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5月16日(土) 改憲阻止の第一歩は大阪市解体住民投票で反対票を投ずること [選挙]

 注目の大阪市解体住民投票が明日に迫ってきました。これは「大阪都構想」をめぐる住民投投票だとされていますが、正しくは大阪市解体投票というべきものです。
 というのは、この投票で賛成が多数になれば、大阪市が解体されて5つの特別区に再編されるだけで「大阪都」が誕生するわけではないからです。

 事前の世論調査では、反対の方が賛成より多くなっています。しかし、大阪では維新の力が強く、総選挙でも統一地方選挙でも最終盤での巻き返しによって事前の予想を覆す底力を示しました。
 今回も、最後に橋本徹市長が秘策を用意しているのではないかとの噂があります。政党助成金を惜しみなくつぎ込んだ物量作戦で大動員をかけるとか、独特の「泣き落とし」によって大阪市民の心をつかもうとするのではないかなどと警戒されています。
 最後まで油断のできない相手です。市民の良識に訴えて、ぜひ大阪市を守っていただきたいと思います。

 この住民投票の意義は、反対票を投ずることによって大阪市の解体を阻止するということだけではありません。安倍暴走の援軍に成り果ててしまった維新の党を日本の政界から駆逐する大きな転換点にもなるでしょう。
 というのは、この選挙に負ければ政治家を辞めて引退すると、橋下徹大阪市長が言っているからです。この言葉どおり選挙で敗北させ、政界から身を引いてもらおうではありませんか。
 橋下さんが引退すれば、維新の党にとっては大打撃となります。それによって維新の党を国会から追い出すきっかけにしなければなりません。

 この住民投票には、もう一つの大きな意義があります。それは反対票を投ずることで、維新の党の力を借りて改憲をめざそうとしている安倍首相の目論みを粉砕することです。
 安倍首相は、当面、「戦争法案」の成立によって既成事実化を進め、「お試し改憲」によって9条改憲への道を開こうとしています。改憲を発議するためには、衆参両院で3分の2以上の多数が必要です。
 与党は衆院でそれだけの勢力を確保していますが、参院では足りず、来年7月の参院選でも3分の2以上の改憲勢力を与党だけで獲得することは難しいと見られています。そのために、野党の中の次世代の党や維新の党などの「隠れ与党」を味方に引き入れようというわけです。

 このような目論見を許さず、改憲勢力の援軍になる可能性が高い維新の党に大打撃を与えることが必要です。そのためにも、今回の大阪市解体住民投票で反対票を多くしなければなりません。
 このような重大な意義のある住民投票です。大阪市民の皆さんの賢明な選択に大いに期待したいと思います。
 最後に、日本科学者会議大阪支部幹事会が5月11日に発表した「『大阪都構想』についての批判声明」を紹介したいと思います。この投票での選択に参考になると思われますので、活用していただければ幸いです。

「大阪都構想」についての批判声明
2015 年 5 月 11 日 日本科学者会議大阪支部幹事会

 「大阪都構想」については、名前から受けるイメージとは全く逆の、大阪市と大阪市民にとって大きな痛手を被る結果になるという批判が、多くの分野の個人、団体、政党から出されています。また、短期間に 100 人以上の学者から大阪都構想の危険性を批判するコメントが報道されています。(http://satoshi-fujii.com/) 私たちもまた、「大阪都構想」の内容に大きな危惧を覚えるところであり、日本科学者会議大阪支部としての「大阪都構想」に対する態度を表明することとします。

