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9月27日(火) 2016参院選とこれからの課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『全国学研会ニュース』No.175、9月13日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

3、「壊憲」の危機をどう乗り越えるか

 前述の通り、衆参両院で改憲勢力が3分の2を超えました。しかし、ここで注意すべきなのは、改憲勢力には「改憲」と「壊憲」の2種類あるということです。この両者を分かつ分岐点は、現行憲法の平和主義・基本的人権の尊重・国民主権という「三大原理」を前提にしているか、自由で民主的な平和国家としてのこの国の形を壊さないかということです。
 現行憲法の原理や理念を守ったうえでの統治ルールの変更や時代にあわせた条文の書き換えは、通常の「改憲」ですから問題にするには及びません。断固として阻止しなければならないのは、このような原理や理念を破壊する「壊憲」です。この両者を明確に区別したうえで、後者の「壊憲」路線を取る日本会議や美しい日本の憲法をつくる国民の会、自民党の憲法草案に批判と打撃を集中しなければなりません。
 憲法には第96条の改憲条項がありますから、「指一本触れてはならない」わけではなく、憲法は「不磨の大典」でもありません。条文を書き換えることはできますが、その原理や理念を破壊することは許されません。憲法審査会の再開に当たっても、この点を明確にするべきです。自民党の改憲草案はこの条件を欠いていますから憲法審議のたたき台にはならず、その破棄ないしは撤回を要求するべきでしょう。
 安倍首相はしばしば外国支援の理由として「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配」という「共通の価値観」をあげています。安保法の制定などで憲法を踏みにじっていながら「法の支配」などと言うのは笑止千万ですが、それを主張するのであれば憲法審議の前提としても「共通の価値観」を確認するべきでしょう。
 このような憲法運動においても、学者・研究者が果たすべき役割には大きなものがあります。現行憲法と自民党改憲草案との比較、後者の問題点の解明、「壊憲」反対世論の拡大に向けて、論攷の執筆、学習会や講演会での講師・チューターなどとして活躍していただきたいものです。

4、本格的に政権交代を準備する

 参院選とその後の都知事選で、市民と野党の共闘による力の結集という新しい活路が見出されました。これを維持し、発展させていくのが、これからの課題です。
 そのためには、第1に、自力を強めることが必要です。共闘に加わるそれぞれの市民団体や政党の団結、基盤の強化・拡大とともに、これらの団体相互の信頼関係を維持・拡大しなければなりません。新たにできた繋がりやネットワークを生かした共闘の継続に努めていただきたいものです。
 第2に、政策的合意の幅を拡大し、その水準を高めることが必要です。民進党と共産党との間には天皇制、安保、自衛隊、消費税などでの違いがあります。しかし、共産党は天皇制の廃止、安保条約の破棄、自衛隊の解散、消費税の廃止などを直ちに要求しているわけではなく、天皇元首化反対、在日米軍基地の強化や日米地位協定の見直し、自衛隊の「国防軍」化や「外征軍」化阻止、累進課税と再分配の強化などの点では、十分に合意可能ではないでしょうか。
 第3に、労働・社会運動のレベルでも一点共闘を拡大することが必要です。安倍内閣は「働き方改革」を打ち出して労働政策の見直しに着手し、社会保障についても大々的な切り下げを目指しています。安倍政権の攻勢を跳ね返して、労働者の側から「働き方改革」を実現するチャンスが生まれています。労働と福祉の現場における共同の発展は、新たな政権基盤を「草の根」から準備することにもつながるでしょう。
 第4に、これからの選挙での共闘を進めることが必要です。10月に予定されている東京と福岡での衆院補欠選挙はもちろん、地方の首長選挙や議員選挙なでも可能なところでは野党間の共闘を実現するべきでしょう。それと並行して、来るべき解散・衆院選挙の準備を始めなければなりません。
        *       *      *
 「天下分け目の合戦」は、まだ始まったばかりです。緒戦で一定の成果を上げることに成功しましたが、いまだ初歩的なものにすぎません。これを教訓として生かしながら、解散・総選挙を展望しつつ政権交代に向けての本格的な準備を始めようではありませんか。
 もはや、「カヤの外」での「独自のたたかい」に取り組む時代は終わりました。学者・研究者後援会としても、各種の選挙で共産党を応援するだけでなく、新政権を展望した政策作りへの提言など研究者としての特性を生かした準備を始めなければなりません。政権交代後の新政権への支援や協力のあり方についても、今から準備しておく必要があるのではないでしょうか。
 「新しい酒は新しい革袋に」。その「酒」を仕込むだけでなく新しい「革袋」の作成にも、各分野の専門家として学者や研究者は大きな役割を果たせるはずですし、果たさなければならないのですから……。


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