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8月23日(火) 市民と野党の共同の発展を願う―参議院選挙をふりかえって(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『雑誌 経済』2016年9月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 成果を生んだ野党共闘

 今回の参院選で与党は勝利しましたが、圧勝ではありませんでした。野党も完敗したわけではありません。安倍首相に凱歌を上げさせなかったのは野党協力の力です。市民と野党との共同のたたかいが参院選にも引き継がれ、全国32の1人区で野党が統一候補を擁立したからです。
 その結果、11選挙区で野党候補が当選しています。3年前には2勝にすぎませんでしたから大きな前進です。議席が増えただけではありません。当選にはいたらなくても得票増となり、1+1=2という「足し算」以上の効果を発揮しています。『朝日新聞』の出口調査によれば、無党派層の56%、公明党支持者の24%、自民党支持者でさえ11%が野党統一候補に投票しました。その結果、28の1人区で各党の比例代表での得票合計を上回っています。
 市民と野党が統一候補を立てて一騎打ちになったために有権者の関心が高まり、投票率も上がりました。26の1人区で前回よりもアップしています。
 共闘に加わった各政党にもメリットがありました。民進党は3年前の前回民主党時代の17議席をほぼ倍増させ、32議席を獲得しています。共産党も改選議席3を6議席に倍増させ、比例代表では601万票と1998年の820万票に次ぐ2番目の得票になりました。
 社民党は改選2議席を守れませんでしたが、比例代表の得票を28万票増やして3年前の1議席を維持しました。生活の党と山本太郎と仲間たちは比例代表で12万票増となって1議席を獲得し、岩手と新潟では党籍のある候補が当選しています。

 改憲阻止・戦争法廃止に向けて

 参院選での与党の勝利によって、安保法(戦争法)廃止に向けた運動の再構築が必要になりました。同時に、改憲勢力が衆参両院で3分の2を超え、改憲に向けての動きが強まる危険が生じています。いつでも改憲発議可能な「危険水域」に入ったことは間違いありません。
 改憲を悲願としている安倍首相は、虎視眈々とチャンスを狙っており、少しでも隙を見せれば攻勢をかけてくることは目に見えています。投票日夜のテレビ番組で、さっそく「どの条文をどう変えていくか、憲法審査会で議論していく。いかに与野党で合意を作っていくかだ」と述べ、秋から改憲論議を始める意向を明らかにしました。当面、憲法審査会の再開とそこでの審議を通じて準備工作を進め、緊急事態条項に限って改憲発議を行うのではないかと見られています。
 今後、改憲をめぐる動向を注視し、戦争法の発動による既成事実化を阻み、民進党内の改憲派の動きを抑えて立憲4党の共闘を維持することが必要です。同時に、憲法に対する国民の理解を深めて改憲勢力の狙いと危険性を周知していく活動が重要になっています。
 また、野党共闘を継続し、首長選挙や衆院補欠選挙、来るべき解散・総選挙へと引き継いでいかなければなりません。安倍暴走政治をストップさせるために手に入れた最強の武器である野党共闘こそ、日本の政治変革に向けての希望となっています。戦争法を廃止して立憲主義を確立し、個人の尊厳を守ることのできる新しい政府の樹立に向けて、これからも闘いは続きます。

 本格的に政権をめざす

 今回の参院選で、野党は共闘すれば勝てるという実績を示しました。それは初歩的なものでしたが、自公政権に代わる受け皿づくりとしては大きな成果です。このよう野党協力が実現したのは2月19日の5党合意ですが、それから参院選まで半年もありませんでした。
 いわば、野党協力は突貫工事でプレハブ住宅を建てたような状況で選挙に突入したわけです。これを風雪に耐えるような本格的な建物にするのが、これからの課題です。そうしなければやがてやってくる解散・総選挙には勝てません。戦争法を廃止して立憲主義を回復するための新しい政権作りに本格的に取りかかることが必要です。
 選挙後の『朝日新聞』の世論調査で、安倍内閣を支持する理由として「他よりよさそう」という回答が46%で最多、与党が勝利したのは「安倍首相の政策が評価されたから」が15%、「野党に魅力がなかったから」が71%となっています。野党にとっては厳しい意見ですが、新たな政権の受け皿づくりによって魅力を高め、支持される政策を打ち出し、「他の方がよさそう」と思われるようになれば政権交代できるということでもあります。
 そのためにも、第1に、主体的な力を強めることが必要です。この間のたたかいで培われた市民や野党間の多様なつながりや信頼関係を大切にし、今後の共同の発展に生かしていかなければなりません。共同の力を発展させ団結を強めることです。
 第2に、政策的な魅力を高めることが必要です。個々の政策課題では安倍政権に対する支持は高くありません。その弱点を突くため、野党共同で国会に提出した法案や選挙に当たっての協定などを基礎に政策合意の幅を広げ、安保・自衛隊・税制・エネルギーなどの基本政策に関する合意を追求していかなければなりません。
 第3に、大衆運動の分野で個々の政策課題についての日常的な取り組みを強め、一点共闘を発展させることです。これは将来の連合政権に向けての土台作りであり、それを支える力を草の根から準備することでもあります。
         *      *      *
 野党共闘は始まったばかりです。緒戦で一定の成果を上げましたが、どう発展するかはこれからの取り組み如何にかかっています。再生に向けての足場はできました。いかに魅力を高めて幅広い国民と共同できるかが、その成否を決めることになるでしょう。
                                 (7月19日記)

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