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7月20日(日) 反転の夏 [規制緩和]

 一昨日、ちくま新書の裏表紙に掲載する写真を撮ってもらいました。これで、こちらが渡さなければならない材料がすべて揃ったことになります。

 この新著の仮題は『反転の構図-労働の規制緩和をめぐって』となっています。ここで「反転」というのは、自由主義政策からの離脱、あるいは見直し、修正という意味合いです。拙著は、「労働の規制緩和」についてこのような状況が生まれていることを指摘し、それがどのような経緯で、何故、どのようにして生じたのかを明らかにしようとしたものです。
 労働分野における反転の代表的な例は、労働者派遣法の見直し問題でしょう。日雇い派遣の原則禁止ということでは、ほぼ与野党の主張は一致しています。
 厚生労働省は、秋の臨時国会に改正案を提出する予定です。今後は、この規制の範囲をどこまで拡大するかという点での綱引きが行われるでしょう。
 いずれにしても、派遣という雇用形態について、緩和から規制強化へという転換が生じたことは明らかです。行き過ぎを是正するということであっても、大きな前進だと思います。

 しかし、これまでの政策からの離脱、あるいは見直しや修正は、なにも労働の分野に限られません。このところ、様々な分野での反転の動きが目に付くようになりました。
 規制緩和は格差の拡大や競争の過熱などの新たな問題やひずみを生み出し、その是正や規制強化が必要になったからです。先の通常国会では、青少年有害サイト規正法、改正出会い系サイト規正法、改正迷惑メール規正法、保険法、改正携帯電話不正利用防止法、改正特定商取引法・割賦販売法、改正介護保険法、改正省エネルギー法など、規制を強めるための法律が成立しました。

 02年に実施されたタクシーの規制緩和策についても、国土交通省は7月11日に参入・増車の規制対象地域を拡大する局長通達を出しました。許可制から届け出制に緩和したためにタクシーの台数が増えすぎて、過当競争が生じたからです。
 売り上げや収入が減少し、交通事故が増えるという問題が生まれました。料金は下がるどころか、初乗り運賃は640円から710円に上がっています。
 このタクシーの規制緩和によって、一体、誰が利益を得たのでしょうか。タクシー用車両のリース業を展開して大もうけしたオリックスの宮内義彦さんくらいです。

 昨日の新聞にも、反転や見直しに向けての動きが報じられました。18日に開かれた日弁連の理事会で司法試験の合格者を増やす方針について、「弁護士の質の低下が指摘されており、増員を急ぐべきではない」として見直しを求めることを決めています。
 また、厚生労働省は18日、若手医師の臨床研修制度を見直し、大学病院に限って医師不足が顕著な産婦人科や小児科などに特化した研修プログラムを認める方針を決めました。
 さらに、『朝日新聞』7月19日付は教員免許の10年に一回の更新制について特集記事を掲げ、「中止という選択肢もあるのではないか」と指摘しています。いずれも、これまでの政策や制度の見直しや中止の動きです。

 まだあります。18日に開かれた沖縄県議会の6月定例会で、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書案・決議案」が賛成多数で可決されました。決議に法的な拘束力はありませんが、きわめて重要な「見直し」の要求です。
 野党は今後、対決姿勢をさらに強めることになるでしょう。これが、沖縄における基地強化における反転の契機になることを願っています。
 沖縄のみならず、全国にある米軍基地の「見直し」に連動すればよいのですが……。日米間の軍事的連携の強化においても、是非、反転が生じて欲しいものです。

 もう一つ、公立の美術館や博物館における指定管理者制度の見直しの動きについても紹介しておきましょう。『日経新聞』7月19日付の「文化欄」にあったものです。
 記事は、「廃止や変更に踏み切る事例が相次いでいるほか、独立行政法人といった代替方式を模索するケースも現れた」と書いています。運営形態は、「ケースバイケースで考えるべきだ」「優秀な人材を確保できる形態」を選ぶべきだ、などという識者の指摘を報じていますが、当たり前のことでしょう。
 コスト削減一辺倒では、文化が死んでしまいます。美術館や博物館の存在価値にふさわしい運営形態を考えるのは当然のことです。

 まさに、「反転の夏」とも言うべき「見直し」の盛況ぶりです。これ以外にも、ブッシュ米大統領のイラク戦争への支持や後期高齢者医療制度の導入など、小泉構造改革が犯した過ちからの反転の必要性はますます明らかになってきています。
 それはいずれ、自民党政治全体の見直しと反転に結びついていくに違いありません。そしてそのチャンスは、次第に近づいてきているのではないでしょうか。



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