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5月7日(土) 浜岡原発の原子炉の運転停止は当然だけれど [災害]

 昨日、菅首相は記者会見を開いて、現在稼働中のものを含めて「浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を、中部電力に対して要請」したことを明らかにしました。記者会見での該当部分は、次のようになっています。

国民の皆様に重要なお知らせがあります。本日私は内閣総理大臣として、海江田経済産業大臣を通じて浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を、中部電力に対して要請を致しました。その理由は何といっても、国民の皆様の安全と安心を考えてのことであります。同時に、この浜岡原発で重大な事故が発生した場合には、日本社会全体に及ぶ、甚大な影響もあわせて考慮した結果であります。文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%ときわめて切迫しております。こうした浜岡原子力発電所のおかれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を、確実に実施することが必要です。国民の安全と安心を守るためには、こうした中長期対策が完成するまでの間、現在定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、すべての原子炉の運転を停止すべきと私は判断を致しました。浜岡原発では、従来から、活断層の上に立地する危険性などが指摘をされてきましたが、先の震災と
それに伴う原子力事故に直面をして、私自身、浜岡原発の安全性について、様々な意見を聞いてまいりました。その中で、海江田経済産業大臣とともに、熟慮を重ねた上で、内閣総理大臣として、本日の決定を致した次第であります。(以上、引用終わり)

 浜岡原発の運転停止は当然です。菅首相としては「大英断」であると高く評価できるでしょう。
 菅さんも述べているように、大地震が発生する可能性は高く、浜岡原発は予想されている東海地震の震源域の真ん中で、しかも活断層の上にあって地盤は脆弱だとされています。もともと、このようなところに作るべきではなかったものですから、稼働停止は当然です。
 いつ、東北大震災と福島原発事故と同じようなことが繰り返されてもおかしくないというのが現状です。菅首相の決断は、国民の生命と安全に責任を負うべき一国の首相として、当然の判断だったと言うべきでしょう。

 ただし、菅首相の発言は、「想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を、確実に実施することが必要」だとし、「こうした中長期対策が完成するまでの間、現在定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、すべての原子炉の運転を停止すべき」だというもので、将来的には再稼働する可能性を残しています。経済産業省原子力安全・保安院は、浜岡原発の停止期間を「おおむね2年程度」との見通しを示し、2年後の再開を示唆しました。
 このような場所に、このような危険なものの存在は許されません。完全に廃炉にするべきでしょう。
 浜岡原発だけでなく、他の原発も、できるだけ早く稼働停止にして廃炉にするべきです。再生可能で危険性の少ない自然エネルギーへの転換を前提としたエネルギー政策へと転換するべきでしょう。

 しかし、現実には、そうなっていません。今日の『東京新聞』は、「原発の緊急安全対策を進めて『安全宣言』を早期に行うことで既設の原発からの電力供給を確保し、2030~50年には『世界最高レベルの安全性に支えられた原子力』をエネルギー政策の3本柱の一つとするとした、経済産業省の内部文書が明らかになった」と報じています。
 エネルギー政策は、基本的に変わっていないということです。うがった見方をすれば、「安全宣言」をして「既設の原発」を救うために、最も危険であるとされている浜岡原発を犠牲にしたという見方も可能です。
 浜岡原発の稼働停止を打ち出すことによって、他の原発の稼働を維持できるようにし、同時に、国民の喝采を浴びて政権基盤を強めようと考えたのかもしれません。今回の「英断」は、菅首相の「高等戦略」なのかもしれないのです。

 ここで考えなければならない問題があります。原発は、安全であれば、その存在が許されるのか、という問題です。菅さんの発言からすれば、浜岡原発も「中長期対策が完成」して安全性が確保されれば、その可動は許されるということになります。
 また、福島原発の放射能事故についても、制御が不能になったのは「想定外」の巨大な津波が発生したためで、大地震そのものには耐えることができた、つまり地震に対しては安全だったという主張があります。このような主張は正しいのでしょうか。
 吉井英勝共産党衆院議員は4月27日の衆院経済産業委員会で、地震による受電鉄塔の倒壊で福島第1原発の外部電源が失われ、炉心溶融が引き起こされたのではないかと追及し、経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、倒壊した受電鉄塔が「津波の及ばない地域にあった」ことを認めました。東京電力の清水正孝社長は「事故原因は未曽有の大津波だ」と述べていましたが、これは大嘘で、全電源喪失・炉心溶融に至った原因は鉄塔1基が倒壊したことによるもので、その原因は津波ではありませんでした。

 それでは、地震対策を充分にすれば、原発の稼働は許されるのでしょうか。福島の教訓を生かして原発の安全性を画期的に高めれば、地震にも耐えられ、津波が来ても大丈夫だという意見もあります。
 フランスやアメリカが、福島原発事故対策に深く関わろうとした目的はここにあります。福島の教訓を安全対策に生かせれば、今後、原発の推進や外国への売り込みにプラスになると考えているからです。
 今回の福島での原発事故によって、「安全神話」が崩壊したことは事実です。しかし、それを強調するだけでは、「安全神話」の再確立を手助けし、原発への逆風ではなく追い風を生み出しかねません。

 「福島の教訓」を踏まえて「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を売り込もうとする経済産業省の内部文書は、このような目論見を明瞭に物語っています。そのようなことは許されるのでしょうか。

 ということで、この続きは、また明日。


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