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2月1日(金) 社会民主主義の新展開をめざすスウェーデン [国際]

 今日から2月です。昨日、今日と、まだ風は冷たいものの、「光の春」を思わせる明るさに満ちた一日でした。

 昨日は、九段下にある「ホテル・グランドパレス」に行ってきました。北海道大学の科研費プロジェクトによるワークショップがあったからです。
 そのテーマは、「転機のスウェーデンモデル-社会民主主義レジームの新展開」というものでした。「スウェーデンモデル」が「転機」を迎えており、「社会民主主義レジーム」も「新展開」している?
 これは、聞きにいかなければなりません。うまい表題を付けたものです。「食欲」をそそるに十分なテーマです。

 このワークショップを準備されたのは、北海道大学の宮本太郎教授と山口二郎教授です。それぞれ別の研究プロジェクトで科研費をもらっているようですが、ときどき一緒にシンポジウムなどを企画されています。
 宮本太郎と山口二郎ですから、「北大のタロー・ジロー・コンビ」というところでしょうか。そんなことを言ったら叱られそうですが、宮本さんとは法政大学社会学部で講師をしていた頃からの知り合いですから、お許しください。
 山口さんのお名前は、もちろん、以前から知っていましたが、直接、名刺を交換するのは今回が初めてです。会場には、大分大学での社会政策学会の折に別府の温泉巡りをご一緒した田端博邦先生、昨年の全国政治研究会でもお会いした篠田徹さん、『日本労働年鑑』の執筆をお願いしている鹿田勝一さんなどの顔も見えました。

 報告したのは、ヤン・エドリングという研究者とボー・レングレンという労働組合の顧問のお二人で、どちらもLOという労働組合ナショナルセンターの活動家出身です。山口さんがあいさつされ、宮本さんが司会で、日本語での要約とコメントをされました。
 スウェーデンの労働組合LOには、私も2001年9月に訪問してインタビューをしたことがあります。忘れもしません、「9.11」の同時多発テロが起きたその日のことです。
 相手をしてくれたのは、アンソフィー・ハーマンソンさんという若い女性の方で、この方から「9.11」事件について知らされました。「アメリカは大変でしたね」と……。

 この時のインタビューについては、拙著『この目で見てきた世界のレーバーアーカイヴス-地球一周:労働組合と労働資料館を訪ねる旅』(法律文化社)の中に書いてあります。97頁にはハーマンソンさんの写真も出ていますので、ご覧になってください。
 このハーマンソンさんが今はどうしているのか、消息を知りたかったというのも、私がここに出席した理由の一つです。LOの顧問だというレングレンさんならご存じかもしれないと思い、休憩時間に伺いました。
 私の発音が良くなかったのでしょう、最初は分からないようでしたが、言い直したら、「ああ、ハーマソン」ということで、お二人とも彼女のことをご存じでした。今はpolitical secretary (政治書記)だと言いますから、そのうちスウェーデン社会民主党の女性政治家として登場するかもしれません。

 肝心の内容ですが、スウェーデンは日本の二歩前を進んでいるという印象でした。日本はまだスウェーデンモデルに追いついていないのに、当のスウェーデンは、これまでのモデルすら限界があるとして、さらなる自己刷新をめざしているからです。
 それが「転機」や「新展開」という言葉によって語られるのは、積極的労働市場政策が行き詰まって地方を中心に失業率が高まり、それを背景に、昨年の総選挙で社会民主党から保守・中道連合への政権交代があったからです。
 言ってみれば、革新から保守への政権交代です。しかし、「あのスウェーデンでさえ、社民路線から新自由主義路線へと転換しつつあるのか」などと早とちりしてはいけません。

 確かに、この総選挙で社民党は政権を失い、保守党が返り咲きました。しかし、変わったのは社民党ではなく、保守党だったのです。
 会場で配られた宮本太郎さんの論攷「スウェーデンの政権交代と新しい労働戦略」『生活経済政策』第120号(2007年1月号)では、「総選挙の終了後の9月20日、スウェーデンの有力紙ダーゲンスニーヘーテルには、この選挙が『福祉国家の危機』どころか『社会民主主義の勝利である』とする論説が掲載され、話題となった」と書かれています。山口さんも、あいさつの中で「スウェーデンでは、新自由主義はすでに過去のものとなり、保守党すら『新労働党』を標榜するようになっている」と述べられました。
 つまり、保守党は新自由主義的な立場から転換したがゆえに、支持を回復することができたというのです。「労働の価値を再び高めることこそがスウェーデンにとっての課題である」と、保守党のレインフェルト党首が訴えていたというのですから驚きました。

 「新しい労働党」の看板を掲げようとする保守党に対して、社会民主主義レジームはいかなる方向で新展開を遂げようとしているのか。これがこの日の大きなテーマでしたが、あまり明瞭には理解できませんでした。
 語学の制約と時間の制約が大きかったと思います。報告は英語で、ときどき要約されるだけでしたし、時間は午後2時から5時までの3時間しかありません。もう1時間くらい欲しいところです。

 私の印象に残った点は、エドリングさんが教育訓練プログラムの内容の刷新を強調していた点です。失業率の増大を防ぐためには、製造業中心の教育プログラムではなく、地域の実情にあったものに変えていかなければならないということのようです。
 地域の特性に見合った産業政策の重要性ということも強調されました。これからはregion(地域)の時代であり、スウェーデンの南部と西部の地域で新しい経験が生まれているそうです。
 地域ということでは、スウェーデンの外側のバルト地域、EUとの関連も重要で、レングレンさんはEU全体をカバーするような国境を越えた規制の必要性を強調していました。また、篠田さんが質問していましたが、従来の北欧5ヵ国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、アイスランド)に、ラトビアやエストニアを加えたバルト海沿岸諸国の政労使の協議システム(ネオ・コーポラティズム)も形成されつつあるようです。

 スウェーデンの社会民主党は政権を失いました。それは新自由主義後の新たな社会民主主義のバージョンアップに後れを取ったからのようです。
 スウェーデンモデルの刷新と社民型レジームの新展開という点で、「新しい労働党」を標榜する保守党と社民党との競い合いが始まっているということでしょうか。そこからどのような新モデルが誕生するのか。これからも、スウェーデンからは目を離せないということになるでしょう。

 このワークショップが終わってから、近くに住む娘と食事をしました。ここでも、北欧の話が出たのです。
 新しくつきあい始めた男性はフィンランド人で、ヘルシンキ工科大学の大学院生だといいます。親としては、まさにオヤオヤ、です。
 写真を見ると、金髪の好男子のようです。これからは、スウェーデンだけでなく、フィンランドからも目が離せなくなるということでしょうか。


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コメント 2

ゴンベイ@オルタナティブ道具箱

ダーゲンスニーヘーテル紙の論説というのは▼でしょうか?
The Swedish choice's brown black back(英訳タイトル)
http://www.dn.se/DNet/jsp/polopoly.jsp?a=574018

ネット上でスウェーデン語>英語のWEBページ全部の無料翻訳サービスというのが見つからないので全貌が分かりません(汗)
by ゴンベイ@オルタナティブ道具箱 (2008-02-03 20:30) 

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by モンクレール (2011-08-24 11:40) 

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