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7月21日(土) 「働けない若者の危機」を生み出した責任は『日経新聞』にもあるのではないか [マスコミ]

 「日本はいつの間にか若者に仕事を与えられない国になってしまった。学校を出た24歳以下の10人に1人が失業し、2人はアルバイトなど不安定な仕事で日々をやり過ごす。企業の競争力は低下し、社会保障の担い手が足りなくなる。経済の土台のきしみが聞こえる。若者の危機は、明日の日本の危機でもある。」

 これは『日経新聞』7月16日付から始まった特集「働けない若者の危機 第1部鳴り響く警鐘」の第1回に掲載された記事「明日担う力 陰り 170万人、正社員切望」のリードです。この特集は昨日の7月20日付まで、5回にわたって連載されました。
 そこには、次のような指摘があります。

 「採用減や非正規への置き換えで、企業の教育機能は損なわれ、人的資本の劣化が著しい。」(7月16日付)
 「増える若い世代の失業者。放置すれば日本はしっぺ返しを食らう。」(7月18日付)
「若者の雇用問題を解決するには政府や企業、労働組合、中高年、若者自身がそれぞれ変わらなければならない。若い力を生かせないような国は輝きを失う。」(7月20日付)

 これらの指摘は、まさにその通りだと言うべきでしょう。『日経新聞』でさえ無視できないほどに、若者の状態が悪化し深刻になってきているということを示しています。
 私も、これらの記事に書かれている内容について、世代間の対立を煽ったり解雇規制の緩和を求めたりしている点を除けば、基本的に異存はありません。しかし、このような問題指摘が正しくても、それが『日経新聞』によってなされると、大いなる違和感を覚えざるを得ません。
 このような若者の困難を生み出した原因が小泉構造改革路線にあったと思われるからです。労働の規制緩和による非正規労働者の増大、正規労働者の非正規労働者への置き換えや賃金・労働条件の低下、それによる貧困の増大と格差の拡大という問題や矛盾が集中したことこそ、若者の困難を生み出した最大の要因だったのではないでしょうか。

 そして『日経新聞』は、このような若者の困難を生み出した新自由主義的な雇用政策を是認し推進してきた過去があります。いや、それは過去の問題だけにとどまりません。
 現在も、『日経新聞』は消費増税に向けての旗を熱心に振り続けています。消費税の引き上げは若者を直撃し、デフレ下の消費増税による景気の悪化は若者の雇用と生活に大きな困難をもたらすであろうことは確実であるにもかかわらず。
 このような過去と現在からすれば、『日経新聞』に若者の雇用の改善を論ずる資格があるのかと疑問に思わざるを得ません。このような状況を生み出すうえで、自らがその原因を生み出しながら、結果の重大性にたじろいで「大変だ」と騒ぎ始めている『日経新聞』に……。

 『日経新聞』は消費税の引き上げを焚きつけているだけではありません。TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を支持し、原子力発電所の再稼働や推進も求めています。
 『日経新聞』がこれまでの過ちを反省せず、自らが演じた犯罪的な役割について無自覚であり続ければ、今回の「働けない若者の危機」という特集に続いて、いずれ「生活できない若者の貧困」という特集が必要になるでしょう。そして再び、「若者の危機は、明日の日本の危機でもある」と書かなければならなくなるにちがいありません。

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