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6月28日(土) 規制改革会議のその後 [規制緩和]

 労働の規制緩和には、二つの「エンジン」がありました。一つは、経済財政諮問会議であり、もう一つは、規制改革会議です。
 経済財政諮問会議は、昨日、「骨太の方針2008」を出し、閣議で決定されました。これに関連して、論攷の執筆を頼まれています。
 「骨太の方針2008」については、いずれ書くことにして、今日は規制改革会議の現状について紹介することにしましょう。

 規制改革会議は、昨年末、「一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている」などという「第2次答申」を出して、厚労省と激しいやりとりがありました。これについては、すでに予告した近刊の拙著『反転の構図-労働の規制緩和をめぐって(仮題)』(ちくま新書)で、その経緯を詳しく書きました。
 今日、改めて、当日の議事録と記者会見の記録を見ました。労働問題については、全く、議論になっていません。
 これについての説明もなければ、記者からの質問もありません。「書きっぱなし」ということでしょうか。

 問題は、その後です。ほとんど会議が開かれていません。
 規制改革会議のホームページhttp://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/には「会議情報」というページがありますが、07年度の「本会議」は「答申案文決定」を議題とした「第11回(平成19年12月25日)」以降、開催されていません。
 規制改革会議の「第二次答申」に対しては、厚労省が12月28日付で「規制改革会議『第二次答申』(医療分野及び労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方」という反論を出し、規制改革会議は08年2月22日付で「『規制改革会議「第二次答申」(労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方』に対する規制改革会議の見解」という長い表題の釈明を明らかにしました。
 ということは、この釈明は会議を開いて検討されたものではないということになります。誰が、どのような権限で書いたのでしょうか。

 会議が開かれていないのは、「本会議」だけではありません。タスクフォースの会議も一度も開かれていません。
 タスクフォースは「重点事項推進委員会」を除いて15ありますが、そのうちのどれ一つとして、08年に入ってから会議を開いていないのです。それは、07年度(08年1月~3月)だけではなく、今年度(08年4月以降)に入ってからもそうなのです。
 つまり、今年に入って、タスクフォースは活動を停止してしまったということになります。それが一時的なものかどうかは分かりませんが、08年前半の半年間にわたって全てのタスクフォースが全く活動しなかったというのは、極めて不自然だと言わざるを得ないでしょう。

 ようやく、6月5日になって、「第1回 規制改革会議」が開かれました。翌6月6日には、第1回重点事項推進委員会が開かれています。
 本会議の議題は、「今後の審議の進め方について」と「規制改革会議の運営方針の改定について」となっています。また、重点事項推進委員会の議題は「厚生労働省との公開討論」ですが、テーマは「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について」というものです。
 どちらについても、「議事概要」はいまだにアップされていません。今の段階で、議論の内容を知ることは不可能です。

 ただし、規制改革会議については、記者会見の内容が公表されています。これを読めば、この間の活動停止の理由がある程度分かります。
 これについて、草刈議長は次のように説明しています。

 今年に入って、3月まではいろいろやっていたんですけれども、4月以降、後で出てきますが、措置したものをきちんとやっているかどうかのチェックをずっとやって、やっていないものは駄目だよという作業を随分力を入れてやっていただきました。

 また、草刈議長は、タスクフォースについても「今まではこういう形で7つのくくりではなくて、15個ぐらいのタスクフォースという形でやっていました。……それを7つのグループに分けまして、同じような性質のもの、あるいはタスクとして近似性の非常に高いものを一つずつまとめた」と説明しています。
 つまり、この間、会議が開かれなかったのは、「措置したものをきちんとやっているかどうかのチェック」やタスクフォースの再編を行ってきたためだと考えられます。
 このチェックは「6月下旬から7月上旬までやりたいと思っています」と、草刈さんは述べています。まだ、しばらくは続けるつもりのようです。

 何故、このような作業が必要になっているのでしょうか。それは、答申を出しても無視されたり、ひっくり返されたりする例が目立ってきたからだと思われます。
 これについては、記者からも「閣議決定されているにもかかわらず、これだけ通知・通達なんかで、引っくり返されてしまうというようなこともあるというのは、これは規制改革会議を軽視されているようにも映るんですけれども、その辺はどういうふうにとらえていらっしゃるのか」などという質問が出されています。
 これに対して、草刈議長は、混合診療を例に、「その枠を広げるということで、2004年に合意しているんですよ。……ところが、そこに通知というものを、課長が私らに何も言わないで通知を各病院にだして、それで薬事法というのを持ち出して、範囲を狭めるような方向に行ってしまったんです。これは完全に裏切りというか、私らのやったことが全然無視されているわけですから、とんでもない話だといって、去年、……それを引っくり返して、通知を取り消させたんです」と答えています。

 このやりとりから、どうして、規制改革会議がチェックに力を入れているのかが分かるでしょう。混合診療の問題以外にも、「裏切り」や「無視」がないかどうかを洗い出そうとしているわけです。
 記者が指摘しているように、それだけ規制改革会議が「軽視され」るようになっているということではないでしょうか。提言や答申が実施されなかったり動かなかったりする例が増えてきたために、「措置したものをきちんとやっているかどうかのチェック」をやらざるを得なくなり、それに時間を取られたために会議が開けなかったということなのではないでしょうか。

 このような経過には、規制改革会議の地盤沈下が如実に示されています。もはや規制改革会議には、「第二次答申」で示されたような「問題意識」を実行するような力は残っていないようです。
 あれは「冬の花火」のようなものだったのかもしれません。華々しく打ち上げられはしても、季節はずれの花火を見ている人は誰もいなかったようですから……。

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