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10月4日(土) 大学への脅迫を断じて許してはならない [社会]

 なんという世の中になってしまったのでしょうか。気に入らない教員の排斥を求めて、大学を脅迫する卑劣な行為が相次いだというのですから……。

 戦争に言論弾圧はつきものです。大学の自治や学問の自由、報道の自由への攻撃は戦争への道にほかなりません。
 特定秘密保護法の制定によって情報の秘匿と報道の統制が図られ、朝日新聞たたき(バッシング)によってマスメディアを委縮させ、大学を脅迫して教員を辞めさせる。このようなことが、今日の日本社会で堂々と行われ、しかもそれが異常なことだという危機意識が極めて薄い。
 これが現実なのです。こうして、戦争への道は掃き清められるということでしょうか。

 一昨日の『朝日新聞』の社説「大学への脅迫 暴力は、許さない」によれば、「かつて慰安婦報道に関わった朝日新聞記者が教授を務める帝塚山学院大(大阪狭山市)に9月、別の元記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)には5月と7月、それぞれの退職を要求し、応じなければ学生に危害を加えるという趣旨の脅迫文が届いた。警察が威力業務妨害の疑いで調べている」といいます。
 脅迫文には、「辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。釘を入れたガス爆弾を爆発させる」「元記者を辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける」などと書かれていたそうです。北星学園大には「爆弾を仕掛ける」という内容の電話もあったといいますから、このような脅迫を行ったのは1人や2人ではないでしょう。
 そればかりではなく、家族までもがネット上に顔写真や実名をさらされ、「自殺するまで追い込むしかない」「日本から出て行け」などと書き込まれているといいます。断じて許すことのできない蛮行だと言わなければなりません。

 これに対して「社説」は、「朝日新聞は8月、過去の慰安婦報道について、女性を強制連行したと証言した吉田清治氏(故人)に関する記事を取り消した。間違った記事を掲載してしまったことに対して多くの批判が寄せられており、真摯(しんし)に受け止めている。しかし、だからといって学生を『人質』に、気に入らない相手や、自分と異なる考えを持つ者を力ずくで排除しようとする、そんな卑劣な行いを座視するわけにはいかない。このようなことを放任していては、民主主義社会の土台が掘り崩されてしまうだろう」と指摘しています。
 その通りだと思います。このような卑劣な行為が放任されてはなりません。
 警察は刑事事件としてきちんと捜査し、犯人を捕まえて処罰していただきたいものです。あわせて、このような社会的な風潮を生み出し、言論による「脅迫」や「恫喝」を行っているに等しい右派論壇とそれに同調している新聞、雑誌、週刊誌の責任をも問いたいと思います。

 昨日の『毎日新聞』は「大学への脅迫 看過できない卑劣さ」という「社説」を掲げ、「今回の事件の背景には、一部の雑誌やネット上に広がる異論を認めない不寛容な空気がある。各地で深刻さを増すヘイトスピーチ(憎悪表現)にも相通じる現象だ」と指摘していました。大学への脅迫やヘイトスピーチの「背景には、一部の雑誌やネット上に広がる異論を認めない不寛容な空気がある」というのです。
 昨日の『東京新聞』は「こちら特報部」で特集を組み、さらに詳しく「朝日バッシング」の「深層」を明らかにしています。そこには、「国動く時、排除の論理」「新たな『戦前』の序章?」という見出しが出ていました。
 出版物に「売国」「国賊」「反日」などの見出しを付ければ売れるというのです。商売での「小銭稼ぎ」に目がくらんで、出版人やジャーナリストとしての良心や誇り、矜持を捨て去って良いのでしょうか。

 学生を「人質」に取り、暴力をちらつかせて大学を脅迫し、気に入らない教員を追い出そうとするようなことが許されれば、大学の自治も学問の自由も失われてしまいます。新聞記者時代の報道を理由に、このような理不尽な攻撃がなされれば報道の自由に対する脅威となり、ジャーナリストの自己規制や委縮を引き起こすことになるでしょう。
 日本における自由と民主主義は重大な脅威にさらされていると言わなければなりません。右翼的風潮に迎合して売れ行きを伸ばすために、一部の学者、評論家、出版人、ジャーナリストなどがそれに加担してしまったのは何とも残念です。

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