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11月14日(木) 「一点共闘」から統一戦線の結成、そして民主連合政府へ [論攷]

〔以下の論攷は、「2013年・勤労者通信大学・通信」の『知は力 5 基礎コース』に掲載されたものです。〕

 はじめに

 「野党『一点共闘』 もっとあっていい」というみだしが目に入りました。『朝日新聞』2013年9月22日付の「政治断簡」というコラムで、前田直人編集委員が書いたものです。前田編集委員は「一点共闘」について「点を結びつけ、点が面になるような状況をつくる」という運動だとしつつ、次のように書いています。
 「共産党はなお小政党だけれど、原発汚染水問題、特定秘密保護法案、集団的自衛権など、重大な争点が多い。『一点共闘』はほかの野党にとっても、合理的な発想だろう。政権に再考を迫るため、各党が一点で力を合わせる。そんな場面がもっとあっていい。」
 このように、一般のマスコミも共産党の提唱する「一点共闘」に注目しています。そして、「各党が一点で力を合わせる……場面がもっとあっていい」と、推奨しているほどです。それは何故でしょうか。

 重要課題の山積と矛盾の先鋭化

 昔は「一内閣一重要課題」という言葉がありました。「三点セット」などと言って、争点を示すこともありました。しかし、今の第2次安倍内閣が抱えている重要課題は、とてもそんなレベルではありません。まさに、山積という言葉がピッタリなほど、多くの重要課題が提起されています。
 前田編集委員は「重大な争点」として、「原発汚染水問題、特定秘密保護法案、集団的自衛権」の3つを挙げています。しかし、これ以外にも憲法96条改定を前面に出した改憲問題や国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案、沖縄米軍普天間基地の移設や垂直離着陸機オスプレイの配備・訓練の強行、自衛隊の「国防軍化」を展望した装備の増強と戦争準備など、きな臭い政策が目白押しです
 また、来年4月からの消費税の8%への引き上げ、何が決まっているか未だに不明な環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉、産業競争力会議や規制改革会議による雇用と労働に対する規制緩和の攻撃、昨年禁止されたばかりの日雇い派遣解禁の動き、教育改革実行会議による教育に対する政治と行政の介入の強化など、次々と「重大な争点」が打ち出されてきています。
 これらの「攻勢」が、総選挙で衆院の3分の2議席以上、参院選で参院の過半数以上を与党が占め、「ねじれ」が解消されたために生じていることは明らかです。与党が法案を提出すればそのまま法律になってしまうような状況の下で、安倍首相は年来の懸案を一挙に解決しようとしており、そのために重要課題が増えて戦線がひろがり、それぞれの課題をめぐって国民の要求との矛盾も拡大してきているわけです。
 このような状況であればこそ、与党の「攻勢」を阻み、「政権に再考を迫る」ことが必要になります。しかし、「自民党一強体制」と言われるような力関係ですから、野党がバラバラでは効果がありません。そこで、力を合わせるための方策として「一点共闘」が注目を浴びるようになった、というわけです。

 「一点共闘」から統一戦線へ

 「一点共闘」とは、特定の要求課題で共同行動をとることです。「一点」を強調するのは他の課題や政策では共同できないことを前提にしているからで、もともと異なった政治的立場や潮流間での「共闘」を目標としています。
 「共闘」と言っても、狭く捉える必要はありません。互いに支持を表明しあったり、政策への賛同を明らかにしたり、共同声明に署名をしたりというレベルでも良いでしょう。それが、具体的な課題の実現を求めるデモや集会に結びつけば、なおけっこうです。
 「共闘」を実現しようとする場合、過去の言動を問題にしてはなりません。人間は変化するものであり、様々な運動によるアピールや説得などの働きかけは、このような積極的な変化を人びとの内面に呼び起こすことをめざしているのですから……。
 また、一致する課題以外の他の問題での違いを言い立ててはなりません。そもそも他の問題での違いがあることは前提で、そのような違いがあってもなお一致できる点での共同をめざそうとしているのですから……。
 このような結びつきは、特定の課題を通じての点と点の結合にすぎないかも知れません。しかし、先に挙げたように、政権による「攻勢」は多岐にわたり、矛盾も深まっています。「共闘」できる課題は1つや2つではないかもしれません。また、個々の重要課題をめぐって成立した多様な「一点共闘」が重なり合っていくということもあるでしょう。
 そうなれば、それはもはや「一点」共闘ではありません。「点」が連なって「線」になります。共通した要求課題での行動の統一を通じての「明確な政治目標をもった持続的な共同闘争の体制」(勤労者通信大学『「基礎コース」テキスト』314ページ)、すなわち「統一戦線」の結成ということになるでしょう。この意味で、「一点共闘」は統一戦線の萌芽的な形態であると位置づけることができるのではないでしょうか。

