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9月8日(日) 56年ぶりに開かれる東京オリンピックが抱える課題とは [文化・スポーツ]

 2020年の夏季オリンピックの開催都市が東京に決まりました。オリンピック開催を願っていた関係者の苦労が実ったということになります。
 最大の「勝因」は、東京都知事が石原慎太郎から猪瀬直樹に変わっていたことではないでしょうか。猪瀬さんもアブナイ発言をしていましたが、それでも慎太郎よりはマシだったということでしょう。

 1964年以来56年ぶりのオリンピック開催が決まって、早速、テレビなどでは大騒ぎが始まっています。大儲けのための一大イベントの開催決定ですから、それも当然かもしれません。
 巨大な経済効果が見込まれるということで、経済界も大歓迎というところでしょうか。オリンピック開催のためのインフラ整備を名目に、莫大な工費が投じられることになるでしょうから。
 しかし、今日の『毎日新聞』には「国土強靱化 復興阻む」「全国で工事増 人不足」という記事が出ていました。これにオリンピック開催に向けての工事が加われば、一体、震災復興はどうなるのでしょうか。さらに「復興阻む」ということにならないでしょうか。

 オリンピックの開催とその成功に向けては多くの課題がありますが、その第1は東電福島第1原発の汚染水問題の解決です。オリンピックの招致に当たって、安倍首相は「きちんとコントロールされていることを保証します」と断言しました。
 この言葉は国際公約であり、汚染水処理が最優先される必要があります。海洋への垂れ流しについて周辺諸国は大きな懸念を抱いており、放射能汚染の不安が残るようなことがあってはなりません。
 海洋汚染だけでなく、最近では地下水も汚染されていることが明らかになりました。これが徐々に拡大して川に流れ込んだりすることのないように「きちんとコントロール」される必要がありますが、これらの防止措置が技術的に可能かどうかは、はっきりしていないのです。

 第2の課題は、周辺諸国との領土紛争や歴史認識問題の解決でしょう。国際的な紛争要因を抱えたままでは、安心してオリンピックを開くことはできません。
 今回の開催都市決定で、当初は有力と見られていたイスタンブールが敗退した理由は、国内のデモなどの治安問題とともに隣国であるシリア情勢の不安定性でした。同じような問題を日本が引き起こすようなことがあってはなりません。
 また、過去の侵略戦争や植民地支配、従軍慰安婦問題などについての特異な歴史観によって、国際的な孤立を深めるようなことも避ける必要があるでしょう。安倍首相は自らの歴史認識を改め、周囲の国々が反発したり世界の人々が違和感を持ったりするような言動を控え、世界基準の政治や社会を作らなければなりません。

 第3に、国費のバラマキによってバブルを生み出さないような経済運営に務めることです。ただでさえ、アベノミクスによってミニ・バブルが目標とされ、国土強靱化を掲げたバラマキが始まっているのに、これにオリンピックのインフラ整備を名目にした公共投資が加わることになります。
 その結果、一方ではバブル経済の再来、他方での財政赤字の累積という問題が生ずることになるでしょう。インフレによって国民生活が苦境に陥り、国家財政が破綻するなどというようなことになっては困ります。
 震災復興が後回しにされたり、国民生活が犠牲になるような形での開催準備は本末転倒でしょう。「こんな大変なときに、オリンピックなどやっている場合か」「それ以前に解決するべき重要課題が沢山あるのではないか」という都民や国民の声も少なくないことを忘れないようにしてもらいたいものです。

 オリンピックはある種の「お祭り」ですから、それが開かれる以上、大いに盛り上がって被災者を励まし、震災復興を後押しするものになって欲しいと思います。もし、オリンピックの開催によって政策の優先順位が歪み、震災復興の足を引っ張り、「オリンピックなんかやらなければ良かったのに」と後悔することになっても、それは「あとの祭り」なのですから……。

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