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1月28日(日) 裏金疑獄があぶり出した自民党の腐敗と劣化――表紙を変えて延命させてはならない(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.846、2024年2月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「政治とカネ」疑惑の発覚と広がり


 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる「政治とカネ」の疑惑は、自民党と岸田政権を揺るがす大疑獄へと発展しました。物価高のもとで生活苦に追われる国民をしり目に、法の抜け穴を利用した不正な方法で私腹を肥やしてきた政治家への国民の怒りが爆発し、自民党と内閣に対する支持率は急落しました。
 この問題は自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)に所属する議員がパーティー券収入のノルマ超過分についてキックバック(還流)を受け、裏金化していたとされるものです。しかし、このような形で裏金を得ていたのは安倍派だけに限られず、志帥会(二階派)、宏池政策研究会(岸田派)、平成研究会(茂木派)、志公会(麻生派)という主要な5派閥すべてに共通する問題でした。
 なかでも安倍派は組織的に裏金づくりを行い、その額も過去5年間で5億円と大きく、所属議員の大半に還流しているだけでなく、政治資金収支報告書に記載しなくても良いと伝えて口止めするなど悪質なものでした。このため、岸田首相は所属閣僚4人の更迭に踏み切り、安倍派の党役員も交代しました。
 臨時国会閉幕を待って東京地検特捜部は捜査を本格化させ、立件も視野に一斉に事情聴取や家宅捜査を行いました。この事件は長年続いてきた自民党各派閥の悪弊を浮かび上がらせるものですが、このような裏金作りがいつから、どのような形でなされ、何に使われてきたのか、事実の解明と責任の追及が行われなければなりません。

 重篤化した自民党の宿痾

 「宿痾」というのは、長い間治らない慢性の病気のことです。自民党は以前からこのような宿痾を抱えており、それが重篤化して死に至る病となるリスクが高まっています。それは右傾化と金権化でした。この宿痾によって全身がむしばまれているのが安倍派です。
 右傾化という点では改憲と軍事大国化の先兵となり、安保3文書の作成と敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、大軍拡・大増税や改憲発議に向けての政策転換をリードしてきました。金権化という点でも、キックバックによって組織的な裏金作りを行い、収支報告書に記載せず、金集めに狂奔していた姿が明らかになりました。
 このような病気を治癒するためには、世論による批判と法的な規制が欠かせません。根本的には政権交代によって罰し、解党的な出直しを迫る必要があります。自民党は30年以上も前に、派閥による資金調達の制限や党役員と閣僚らの派閥離脱、派閥解消の決意などを掲げた「政治改革大綱」を決定していたのですから。自主的な改革や努力に任せても「百年河清を俟つ」に等しいことは、今回の事件によっても明らかです。
 政治資金集めのパーティーは事実上の献金にほかなりません。政党助成金が導入されたとき、企業・団体献金は5年以内に禁止されることになっていました。その約束が守られていれば、このような二重取りで裏金を作る悪弊は生じなかったはずです。パーティーを始めとした企業・団体献金を禁止し、政治資金の流れを透明化するための制度改正が急がれます。
 捜査の結果、政治資金規正法違反や脱税ということで逮捕され有罪となれば、議員辞職は免れず、公民権停止となって選挙に出ることもできなくなります。国民の信頼を回復するためには、少なくとも裏金受領の有無と使途を進んで明らかにして派閥を解消し、国会での証人喚問に応ずることが必要でしょう。

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