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1月13日(火) 労働ダンピングによる劣悪労働を一掃することが目的 [労働]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
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昨日は「成人の日」でした。この日、20歳となって成人したのは約133万人で、21年ぶりに過去最少を更新した昨年を約2万人下回りました。
 総人口に占める割合は昨年より0.02ポイント下落して1.04%となり、3年連続で過去最低を塗り替えました。このような数字にも、日本社会の「滅びへの道」をかいま見ることができます。

 さて、当面の労働政策の焦点は労働者派遣法の改正問題であり、製造業における労働者派遣の禁止の是否が新たな争点として浮上してきています。この問題をどう考えたら良いのでしょうか。
 私は、昨年、日本経済評論社から刊行した拙著『労働政策』の第2章「労働政策の焦点と課題」の「1 基本としての雇用・賃金・労働時間」で、「パートと派遣労働者の待遇改善」という項を設け、次のように書きました。

 雇用の基本は、直接・常時雇用である。基本的には、使用者が雇用責任を取ることができる直接雇用で、働きたいだけ働ける期間の定めのない雇用でなければならない。しかし、仕事の繁閑や専門性の関係で、一時的臨時的に雇用者を増やさなければならない場合や専門の技術者などを雇用する必要性が出てくる。こうして、一時的で部分的な業務を担当するパート労働者や派遣社員が登場する。しかし、それはあくまでも例外的なものであり、決して典型とされてはならない。これが、パートや派遣労働者の問題を考える基本的視点である。(58頁)

 このような立場からすれば、間接雇用である派遣労働は「あくまでも例外的なもの」とされなければなりません。しかも、それがいかに不安定で人間扱いされない働き方であるかは、この間の「派遣切り」によって実証されました。
 経営者が「このような働き方でも将来に不安はない」ということを示したかったなら、安易な「派遣切り」を行うべきではなかったのです。製造業派遣の禁止という世論を生み出したのは、このような「派遣切り」がとりわけ製造業関係の大企業で目に付き、大きな社会問題となったからです。
 したがって、特に大きな問題を生んでいる製造業の派遣からまず禁止するという考え方はありうると思います。それだけでなく、可能な範囲で、間接雇用を縮小していくことが必要でしょう。

 とはいえ、すでに多くの人が派遣労働に従事しています。製造業以外にも派遣労働は広く浸透しているのが現状であり、これらの労働者の保護を優先すべきだという意見もあります。
 しかし問題は、あれかこれかということではないと思います。働く人々の利益になることであれば、あれもこれも、直ちに取り組まなければなりません。
 間接雇用の範囲の縮小、派遣先の雇用者責任の強化、派遣労働者の賃金・労働条件の改善やセーフティネットの強化などが、総合的に取り組まれる必要があります。具体的には、登録型派遣の「原則禁止」、派遣労働者の時給引き上げ、同一の業務を行う正社員との「均等待遇」(同一価値労働同一労働条件)の実現、マージン率の上限規制、違反には派遣先との雇用が成立したと見なす「みなし雇用」制度の導入、「専ら派遣」やグループ企業への派遣の規制強化、契約解除に際しての一時的な住宅確保と再就職の斡旋などが必要でしょう。

 製造業派遣を禁止すれば、派遣労働者が職を失うという反対論があります。そんなことはありません。
 派遣という間接雇用ではなく直接雇用に切り替えればよいだけの話です。現に、いすゞ自動車は派遣を期間工に切り替えてきました。問題は、その期間が2~3カ月の短期の繰り返しだった点にあります。
 このいすゞ自動車でも期間・派遣社員1400人の解雇が発表され、その後、期間工550人については解雇が撤回されました。しかし、派遣労働者はその対象になっていません。同じ非正規労働者でも直接雇用と間接雇用とでは違いがあることを、この事例は明確に示しています。

 麻生首相は、製造業派遣を禁止すれば、業績が回復した場合に雇用を増やせなくなると言って懸念を示したそうです。しかしこれも、非正規労働者と派遣労働者を同一視した誤解に基づく発言です。
 製造業は、派遣が解禁される以前から、需要の増減に合わせた形で期間工や臨時工を採用してきました。直接雇用の非正規労働者は派遣が解禁される以前から存在していたのです。
 派遣という形態でなくても一時的な労働需要の増加に対応することは可能であり、両者の差が出るのは採用ではなく解雇であるということは、いすゞ自動車の例に明らかです。もちろん、このような非正規労働者の雇用の安定、賃金の引き上げや待遇の改善も同時に進められなければなりませんが……。

 派遣という形態であっても、一部には、賃金が正規労働者より高いという場合もあります。専門的な高技能職で、職場は変わってもいつまでも働き続けることは可能だという派遣労働者もいます。
 雇用の安定と生活できる賃金が保障されれば、派遣という形態を認めても良いのではないかという議論はあり得るでしょう。派遣労働に対する再規制の目的は、あくまでも労働ダンピングによる劣悪労働を一掃し、働く人が人間として扱われることにあるのですから……。


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by そりゃないよ獣医さん (2009-01-15 15:04) 

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