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4月10日(土) 沖縄密約についての開示命令判決を祝す [在日米軍]

 「難攻不落だと思った。壁は厚いと思ったが、政治環境が変わった。半年前まで政府は密約を否定し続けていたが、『情報革命』が起こった」(原告の西山太吉さん)
 「この上ない完全勝訴。壁に大きな穴を開けることができた。情報公開の不備を変えなければ本当の民主主義にはならない」(原告団の共同代表、桂敬一立正大講師)
 「私たちの社会が民主主義に向かう第一歩となる画期的な判決」(ノンフィクション作家の澤地久枝さん)

 昨日のブログで、私は「諦めずに運動を続けていれば、雨だれが岩に穴をうがつように、いつの日か政治の壁も崩すことができる」と書きました。JR不採用問題の解決と福島大学の松川資料室の存続についての、私の感想です。
 その日に、もう一つ「いつの日か政治の壁も崩すことができる」実例が示されました。沖縄返還をめぐる日米密約文書の情報公開訴訟についての東京地裁判決です。
 杉原則彦裁判長は「文書は残っていないとする外務省などの調査結果は信用できず、あらためて調査するべきだ」と判断し、文書を開示することや、慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡しました。「情報革命」(西山さん)を起こした「完全勝利」(桂敬一さん)であり、「画期的な判決」(澤地久枝さん)です。

 この裁判は、1972年の沖縄返還の際にかかる費用を日本がアメリカの代わりに支払うという密約があったとして、ジャーナリストや大学教授など25人が、国に、当時の外交文書を公開するよう求めていたものです。外務省と財務省は、裁判の中で、密約があったかどうかにはついては触れず、調査の結果、外交文書は残っていなかったと主張していました。
 杉原裁判長は密約の存在を認めたうえで、「去年9月まで密約の存在を否定してきた外務省などは、事務的な調査しか行っておらず、調査結果の信用性には、一定の限界がある。元事務次官など、当時の幹部に聞き取り調査を行うことによって、十分に調査したと初めて評価できる」と指摘しました。そして、「国民の知る権利をないがしろにする外務省の対応は、不誠実なものと言わざるをえない」と述べ、文書を開示することや、慰謝料として原告1人につき10万円、あわせて250万円を支払うよう命じました。
 問題となったのは、沖縄返還にからみ、日米の高官が合意して、(1)米軍基地の移転費用などを日本側が財政負担する、(2)米軍用地の原状回復費400万ドルと沖縄にあったラジオ放送「アメリカの声(VOA)」の国外移転費用1600万ドルを、それぞれ日本側が肩代わりすることを示す一連の密約文書(7種類)です。元毎日新聞記者の西山さんらが08年9月に情報公開請求したのに対し、外務省と財務省は「存在しない」として開示しなかったために提訴していました。

 この「肩代わり」密約の存在を明確に認めた判決の意義は極めて大きく、まさに「歴史的判決」と言って良いでしょう。このような判決が出たことには、昨年の政権交代や密約に関する外務省有識者委員会の調査などが大きく影響しており、これもまた自民党が政権から追い出された成果であると思います。
 過去の自民党政権は、「米軍用地の原状回復費400万ドルと沖縄にあったラジオ放送『アメリカの声(VOA)』の国外移転費用1600万ドル」の計2000万ドルを支払うことで、国民の税金を無駄遣いするという第1の罪を犯しました。これについて国民に秘匿し、関連する密約文書も隠し続けるという形で第2の罪を重ねました。
 今回の判決によって密約の存在が認められ、第1の罪が断罪されました。同時に、情報開示も命じられましたから、第2の罪も断罪されたことになります。

 岡田外相は、上告の可能性について言及しています。しかし、上告せず、真相を明らかにする方向で対応するべきでしょう。
 判決は、公文書の保管や開示のあり方について、大きな問題提起を行いました。情報公開法の改正を含めた公開制度の改善に、全力で取り組んでもらいたいと思います。
 今回問題になった密約文書については、もし廃棄されていれば、どのような経緯で、いつ、誰が命じ、誰が実行したのか、調査して真相を解明する必要があります。責任者を処分し罰しなければなりません。

 澤地さんが仰るように、「私たちの社会が民主主義に向かう第一歩となる画期的な判決」となるかどうかは、今後の取り組みにかかっています。日米同盟の背後に隠されている闇を照らし、国家の嘘を暴くための作業を、これからも続けていかなければなりません。




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コメント 3

AS

五十嵐先生、澤地さんの名が間違っています。
正しくは旧字の「澤」、久“恵”ではなく「久枝」です。
by AS (2010-04-10 16:07) 

一応法学部

政権交代が判決に影響しているとすると三権分立が成り立たないのでは?
by 一応法学部 (2010-04-10 22:57) 

KY

政府の嘘を司法が正したのだから三権分立云々を言うのは筋違いです。
by KY (2010-04-12 10:37) 

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