1. 二重行政という詭弁

 二重行政あるいは多重行政は、一般には、「国の出先機関、都道府県、市町村が同一地域で同じような仕事をすることにより、無駄が発生すること」と解説されていますが、統一的な定義はありません。これについては、住民の立場で検討する必要があります。問題とすべきは、住民にとって「無駄な二重行政」であり、単に、「同一地域で、都道府県と市町村が、類似の事業を行っていた」としても、必ずしも否定する必要はありません。大阪維新の会は、無駄な二重行政の例として、大阪府主体で建設した関西国際空港のりんくうタウンにある「りんくうゲートタワービル」と大阪市主体で建設した大阪市南港にある「WTC ビル」をその例に上げています。これらは共に破綻した事業で、無駄な事業であったことは確かです。しかし、そもそも、「りんくうゲートタワービル」は泉佐野市、「WTCビル」は大阪市にあり、同一地域ではなく、二重行政ではない。これらは政策の失敗例です。 橋下氏は、大阪府立大学と大阪市立大学、大阪市内にある大阪府立図書館と大阪市立図書館、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所、府立救急期・総合医療センターと住吉市民病院も二重行政に上げています。しかし、大阪府立大学と大阪市立大学は、それぞれ、堺市と大阪市にあり、同一地域にありません。また、同一地域にある施設についても、市民、府民に有効に利用されており、利用率が高いものであり、また、学術研究、公害・環境問題研究、医療など住民にとって必要なもので、無駄なものではありません。全国で、同一地域に都道府県立と市立の同様の施設は多数ありますが、それぞれ地域住民にとって有用なものである限り、否定されていません。このような施設を、二重行政だと言って否定しているのは大阪維新の会だけで、他の都市ではほとんど問題になっていません。 最初に松井知事は、大阪都になれば、二重行政の解消により年間 4,000億円の金額が浮く、と主張していました。しかし、その中に、地下鉄、市バス、ごみ収集など市営だけのもので、二重行政とは無関係のものが入っていました。また、図書館、体育館、病院など無駄とは言えないものが入っていました。大阪市議会で野党が計算したところ、むだな二重行政と言えるものは、実際は年間 1 億円程度、大阪自治体問題研究所の計算では年間約 3 億円という結果が出ています。つまり、最初の話は、金額を 1,000 倍から 4,000 倍に誇張していたことになります。 物事のある小さな一部分を取り出し、そこを大きく誇張することは、詭弁と言われており、橋下氏や大阪維新の会が述べている「二重行政」の例は、詭弁と言わざるを得ません。

2. 政令指定都市と地方自治

 「大阪都構想」は、「大阪府と大阪市の二重行政の解消を目指して、政令指定都市である大阪市を廃止して、5 つの特別区に変えよう」、というものです。政令指定都市は人口が 50 万人以上の政令で指定する大都市で、全国で 20 市ありますが、このような政令指定都市を廃止する話は大阪以外の地域でどこからも出ていません。これは、大阪市の自治権を手放すという、通常では考えられない提案であり、既に大阪市議会において否決されていたものです。 「大阪都構想」で、大阪府と大阪市の役割分担、政令指定都市、特別区という言葉が出てきますので、まず簡単に言葉を解説します。都道府県と市町村の役割及び政令指定都市と特別区の権限は、地方自治法で定められています。地方自治法では、「住民に身近な行政は出来る限り地方公共団体にゆだねる」とし、都道府県は、①広域にわたる事務、②市町村に関する連絡調整に関する事務、③その規模または性質において一般の市 町村が処理することが適当でない事務(例えば、大きな財政を要する事務、高度な専門的能力を要する事務)を行う、とされています。また、市町村は、基礎的地方公共団体であり、都道府県が行う事務を以外の、地域における事務を行う、とされており、このように府と市の役割を大きく分けています。さらに、市町村の中では政令指定都市の行政権限、財源が最も強く、都道府県並みで す。政令指定都市である大阪市は大阪府とほとんど同格で、大阪市域については、大部分の行政事務権限が大阪市に有り、大阪府には有りません。政令指定都市の次が、中核市、そして、特例市、一般市町村の順です。行政権限が強いということは、より多種類の仕事を行うという意味であり、仕事に財源も付いてきますので財源も大きくなります。東京都の特別区は、第 2 次世界大戦中の 1943 年に東京市が廃止されて出来た制度で、行政権限も弱く、財政的に自立しておらず、東京都から財源をもらって運営しています。東京 23 特別区長会は、戦時集権体制として作られた特別区を廃止して、東京○○市という自立した基礎自治体の連合体に変えたいという提案を出しています。(http://www.tokyo23city-kuchokai.jp/katsudo/arikata/191217.html) 結論として、「大阪都構想」は、行政権限と財源が最も大きい政令指定都市から、最も小さい特別区に変えるという提案であり、東京特別区長会自らが否定している制度であり、大阪市民にとって自治の喪失につながると考えます。

