３月20日（日）　福島第１原発の当面の危機は去ったようだけれど：五十嵐仁の転成仁語：SSブログ

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３月20日（日）　福島第１原発の当面の危機は去ったようだけれど　[災害] [編集]

　福島第1原発の暴走が止まったようです。まだ、不確定要素が多々あるとはいうものの、当面の危機は去ったように見えます。
　原子力発電所が制御を失い、「メルトダウン」によって炉心が圧力容器の底を抜き、水素爆発が起きたり、高濃度の放射性物質が広範囲に飛散したりという最悪の事態は免れたようです。関係者はホッとしていることでしょう。

　これからは、原発の暴走をストップさせた技術力の高さをことさら強調する「安全キャンペーン」が展開されるにちがいありません。また、危険を顧みず、身を挺して原発の暴走を阻んだ自衛隊や消防隊員、東電ら関係者の勇敢さを讃え、美化する「英雄キャンペーン」も始まることでしょう。
　この点では、一体何が起きていたのか、どれほどの犠牲が伴ったのか、どのような被害が生じ、また今後予測されるのか、影響はどのような形で、どれほど拡大しているのかなどについての検証が、冷静かつ科学的に、事実に基づいて行われる必要があります。
　同時に、原発の危険性を強調するあまり、周辺の放射能汚染や被害を過大に言い立てて不安をまき散らしたり、周辺の人々を差別して排除したり、放射能汚染による「風評被害」を引き起こしたりすることも、厳に慎まなければなりません。反原発の言説や運動も、冷静かつ科学的に、事実に基づいて行われなければ、説得力がなくなってしまうからです。

　今回の事態で死者は出ていないと言い出す人が、いずれ現れることでしょう。それほど大きな被害はなかったではないかと……。
　それは嘘です。何人もの高齢者の死亡が確認されているからです。
　福島県南相馬市や双葉郡など、福島第1原発周辺地域の福祉施設や病院から県立いわき光洋高校に避難していた高齢者14人が死亡し、昨日も横浜市の老人介護保健施設に移動するはずだった福島県南相馬市の特別養護老人ホームの高齢者２人が死亡しました。これらの人々は福島原発が暴走しなければ避難する必要がなかったのですから、「原発に殺された」とも言える人々です。

　同時に、このような形で避難したことの適否も、これから検証される必要が出てくるのではないでしょうか。充分な準備をして早くから手を打つこともなく、厳しい冷え込みの中、医療設備も充分でない体育館などに、慌ててて避難することが果たして適切であったのかを……。
　室内にとどまっていた方が、かえって安全だったかもしれません。将来的な危険はあったにせよ、直ちに命を失うほどの差し迫った危険は避けられたかもしれないのです。
　詳しい事情が分からない私には、答えを出すことはできません。高齢者の身になって、どちらが幸せだったのかを想像するだけです。

　福島第1原発から半径20キロ以内の人々は圏外への避難を強いられ、故郷を後にせざるを得ませんでした。いつ、帰れるかも分かりません。これだけも大きな犠牲が生じています。
　すでに原乳やホウレンソウなどから放射能が検出されていますが、具体的な健康被害や周辺地域での放射能汚染の状況が分かってくるのはこれからでしょう。大きな経済的社会的被害や損失を伴うことは確実です。
　差し迫った危機が去った後には、きちんとした検証がなされなければなりません。世界中を不安に陥れた原因とその責任を問うのは、これからです。

　今回の原発事故によって、すでに大きな犠牲が生じ、甚大な被害が出ていることを忘れないようにしてもらいたいものです。二度と再び、このようなものを造らず、原発に頼らない世の中に変えていくためにも……。

　ところで、本日付の『しんぶん赤旗』に、私が編集した『「戦後革新勢力」の奔流－占領後期政治・社会運動史論1948－1950』（大月書店）の宣伝が、「３月の新刊」として出ていました。間もなく、店頭に並ぶことと思います。
　「占領後期の日本における社会運動の展開を追う。日本共産党・労働組合の運動、学生運動、知識人運動、女性運動、農民運動、在日朝鮮人運動など。『「戦後革新勢力」の源流』の続編」というのが、宣伝文句です。これ以外にも、日本社会党や憲法運動、青年運動、生協運動、沖縄の運動、統一戦線運動なども収録されています。
　スペースの関係で難しかったのでしょうが、「青年運動」くらいは宣伝文句に入れておいて欲しかったと思います。苦労して、私が書いた部分でしたから……。

