12月５日（金）　経営者たるもの、首を切るなら、腹を切れ：五十嵐仁の転成仁語：SSブログ

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12月３日（水）　09春闘での賃上げ実現..｜12月８日（月）　「さもしく」とは何とい.. ブログトップ

12月５日（金）　経営者たるもの、首を切るなら、腹を切れ　[労働] [編集]

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　これも、内閣支持率の急落で窮地に陥った麻生首相の人気取りパフォーマンスなのでしょうか。雇用問題で、共産党の志位委員長との異例の党首会談に応じました。
　朝日コムでは、次のように報じられています。

　共産党の志位委員長が５日、国会内で麻生首相と会談し、党の緊急雇用対策を手渡して「派遣切り、期間工切りをやめさせる実効ある措置」をとるよう求めた。首相は「経団連の首脳には雇用の維持を申し上げた。派遣社員を切らないで正社員に置き換える企業もある」と応じた。
　首相が、共産党の委員長だけとの会談に応じるのは、最近では異例。志位氏は会談後、記者団に「一定の認識は共有できた。緊急の大きな問題について意見交換するのは当然だ。党首会談が実現したことは良かった」と述べた。一方、河村官房長官は５日の記者会見で共産党の要請について「非常に厳しい状況下で、各党が積極的に（雇用）問題の解決をはかるために努力している。党派を超えてという思いもあって要請を受ける」と語った。

　雇用の維持は、緊急に対応すべき重要問題ですから、人気取りだろうが何だろうが、政府が対応する姿勢を見せることは重要です。単なるパフォーマンスだけでなく、実際に役に立つような施策を直ちに講ずることが必要でしょう。

　ところで、麻生首相が雇用問題で日本経団連などの財界に要請した直後、日本経団連の御手洗会長が会長を務めるキヤノンの関連会社が1000人を上回る人員整理の計画を明らかにしました。
　これは、御手洗さんによる麻生さんへの挑戦ではないでしょうか。「漢字も読めないあんたの言うことなんか聞かないよ」と言っているように見えます。
　麻生首相は、この挑戦を放置しておいてはなりません。「派遣切り、期間工切りをやめさせる実効ある措置」をとるよう求めた志位委員長と「一定の認識は共有できた」というのですから、御手洗会長を首相官邸に呼びつけて厳しく叱責し、キヤノンの大量解雇を止めさせるべきでしょう。

　厚生労働省の調査でも、非正規雇用労働者の解雇は３万人を越えると見られています。このままでいけば、実際にはこの数倍になるでしょう。
　「派遣切り」などで職を失えば、会社の寮などに入っている人は出て行かなければなりません。いっぺんに職と住を失うことになります。
　新潟県中越沖地震で避難所に入った人は、最大時１万1410人を数えました。住居を失った人に対しては、仮設住宅が提供されています。

　この新潟県中越沖地震での避難民の３倍にもなる人々が、これから職と住を失おうとしているのです。これを放置していて良いのでしょうか。
　自然災害である地震なら被災者を救援するが、社会災害である「派遣切り」だから救援する必要はない、ということにはなりません。また、自然災害は防ぎようが無くても、社会災害なら防止する手だてがあるはずです。
　まず、職と住の喪失を防ぐために政治はあらゆる手を打ち、経営者は踏ん張らなければなければなりません。次に、職を失って住むところが無くなった人々を救済するために緊急の措置が取られる必要があるでしょう。

　住むところが無ければ困るのは、自然災害の被災者だろうと社会災害の被災者だろうと、変わりありません。必要なら、利用可能な住宅を提供し仮設住宅を建てるべきです。
　冬に向かって寒さが厳しくなる中、露頭に迷う人を出してはなりません。利用可能な、あらゆる手だてを取るべきです。
　職を失うのは、その人に過失や失敗があったからではありません。これまでの儲けを会社が維持するための身勝手な人員整理の犠牲者であり、「個人責任」を問うことのできない被災者なのです。

　今日の『朝日新聞』には、3000人の「期間工切り」を計画しているトヨタの例が出ています。「黒字なのに　雇用減　『なぜ？』」という見出しとともに……。
　トヨタは、07年度に過去最高益となる２兆円もの利益を上げていました。それが、08年度には6000億円になるというにすぎないのです。6000億円でも、黒字は黒字です。
　11月30日付の『しんぶん赤旗』は、「『期間工切り』トヨタ　株主配当　たった３円分で90億円　3000人雇用守れる」という見出しの記事で、次のように指摘しています。

　トヨタ自動車の場合、期間工の日給は約１万円。二交代制の手当を含め年収約300万円（残業代を含めない）です。年間90億円あれば3000人の雇用を守ることができます。90億円は株主への08年度の中間配当総額2037億円の５％分にもなりません。
　トヨタの発行株式数は30億株超です。１株当たり１円の配当で約30億円。たった配当３円分を雇用に回せば、期間工3000人を減らす必要はありません。
　また、豊田章一郎名誉会長と豊田章男副社長だけで1600万株近く保有しています。トヨタの年間配当が一株当たり140円だった2007年度に、２人だけで22億円を超す配当を手にしたことになります。その４年分程度があれば、3000人の雇用は守れます。

　経営困難に陥っている米大手自動車３社は政府支援要請を行い、フォードのアラン・ムラーリーＣＥＯなどは報酬を年１ドルに削減するそうです。しかし、赤字だった去年でさえ、ムラーリーＣＥＯは約２千万ドル(約18億６千万円)もの報酬を得ていました。
　07年に、トヨタの名誉会長と副社長の「２人だけで22億円を超す配当を手にし」、フォードのＣＥＯも約20億円の報酬を手にしていたのです。そのような経営環境を維持するために政府支援が要請され、期間工や派遣社員が犠牲にされようとしているのです。
　このような理不尽が許されてはなりません。「経営環境が厳しい」というのであるなら、まず、経営者自らが血を流すべきでしょう。

　かつて、日経連会長時代の奥田碩トヨタ自動車元会長も言っていたではありませんか。「経営者たるもの、首を切るなら、腹を切れ」と……。

　なお、大原社会問題研究所の客員研究員で金属労働研究会理事の芹沢寿良先生が、『金属労働研究』第96号（08年11月号）に拙著『労働再規制』についての「読書案内」を書いてくださいました。４頁にわたる詳細なもので、的確な問題指摘もされています。ありがとうございました。
　また、『日経ビジネス』の12月１日号にも「著者に聞く」という欄で、拙著『労働再規制』についての私のインタビューが掲載されています。写真入りで１頁にわたって掲載してくださいました。ありがとうございます。

2008-12-05 18:46 nice!(0) コメント(2) トラックバック(0)