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4月11日(木) 映画「アルマジロ」の監督が語る「テロとの戦い」の真実 [国際]

 昨日のブログで、さんざん『朝日新聞』の悪口を書かせていただきました。「『商売』上、私も仕方なく『朝日新聞』を取っていますが、その必要がなくなったら、とっとと購読をやめるつもりです」とも……。

 しかし、『朝日新聞』には注目すべき記事が掲載されることもありますし、労働関連の記事も他紙に比べれば充実しています。時折、このような記事が掲載される限り、そう簡単にやめることもできないようです。
 最近も注目すべき記事がありました。それは『朝日新聞』4月5日付の「なぜ闘いに行くのか」と題された映画「アルマジロ」のヤヌス・メッツ監督のインタビューです。
 この映画はアフガニスタンで治安維持にあたるデンマーク軍兵士を追ったドキュメンタリーだそうです。以下、いくつかの興味深い発言を紹介しておきましょう。

 まず、「デンマークにテロの脅威はないでしょう。なぜ米国と一緒に戦争をしなきゃならないんですか」という問いに、メッツ監督は次のように応えています。

「9・11テロは、デンマークにとってもひとごとではなかった。中東からの移民を多く受け入れているからだ。テロリストにコペンハーゲンの中央駅が爆破されるかもしれないという恐怖が広がった。欧州全体にも言えることだが、90年代から、移民の増加に対する嫌悪感があった。人々は移民と交流しなかった。自由で寛容だったデンマーク社会だが、逆にその自由と寛容さが移民を増加させ、彼らを排除すべきだとの声が強まった。そして2000年代に登場した右派政権が米国が決めた国際ミッションへの参加を決めた。『戦争へのよき協力者』となってテロと戦い、世界から悪を排除する。アフガンの人々を解放し、民主的な国を作るためだと考えた」
「テロリストと戦えば世界はよくなるというのは、ウブな考えだった。むしろまったく逆効果だった。私たちがテロリストだ、国際犯罪者だと見ている国や人々は、自らを自由に向かって戦う戦士だと思っている。テロとの戦いが新たなテロリストを生んでいる。9・11当時より今の方が、中央駅が爆破される危険性は高いだろう」

 次に、映画について「反応はいかがでしたか」という質問への答えは次のようなものです。

「国民はショックを受けた。10年の公開直後から、これでいいのかという議論が巻き起こった。戦争とは何かを知ってるつもりでも、実際に銃を口に入れられて初めて金属の味が舌にしみるようなものだ。文明国デンマークの若者が、粗暴で残虐で野蛮な兵士になってアフガンで人を殺している。市民は戦闘によって家族を失い、家を壊され、家畜を殺され、畑を荒らされた。自由で民主的な国を作るはずの軍隊が市民の生活を悪く変えている。デンマーク国民は映画を通じて『よきこと』と信じていた国際貢献の現実を見たんだ」

 さらに、「日本では憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使についての議論が始まっています。NATOと連携してアフガンで戦うデンマークと、米国と歩調を合わせて北朝鮮のミサイルを撃ち落とそうとする日本。考えさせられました」という問いに、こう応えています。

「米国は、テロリストと戦うことで自国の安全を守ろうと考えた。デンマークは、抑圧された弱き市民を助けたい思いが強かった。しかし名目はどうであれ、よりよい世界を作るための軍事行動が逆に市民を苦しめ、新たな敵意、テロリストを生み出している」
「日本人は、過去の戦争を通じて、戦争に参加することが何を意味するか分かっていると思う。忘れているのなら、思い出して議論すべきだ。そうすれば、政治に対して責任ある行動を取れると思う」

 メッツ監督は、戦争に参加することが何を意味するかを思い出して議論すれば、政治に対して責任ある行動がとれると思うと、私たち日本人に助言しています。そのためにも、「名目はどうであれ、よりよい世界を作るための軍事行動が逆に市民を苦しめ、新たな敵意、テロリストを生み出している」という、監督の言葉を、今こそ充分にかみしめる必要があるのではないでしょうか。


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