2011-03-20 08:38 nice!(0) コメント(14) トラックバック(0)

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放射能の危険は30km圏外では全くありませんでしたし、政府もそのように言いつづけてきました。ではなぜ物資が現地に届かなくなったのでしょうか？　放射能の危険を過大に煽る人たちがいたので、関係者が不要な恐怖心を持ってしまったからでしょう。そのおかげで避難所の被災者にご迷惑をおかけし、貴重な人命が失われてしまったのは全く残念なことです。
今回のような緊急事態においては、人命に関わるような無責任な言動は、取り締まる必要があるのではないでしょうか。

農作物についても同じです。現在、報道されている程度の放射能量では全く健康には影響がありません。過大に危険性を煽っている人たちの主張を真に受けて、無用な不安を持ち、風評被害を広げたりすることが無いように、責任ある社会人としてお互い気をつけたいものです。

幸い、自民党も民主党も原子力については慎重に推進という立場をとっていますので、今後、国会でしかるべき措置が取られていくものと思います。
by 氷河期 (2011-03-20 12:29)

＞「日本共産党・労働組合の運動、学生運動、知識人運動、女性運動、農民運動、在日朝鮮人運動など。『「戦後革新勢力」の源流』の続編」というのが、宣伝文句です。これ以外にも、日本社会党や憲法運動、青年運動、生協運動、沖縄の運動、統一戦線運動なども収録されています。」

なんていいますか、特定の傾向を持った人たちの運動ばかりとりあげられていて、日本の社会を支えている普通の日本人男性のための運動が抜けているような気がするのですが？
by 氷河期 (2011-03-20 12:52)

＞これらの人々は福島原発が暴走しなければ避難する必要がなかったのですから、「原発に殺された」とも言える人々です。

違うでしょう。
阪神大震災の後もこのような方々はいました。
仮設住宅への引越しや遠地避難をせざるを得ず、共同体が崩壊したことによる「孤独死」です。
震災が遠因か原発事故が遠因かなど、現時点で軽々しく断定出来ません

by SA (2011-03-20 18:52)

ひとが一生懸命書いておられるブログに土足で踏み込み、専らケチ付けに専念して、執拗に不毛の言辞を弄し、妨害している輩を許せん。　そ奴らはインターネットを崩壊させるクズだ！！

by passer-by (2011-03-20 20:39)

福島第一原発の事態ではっきりしたのは、原子力発電の「安全神話」が完全に崩壊したということです。
それは、原子力安全・保安院が、この事故を国際評価尺度（ＩＮＥＳ）で８段階のうち３番目に深刻な「レベル５」- 1979年に起きた米国・スリーマイルアイランド事故と同じ- と暫定的に評価したことからも明らかです。「福島」は重大な原発事故が起きた場所として記録に残されることになります。
これが、だれも否定しようのない事実です。

すでにネット上でも話題になっていますが、共産党は国会でも具体的に危険性を繰り返し指摘し、福島県委員会も東京電力に申し入れを行っていました。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2011/03/2005-073-4f4d.html
http://www.miyamoto-net.net/column2/new/1300261665.html

またIAEAも日本の原発の安全性には疑問を呈していたとのこと。
http://news.livedoor.com/article/detail/5423432/

今後、必要なのは、こうした警告を無視し続けてきた歴代の政府や「安全神話」を振りまいてきた各政党・御用学者、それに無批判に追随してきたマスコミの責任を明らかにすることでしょう。
事実が、その誤りを証明したのですから。

そして原発を「クリーンなエネルギー」として推進していた各国でも見直しの動きが起こっている中で、当事者である日本だけがそこから免れることなどできるはずがありません。

また今回の東日本・関東大地震がかつてない規模の地震だったとしても、今回の原発事故がなければ、政府も、各自治体も、あるいはボランティア団体も、どれだけ大きなエネルギー・力を、そこに集中できたでしょうか。
そして、少なくない被災者を救出できたのにと思うと、本当に残念でなりません。

