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9月15日(火) 麻生さんの暴言・失言は初めから分かっていたはずなのに [自民党]

 今日は、アメリカでの「リーマン・ショック」からちょうど1年になります。そして明日は麻生内閣最後の日ということになります。
 約1年前、福田前首相から託された解散・総選挙を先延ばしし、結局、麻生首相は総選挙で未曾有の敗北を招いてしまいました。これについて、今日の『日経新聞』は次のように書いています。

 当初は就任直後の内閣支持率の高いうちに衆院を解散しようと模索した首相。最大の誤算は、大規模な経済対策が支持率維持に結びつくとの自負から解散先送りを選んだことだ。解散を先送りするうちに失言が相次ぎ、施政者にとって大切な有権者からの共感を一気に失った。

  「解散先送り」は大失敗でした。昨年の今頃、解散を選択していれば、少なくとも、「失言が相次ぎ、施政者にとって大切な有権者からの共感を一気に失」うというようなことはなかったでしょうから……。
 それにしても不思議なのは、麻生首相の「失言」です。このような形で、「有権者からの共感を一気に失」う可能性があることは、最初から分かっていたはずでしょうに……。
 現に、昨年の今頃、雑誌の編集部からインタビューされた私は、次のように述べています。

 今度の選挙ではっきりしていることは、自民党にとって勝利はなく、負けをどの程度に押さえられるかということだけです。麻生さんが暴言・失言で新首相としての人気を失う可能性もありますから、自民党にとっては厳しい選挙でしょう。(「巻頭インタビュー 総選挙で問われるもの」『建設労働のひろば』No.68、2008年10月号)

 わたしはここで、「麻生さんが暴言・失言で新首相としての人気を失う可能性もあります」と言いました。約1年前に私が予測できたほどですから、自民党の中でこのような心配をした人もいたにちがいありません。本人の麻生さんだって、「暴言・失言で新首相としての人気を失う可能性」に気がついていたはずです。
 それなのに、何故、このような人をトップリーダーに選んでしまったのでしょうか。どうして、麻生首相は自重自戒せず、あのような形で失言を繰り返してしまったのでしょうか。
 1年近くも前から、「自民党にとっては厳しい選挙」であることが分かっていたのに、ズルズルと今日に至ってしまったのが実状です。それほどに、危機意識が希薄だったということなのかもしれません。

 この点からしても、自民党は歴史的役割を終え、退場することを運命づけられていたのだといわざるを得ないでしょう。「二大政党制論」に幻惑された人々は、盛んに自民党の再起を論じていますが、そんなことがあってはなりません。
 そもそも、ポスト小泉を争った「麻垣康三」の最後の1人である谷垣禎一さんが後継総裁候補に名乗りを上げること自体、古い自民党の姿そのものではありませんか。これでは、再起など不可能でしょう。
 このような自民党に対しては、次のような言葉を贈りたいと思います。前掲の私のインタビューの先の方で述べた部分になります。

 もし、自公両党で過半数を失って政権交代となると、自民党の方が分裂の危機におちいります。というより、この機会に分裂させ、完膚なきまで打ちのめさなければなりません。94年の村山政権の時は、せっかく社民党が首相を握ったのに自民党が許容する政策の枠内でしか動けず、その延命と復権を手助けする結果になりました。この轍をふむべきではありません。野党になった自民党が再起不可能になるくらい決定的な打撃を与えるべきです。

 とはいえ、自民党は今では、分裂する元気もなさそうです。

9月1日(火) 水に落ちた犬は打て [自民党]

 苔むした岩の上に鷹が止まっている。これが、総選挙後の自民党の姿ではないでしょうか。

 今回の総選挙の結果で自民党にとって深刻なのは、若手の議員が軒並み落選してしまったことです。前回初当選した83人のうち、今回も再選されたのはわずかに10人にすぎず、新たに当選した新顔はたったの5人です。
 つまり、119人の衆院議員のうち、1年生が5人で2年生が10人の合計15人にすぎないのです。最も多いのは、5回当選の21人、次いで4回当選の18人となっています。
 自民党は中堅とベテラン主体の政党となって、世代交代に失敗しました。その中堅の中には極端なタカ派もおり、ベテラン議員(苔むした岩)と「靖国派」と言われるようなタカ派議員(鷹)の党に変質してしまいました。

 逆に、民主党は若くて新鮮な議員が大量に誕生しています。初当選組は143人に上りますが、特に、若者と女性が多いという点が注目されます。
 今回の総選挙では女性が54人当選して最多となり、当選者に占める割合も11%と、初めて二桁になりました。
 これは民主党が自民党の大物議員の対立候補として女性を積極的に擁立し、40人も当選させた結果です。新議員の平均年齢も全体で0.3歳若返りましたが、このうち民主党は49.4歳と最も若くなっています。

