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12月22日(木) 実証された野党共闘の弁証法的発展(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、勤労者通信大学・通信の『知は力 基礎コース6』に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 新潟県知事選と衆院補選で明らかになった共闘の威力と民進党の弱点

 このような参院選1人区での野党共闘の経験はさらに大きな成果を生むことになりました。それが新潟県知事選での米山隆一候補の当選です。選挙告示の6日前に、民進党を離党して立候補を決断した米山さんを推薦したのは、共産党・生活の党(現自由党)・社民党の3党に新社会党や緑の党も加わった「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」であり、柏崎刈羽原子力発電所の再稼動に反対する広範な市民も応援に駆け付けました。
 結果は、6万票の大差で米山さんが当選しています。参院選でも1人区だった新潟選挙区では野党統一候補の森ゆうこさんが当選しましたが、そのときの2200票差を上回る成果でした。原発再稼働反対やTPP反対などの大義の旗を掲げ、明確な争点を掲げて市民を結集すれば勝てるという「勝利の方程式」が実証されたわけです。
 ところが、この選挙では民進党が“自主投票”に回り、蓮舫代表など幹部が応援に入ったのは選挙戦の最終盤でした。この1週間後に投票された東京と福岡での衆院補選でも、野党統一候補を立てた民進党の対応は極めて不十分なものでした。いずれの場合も民進党の弱点が露呈したといわざるを得ません。
 その背後には、支持団体である労働組合の連合からの強い働きかけがありました。10月24日付『中国新聞』は「民進党と連合幹部の間では『密約』が交わされていた」として、「2補選告示を控えた10月4日、蓮舫代表と野田佳彦幹事長、連合の神津里季生会長、逢見直人事務局長との4者会談で野党共闘の原則を確認した。①共産の候補取り下げ、②政策協定は結ばない、③推薦は受けない、④表立った場所で共産と選挙活動はしない―といずれも『共産隠し』に徹する内容」だったと報じています。実際の選挙戦はこのような形で闘われ、「利敵行為」ともいうべき対応によって与党の候補が当選しました。
 しかし、このような野党共闘についての「揺れ戻し」は、民進党内でも支持されていません。『サンデー毎日』12月4日号は、「蓮舫は『裸の王様』」「定まらない野党共闘、ついにベテラン勢が離反」と報じています。これによれば、民進党は10月に比例復活の衆院議員と落選中の支部長を数日間にわけて党本部に招集して聞取りを行ったところ、「驚くことになんと全員が、『共産党と協力すべき』と答えたのだ。2日目も同じ意見だった」といいます。「共産党と組むと連合の支持がもらえなくなるが、それでもいいのか」と聞くと、全員が「それでもいい」と答えたそうです。
 また、この記事では前原誠司衆院議員についても、「(共産党と)もっとオープンに政策協議をすれば共通点はいくつも出てくるはずだ」「自分が代表なら、共産党と真摯に話し合って接点を必ず見つける」と、共産党との話し合いに意欲を見せていると報じています。当然でしょう。連合に引きずられて共闘に背をむければ、こう言われるだけでしょうから。
 「嫌ならどうぞ、勝手にしてくださって結構です。でも、国民からは見放されますよ」と。

 むすび

 以上に見たように、野党共闘は弁証法的な発展を遂げてきました。それは60年安保闘争における安保共闘を嚆矢とし、その後のベトナム反戦運動や沖縄返還闘争、革新自治体の誕生などでの社共共闘に受け継がれ、日本における野党共闘の原型を生み出しました。
 しかし、80年の「社公合意」によってこのような流れは暗転し、社共間の共闘は瓦解していきます。政党間での共闘が困難になるなかで、団体や個人による共同の追求を課題に革新懇が発足しました。以降、苦節35年ともいうべき苦闘の歴史を積み重ねるなかで、新たな展開が生まれたのが昨年の「15年安保闘争」です。
 こうして、野党共闘の「テーゼ」、逆風の時代の「アンチ・テーゼ」を経て、新たな野党共闘の成立という「ジン・テーゼ」の時代を迎えます。それは、かつての社共共闘の再現ではありません。市民が積極的に関わり、野党4党が選挙での当選だけでなく連合政権の樹立をも展望する「本気の共闘」になろうとしています。
 もちろん、それが一直線に進んできたわけではなく、これからも紆余曲折は避けられないでしょう。新潟県知事選や衆院補選での民進党の対応など、今後の野党共闘についての不確定要因も生じています。
 しかし、ここでも弁証法的な発展があるのではないでしょうか。民進党も加わった参院選1人区での共闘が「テーゼ」であり、その後の「揺れ戻し」と民進党の弱点の露呈が「アンチ・テーゼ」でした。そして、これから衆院選での「本気」の共闘の実現という「ジン・テーゼ」の段階が訪れようとしています。それは、参院選での共闘の再現ではなく、それをさらに発展させ、野党連合政権樹立と統一戦線結成への新たな扉をひらくものとなるでしょう。また、そうでなくてはなりません。
 こうして、日本の歴史における新たな政治的実験と実践の新しい時代が始まろうとしています。その時代の流れを見極め、目的意識的かつ主体的に生き抜くためにも、哲学を学び正しい世界観を身に付けることが大切であるということを、最後に強調しておきたいと思います。

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