そうしたことが前提になって、今後、冷静で科学的な（「安全神話」にとらわれない）議論が必要だと思います。
by 医療労働者 (2011-03-20 20:58)

passer-byさん

コメント欄が開放されているという事は、エントリに対するいかなる反応も受け入れるという事です。
気に入らないコメントはモデレートし即時反映はしないようにすればいいだけのことだと思いませんか？
ましてここはあなたのブログじゃない。
by SA (2011-03-20 22:11)

新エントリを見るに、何かブチ切れなすったようですね、五十嵐センセ。
ご自身や同調者の発言を批判されるのがそんなに嫌ですか。
by Nobody (2011-03-21 11:24)

Nobodyさん
あなたや氷河期やＳＡのような下品な人間にも困ったものですな。
下品な行為をされれば怒るのは誰だって当たり前。問答無用で削除ではなく、お断りのエントリ（それも罵倒ではなく丁寧な表現）があるだけ感謝したら？

SAさん
＞震災が遠因か原発事故が遠因かなど、現時点で軽々しく断定出来ません

原発事故があったから避難せざるを得なかったんでしょう？

氷河期さん
＞幸い、自民党も民主党も原子力については慎重に推進

何が幸いなんだか。今回の事故を考えれば、「慎重に中止」（今すぐ中止は混乱を招くが推進していくことには問題があるため）と言う選択肢もあるでしょうに。

＞なんていいますか、特定の傾向を持った人たちの運動ばかりとりあげられていて、日本の社会を支えている普通の日本人男性のための運動が抜けているような気がするのですが？

農民や労働者ってのは「特定の傾向」で「普通の日本人男性」じゃないんですか？
（なお、そもそも「革新運動」と言うタイトルなので、いわゆる左派運動しか取り上げてないのは当たり前だし、1つの本で全ての社会運動を取り上げなければならない義務もない）
by bogus-simotukare (2011-03-21 11:43)

五十嵐さんのご健筆を毎回楽しみに拝見している者です。今回の原発問題についてはご主張の通りだと思い、全面的に支持します。原発推進の先頭に立った政治家や学者たちの責任は重大と思います。この際、原発廃止の方向へ転換させる運動が不可欠です。不勉強で恐縮ですが、原発推進に動いた政党、経済団体の言説や経過を客観的事実として知りたいと思います。推進者を個人的にあげつらう必要はないかと思いますが、事実は事実として前にお書きになった中曽根、正力のことは知りたいと思います。ついでの時に触れて頂ければ、と思います。
by 邑井 (2011-03-21 18:15)

このコメントは、「3月27日(日)　大津波による｢原発震災｣は｢想定できない｣ものではなかった」に対するものです。

津波による被害は、東北地方に限っても、

* 1793年 2月17日宮城沖に発生した地震で、岩手県中部〜牡鹿半島沿岸に3〜5mの津波。
* 1896年明治三陸地震 - 岩手県綾里で津波の高さ38.2メートル、死者不明者22,000人

* 1933年昭和三陸地震 - 死者・不明者3,000人。（wikipedia）
他にも、
・　1960年チリ地震 - 日本では死者不明者142名。地震発生の22時間30分後に18,000キロメートル離れた太平洋沿岸に津波が襲来した。遠隔地津波として日本では有名。

等があります。

何も「貞観（じょうがん）津波」の例を持ち出さなくとも、約200年の間に4回です。
一昨日3月25日(金)の朝日にも、貞観津波（と産総研のチームが‘見つけ‘たらしい1500年ころの津波）のみを持ち出した記事が、二つもありました。私はこの朝日の記事しか読んでませんが、もし1000年(500年)に一度ならば、「想定できない」訳ではありませんが、「想定できないとしてもしょうが無い」と促しませんか？
ワザと近年の例を出さず、1000年前の例にしか触れないこれらの記事は、読者を無知と当て込んだフザケタ記事と言うより、東電擁護の悪質なものと言わざるを得ないのではないでしょうか？

by hoomin (2011-03-27 14:43)

　同時に、このような形で避難したことの適否も、これから検証される必要が出てくるのではないでしょうか。充分な準備をして早くから手を打つこともなく、厳しい冷え込みの中、医療設備も充分でない体育館などに、慌ててて避難することが果たして適切であったのかを……。
by replica watches uk (2011-08-29 22:37)

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