻れば良いというわけではないということです。新自由主義的な「アメリカ型」が否定されても、企業社会や官僚支配の古い「日本型」が復活したのでは「元の木阿弥」です。このいずれとも異なる「第三の道」を目指すべきだというのが、本書の結論になっています。

選択が迫られている「第三の道」

 それでは、この「第三の道」とは、どのようなものなのでしょうか。それはEUや中南米諸国のような方向だと受け取られているようですが、必ずしもそうではありません。それらは参考になりますし、重なる部分はありますが、同じものではないからです。
 私は『建設労働のひろば』10月号の拙稿「総選挙で問われるもの」で、「第三の道」の「政策的な軸」について、「第一は、日本国憲法を守る立場に立つことです。憲法の理念を実際の政治に活かす『活憲』をめざせば、なお結構です。第二は、アメリカから自立することです。新テロ特措法など、外交・安全保障の問題だけでなく、経済や金融についてもそうです。第三は、新自由主義政策と手を切り、大企業の側ではなく労働者、生活者の側に立つということです。労働の再規制をめざさなければなりません」と書きました。来るべき総選挙では、この「第三の道」の三つの「政策的な軸」を、これからの日本の進路として大きく示せるかどうかが重要な争点になるでしょう。
 労働の規制緩和という誤った政策によって労働現場は変容し、多くの問題を生み出しました。ワーキングプアという言葉に象徴されるように、今の日本は働いてもなお生活できない苛酷で理不尽な社会に変容しています。その結果、格差と貧困が拡大し、多くの社会問題が発生するにいたりました。
 このような現実の変化こそが、その後の「反転」を生み出した基礎条件でした。しかし、それがマスコミによって報道されなければ社会問題として認識されず、労働運動が問題解決を迫らなければ、政策形成主体に対する圧力も生じなかったでしょう。
 拙著では、このような「反転」の構図をできるだけ幅広く、具体的かつ詳細に検討しています。そうすることで、政策を変えるためにはどうすればよいかを明らかにしたかったからです。
 「労働再規制」に向けての「反転」は始まりましたが、その進行には紆余曲折が避けられません。できるだけスムースに「反転」が進み、労働政策が転換され、新自由主義政策の誤りが是正され、「第三の道」に向けて、更なる攻勢を強めることが必要でしょう。そのために拙著が役立つことを、心から願っています。


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コメント 5

NO NAME

「カジノ資本主義」、「悪魔の手」というのはなんですか?

by NO NAME (2009-01-04 01:16) 

現左

>「カジノ資本主義」、「悪魔の手」というのはなんですか?

聞く前に自分で調べろ
by 現左 (2009-01-05 06:02) 

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