 選挙や政党支持率にも影響

 大衆的な運動における「一点共闘」の拡大は、選挙や政党支持率にも大きな影響を与えています。先のコラムでも、前田編集委員は小池晃共産党参院議員への取材を元に、「都議選の少し前から有権者の反応が好転。脱原発や反TPPなどの個別テーマで異なる政治勢力と手を携える『一点共闘』が拡がっていたという」と書いています。
 しかし、このような「一点共闘」の事実上の広がりは、それ以前からも徐々に生じていたのではなないでしょうか。たとえば、2011年秋の被災3県の県議選では共産党候補が躍進しています(岩手1→2、宮城2→4、福島3→5)。この背景には、東日本大震災の復旧・復興支援での「一点共闘」的な取り組みがありました。
 また、米軍普天間基地移設や米兵犯罪、オスプレイの配備・訓練の強行に対して島ぐるみでの反対運動が展開されてきた沖縄では参院選でも野党共闘が成立し、糸数慶子候補が自民党候補を破って当選しています。
 さらに、9月8日に投開票された茨城県議補選では、筑西市区(被選挙数1)で共産党の新顔候補が自民党推薦の無所属候補を破って当選しました。小池さんが指摘しているように、反TPPなどの個別テーマでの地元農協などとの「一点共闘」の広がりの賜だったのではないでしょうか。
 このような中で、共産党の支持率にも変化が生じています。2013年8月25日に放映されたフジテレビ「報道2001」の世論調査で、共産党の支持率が自民党に次ぐ第2位となって注目を集めました。『日本経済新聞』9月30日発表の世論調査でも、共産党の支持率は6%となって自民党の55%に次いで第2位となっています。
 ここで留意しなければならないのは、このような運動と支持の広がりとの関係は、「結果的にそうなる」ものでなければならないということです。支持拡大のための「一点共闘」ではなく、「一点共闘」はあくまでもその「一点」での具体的成果を獲得するためのものだということを忘れてはなりません。
 運動の過程において、それに参加している党派の利害との不一致や衝突が生ずる場合があります。その際でも、運動の発展を優先するべきです。その結果、党派にたいする信頼が高まり、支持が増えるという結果がもたらされるという関係でなければなりません。もし、これが逆になれば、支持拡大のために運動を利用しているのではないかとの疑念を生み、かえって支持を減らすことになるでしょう。

 むすび

 国民の要求があり、その実現が阻まれれば政治的な争点となります。その解決を目指して多くの人が発言し行動に移れば、社会運動が発生します。そのような運動は多くの人が参加すれば幅がひろがり、政治を動かす力が高まり、要求が実現する可能性も増すことになるでしょう。そのために、できるだけ多くの人の参加を可能にする手だてが「一点共闘」なのです。
 そのような「共闘」が多様に重層的に展開されれば、多くの要求や課題での連携や共同が生み出されることになります。こうして、一時的ではない中・長期的な共闘が実現し、組織的にも強固なものとなって「持続的な共同闘争の体制・組織」(同前)が生み出されれば、それは統一戦線へと発展するでしょう。政治を革新するための3つの目標(テキスト396ページ)に基づく統一戦線であれば、それは革新統一戦線にほかなりません。
 このような統一戦線を基盤にした多党派連立の民主的政府が民主連合政府です(テキスト394ページ)。そのような高い目標に向けての歩みが、いま「一点共闘」という形で始まったのではないでしょうか。

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