3.大阪市を解体し、特別区にすることにより生じる問題

 地方公共団体には、適当な範囲、面積という概念が重要です。大阪市の範囲は大阪府の都市域と一致し、都市を管理する自治組織としては適切な範囲、面積です。大都市の行政には、防災、都市計画、地域計画、都市区画整理、再開発、インフラ(道路、橋梁、公園、街路樹、河川、下水道、上水道)、環境(大気、水質、騒音・振動、悪臭)、港湾、消防、地下鉄、市バスなどの分野があります。これらは、「大都市としての一体化施策や大都市全体の集中管理」が必要です。5 つの地域に分割してそれぞれが行なうと、都市全体の集中管理が出来なくなり、また、職員数が 1/5 になり、分業と協業で高度に組織化された業務が行えなくなることが予想されます。 また、今まで大阪市が一元的に管理していたものが、大阪府、一部事務組合、特別区 の三重行政となり、さらに複雑になることも懸念されています。さらに、上水道の民営化案のように、淀川の常時変化する水質、水量、予想できないような汚染物質など、高度な技術と経験による即時の対応が必要なものに対して、利潤 追求を優先させる民間企業で対応できるのか疑わしいという指摘があります。 これまで、大阪市は都市工学、環境工学など、日本の都市の中でトップクラスの専門 技術者を育成してきました。大阪市立環境科学研究所や大阪市立工業研究所もその中に含まれます。大阪市を解体すると、これらの専門技術者、経験者の経験蓄積が壊される可能性があり、新しい組織で 技術者を育てるのに数十年の時間と余分な経費がかかることになります。

4.住民投票と民主主義

 今回の住民投票で議論になっているテーマは、行政組織論であり、また、ゆがめられた二重行政論です。行政組織論は、行政関係者以外にとってなじみが薄く、そのため多くの大阪市民からわかりにくいという声が出ています。テレビで公開の討論が行われていますが、1 時間という限られた時間の中で、複雑で大量の予備知識や裏付けとなる資料の理解が必要な問題を議論し、結論付けようというのは、かなり無理があります。民主主義とは、判断に困る複雑なことを、短時間で多数決により決めることではありません。この課題は議会で議員がきちんと時間をかけて議論した上で決めれば、それで済んだことです。いったん議会で否決されたことを、無理矢理住民投票にもってきたところに根本的な問題があります。

5.大阪経済の問題

 1990年以降全国的に事業所数と従業員数が減少傾向を示していますが、大阪府が他の大都市圏の都道府県よりも減少率が高いことは、経済統計に表れていますし、専門の研究者からも指摘されています。その要因分析は必要であり、大阪の経済研究者、行政機関、経済団体が参加して、政策を早急に立てていく必要があると考えます。その方向は、大阪の地域特性を生かしたものであり、地域での自立的な経済を作っていくべきで、東京をまねようとするものではだめだと言われています。さらに、現在、地球温暖化対策として、2050 年までに化石燃料の大部分を自然エネルギーに転換し、持続可能な社会を作っていくことが求められており、これを含めた経済政策を立てて行く必要があります。

6.結論

 結論として、日本科学者会議大阪支部は「大阪都構想」に反対を表明します。さらに、 科学者の社会的役割の自覚に立って、この反対の運動に参加されている個人、諸団体と協力して、市民の生活を安定させ、大阪の経済、学術、文化をより豊かなものに発展させていく活動を進めることを表明します。

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