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8月2日(土) 虚像にすがった「臨戦内閣」 [内閣]

 『日刊ゲンダイ』から3回も電話があったそうで、申し訳ありません。昨晩、帰ってきたのは12時近くでした。
 恐らく、内閣改造へのコメントを求めてのものでしょう。記者の問いに答えられませんでしたので、ブログでコメントすることにします。

 自民党役員と改造内閣の人事は、「やっぱりね」と言いたくなるような顔ぶれです。何の「サプライズ」もないことに、かえって驚いてしまったというところでしょうか。
 一言で言えば、解散・総選挙対策のための「臨戦内閣」ということになります。「すべては選挙のために」という意図が明瞭です。
 その点では、「福田カラー」がハッキリ示されていると言って良いでしょう。小泉「構造改革」路線からの反転という点でも、「福田カラー」が明確に示されています。

 今回の改造の最大の注目点は、麻生幹事長の就任です。「国民的人気が高い」ということで、総選挙対策の「目玉」にされたようです。
 しかし、「国民的人気が高い」とされていた「あの人」は、それを見込まれて首相になって参院選を戦ったのに、惨敗してしまいました。「国民的人気が高い」とされている「この人」は、それを見込まれて幹事長になったわけですが、果たしてどうなるでしょうか。
 対中国・アジア外交では、それを重視する福田首相との不協和音が生ずる可能性があります。選挙対策では、不仲とされている古賀誠選対委員長と対立するかもしれません。

 幹事長への就任は、麻生さんにとっても大きな賭でしょう。自民党ナンバー2になることで福田さんの後釜を狙っているわけですが、目論見通りいくのでしょうか。
 内閣改造が評価され政権運営が上手くいけば福田さんの下での解散・総選挙となり、麻生さんの出番はありません。逆に、さらに支持率が下がって福田政権がのたれ死ぬということになれば、麻生さんも一蓮托生で責任を取らされることになります。
 麻生さんの出番は、その中間の場合しかありません。福田首相では選挙を戦えないという声が高まり、なおかつ、麻生さんが責任を追及されず、それなりの人気と影響力を保持できているときだけです。

 ヒョッとしたら、福田さんは余力を残して退陣し、総選挙という決戦を麻生さんに託すつもりなのかもしれません。その場合には、福田から麻生への事実上の禅譲ということになるでしょう。
 その場合でも、麻生さんで大丈夫なのか、という懸念は残ります。「暴言・失言」のリスクが高いからです。
 人気が高いとされ、演説に自信を持ち、聴衆受けを狙う政治家は、しばしばこのような「罠」にはまって失敗します。まして、麻生さんは安倍さんと同様の「靖国派」であり、右翼的でタカ派の放言を繰り返してきた過去があります。

 また、物価高と生活苦にあえぐ庶民の生活感情を理解できないという弱点も無視できません。吉田茂の孫で大会社の社長、若くして経営者として成功し、政治家としても苦労なしでのし上がってきたボンボンという恵まれた経歴では、そうなるのもやむを得ない面があります。
 しかし、生活不安に呻吟する庶民の苦しみを理解する能力も、共感する感性も、そのような人々に寄り添おうとする意欲もないような人であれば、現在の経済・社会状況の下での政権運営は難しいでしょう。いずれ、大きな齟齬を生ずるのではないでしょうか。
 その兆しを、麻生さんが書かれた著書の中にうかがうことができます。麻生さんは、『とてつもない日本』という本を書いていますが、その書名にも見られるように、現状への楽観的な見方に満ちあふれているからです。

 たとえば、麻生さんはこの本の中で、「今は豊かで、親がいれば食うには困らない」(44頁)とか、「今の世の中、餓死する程の貧しさが存在するわけではない」(46頁)などと書いています。驚くべき記述です。
 07年7月、市の生活保護を打ち切られた50代の男性が「おにぎり食べたい」と日記に書いて餓死した事件を、麻生さんは全く知らないのです。選挙区である福岡8区に近い北九州市で起きた事件だったというのに……。
 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの事務局長である湯浅誠さんは、『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』という本の中で、「見えない貧困に立ち向かうためには、人々が貧困問題を意識し、身近にある貧困を見つける目を持つようにならなければならない」(221頁)と指摘しています。麻生さんは、一度転んだらどん底まで落ちてしまうこのような「すべり台社会」の過酷さに気づかず、「身近にある貧困を見つける目」を持っていないということになるでしょう。

 「すべり台社会」の問題を解決することも、そのような社会を変えていくことも、このような人には不可能です。「国民的人気が高い」という麻生さんの評判は、安倍さんの場合と同様、マスコミによって作られた虚像にすぎません。
 つまり、福田首相は、麻生さんの虚像にすがって総選挙に向けての「臨戦体制」を整えたということになります。それが幻であったということもまた、安倍さんの場合と同様、選挙の結果によってハッキリと示されるにちがいありません。


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