 今回の民主党の大勝は「小沢戦略」の成功だと見られています。私もそう思いますが、しかし、それは若くて魅力的な新人議員の発掘という点にとどまりません。
 第1に、「生活が第一」という方向に民主党の基本路線を転換させ、新自由主義的な政策へのシンパシーを封印したことです。
 第2に、地方の首長選挙での相乗りを禁止するなど、与党との対決姿勢を明確にしたことです。
 第3に、小選挙区での競合を極力避け、他の野党との選挙協力を推進したことです。
 そして第4に、先に指摘したような新人議員の発掘と女性候補の擁立があります。

 代表時代の小沢さんは、福田首相との「大連立」を志向し、それが受け入れられないと代表辞任を表明するなどの失敗もありました。しかし、民主党内の批判と説得を受け入れて方向転換しました。また、西松建設問題によって足をすくわれそうになりましたが、ギリギリの段階で代表を辞任するという選択を行い、民主党を救いました。
 このような小沢さんの決断がなかったなら、今回の民主党の大躍進は実現しなかったにちがいありません。これらの決断もまた「小沢戦略」の一部であり、それが上手くいったがゆえの民主党の成功だったと言えるでしょう。
 今後とも、「生活が第一」の旗を掲げ続け、構造改革によって痛めつけられた国民生活の立て直しに全力を注いでもらいたいものです。これを含めて、自民党政治からの転換をどれだけ実現できるかが、これから問われることになるでしょう。

 次の政治決戦は来年の参院選です。今回の結果を基にした共同通信のシミュレーションによると、改選121議席のうち、民主党は75議席を占め、非改選と合わせて135議席になって過半数を大きく上回るそうです。
 非改選と合わせた党派別の勢力予測では、自民党75議席、公明党15議席となっていますが、これは自公協力がなされた今回の選挙に基づく試算です。次の参院選で選挙協力がなされる可能性は少なく、獲得議席はさらに減るでしょう。

 「朽ちかけた岩」と「鷹」しか残っていない自民党を、さらに追い込むことが必要です。次の参院選で最終的な引導を渡すための「小沢戦略」を、ぜひ編み出していただきたいものです。
 魯迅も書いているではありませんか。「打落水狗」(水に落ちた犬は打て)と……。



7月16日(木) 衆院解散前に自民党の方が解散されたようになったりして [自民党]

 開催されるのかどうか。開かれたとして、何が決まるのか、何も決まらないのかが注目されています。自民党の両院議員総会のことです。

 いよいよ、解散・総選挙に向けての最後のヤマ場にさしかかったようです。このヤマを超えられるかどうかによって、麻生首相の手による解散が可能になるかどうかが決まるでしょう。
 反麻生勢力の中川秀直元幹事長らは、両院議員総会の開催に必要な国会議員の署名を執行部に提出しました。署名は133人で、与謝野馨財務・金融相や石破茂農水相の2閣僚や鳩山邦夫前総務相が含まれているそうです。
 これに対して自民党の執行部は握りつぶしてしまうか、両院議員総会に代わる「総括の場」を開くことでお茶を濁すか、先延ばしして時間切れを狙うか、いずれではないかとみられています。21日までに、両院議員総会は開催されるのでしょうか。

 よしんば、両院議員総会が開催されたとしても、それがどのようなものになるかは分かりません。執行部は、都議選敗北などについての責任を明らかにして陳謝し、次期衆院選に向けた決意を述べるなど、ガス抜きの場にすることを狙うでしょう。
 中川さんたちは、総裁選を前倒しして看板を取り替えようとするでしょうが、署名した人々の全てがこのような考えだというわけではありません。現に、自民党津島派会長は「(津島派で)署名した人の大多数は、純粋に麻生首相と意見交換したいという気持ちだ。総裁選とか、総理をどうするかを念頭に置くなら同調できない」と述べています。
 もし開かれたとしても、両院議員総会は紛糾するにちがいありません。混乱のうちに閉会が宣言され、看板を取り替えることもできず、分裂状態を克服することもできず、選挙戦に突入せざるを得なくなる可能性、大です。

 自民党と連立を組んできた公明党は、この状態を苦々しく見ていることでしょう。自民党の混乱と反麻生の動きは、自民党とともに麻生内閣を支えてきた公明党からしても大きなマイナス要因になるからです。
 分裂選挙になって反麻生の立場で選挙に臨んだ場合、公明党の支援を受けられるのでしょうか。今頃、公明党は選挙支援を交換条件に、反麻生派を押さえにかかっているにちがいありません。
 反麻生勢力の議員は、どこまで突っ張れるのでしょうか。総選挙を目前にして、自民党執行部から公認を撤回されたり支援を拒まれたり、公明党からも支援されなくなるなどというリスクをおかす覚悟があるのでしょうか。

 もがけばもがくほど深みにはまる「あり地獄」状態はまだ続いているようです。衆院が解散される前に、自民党の方が解散されてしまったかのような状況になりつつあります。

 なお、「現代日本の働き方を問う―規制緩和下の労働と生活」という統一テーマの下、駒澤大学で開かれる労務理論学会第19回全国大会http://wwwsoc.nii.ac.jp/jalm/n_jalm/19komazawa3.pdfにおきまして、明後日7月18日(土)午前9時半からの特別シンポジウムで「労働再規制の構造とプロセス」について報告する予定です。これは駒澤大学経済学部との共同企画で一般の方の参加も可だということですので、関心のある方にご出席いただければ幸いです。



7月19日(土) 自民党の政策的破綻と組織的瓦解が始まった [自民党]

 いよいよ、追いつめられてきたということではないでしょうか。福田首相と自民党です。
 やることなすこと、上手くいきません。お先真っ暗、というところでしょう。
 起死回生を狙った洞爺湖サミットですが、ほとんど評価されていません。政権浮揚効果もなく、各社の世論調査での内閣支持率は微増に終わりました。

 マスコミによるあれだけの宣伝にもかかわらず、この程度の効果しか上がらなかったわけです。外交パフォーマンスによって内閣支持率の回復を図ろうとした福田さんは、がっかりでしょう。
 主要国(G8)が地球温暖化対策について「2050年に世界の温室効果ガス半減」との長期目標を「世界で共有する」ことを首脳宣言に盛り込み、アメリカも同意したかのような体裁を取り繕いました。しかし、7月11日に米環境保護局は温室効果ガスの排出規制は不適当との見解を公表し、経済や就業に悪影響があるという理由で07年4月の連邦最高裁判決を拒絶しました。
 サミットでの「共有」合意は、外向けのポーズにすぎなかったということでしょう。ブッシュ大統領は「2枚舌」を使った、ということになりましょうか。

 先日は、全国で漁業者が一斉休漁という「ストライキ」を行いました。これについても、福田さんは無策です。
 漁民は燃料の値上げに音を上げたわけですが、暫定税率の撤廃によって折角下がった石油の価格を再可決によってわざわざ引き上げたのは自公両党ではありませんか。あの時、暫定税率の復活などということをやらなければ、確実に燃料代は今よりも安かったはずです。
 いや、元はといえば、これもブッシュ大統領とそれに追随した小泉元首相の誤りでした。イラク戦争によって原油の供給量が減り、値が上がることを見越した投資ファンドが価格を引き上げたからです。

 「第3次石油危機」の始まりではないか、と言われています。それだけではありません。
 「第1次食糧危機」の始まりかも知れません。アメリカの対外政策と新自由主義の誤りは、平和を脅かしただけではなかったのです。
 安定した職と食が失われようとしています。国民は、将来に向けての不安を抱え、飢えに苦しむことになる可能性が高まっています。

 しかし、政権は無策です。京都市の講演会で伊吹文明幹事長は、消費税増税は必要だが、それは総選挙の後に先送りしたいという趣旨で、「選挙に勝とうと思うと、一種の『目くらまし』をやらないとしょうがない」と述べました。
 まともな打開策がないから、有権者を欺く「目くらまし」に頼るしかなくなっているということなのでしょうか。嘘をついてでも、選挙に勝ちさえすれば良いということなのでしょう。
 それをまた、政権党の幹事長があけすけに言っているのです。国民を馬鹿にし、見くびるのもいい加減してもらいたい、と思います。

 こんな自民党ですから、身内にさえ見限られ始めているようです。自民党支部の一部で、政策への不満から支部大会で「解散決議」を可決する動きが出ているからです。
 埼玉県松伏町の自民党松伏支部は7月5日、支部大会を開いて松井正雄幹事長が提出した「自民党松伏支部解散決議」を出席者全員の賛成で可決しました。高橋昭男支部長は、「年金問題、医療制度、天下り問題など、いまの自民党の政策は、国民生活と大きくかけ離れていて不信感がある。私たち下部組織の声にも、耳をかさない。中央組織は、もっとしっかりするべきだ」と語ったそうです。
 このような動きは、今後も強まるかもしれません。政権党における政策的な破綻と組織的な瓦解が始まっているということでしょうか。