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4月18日(日) 占領期に暗躍した米軍の諜報機関CIAとMIS [日常]

 久しぶりに、加藤哲郎さんにお会いしました。昨日の土曜日のことです。
 「ちきゅう座・現代史研究会・日露歴史研究センター・社会主義・共産主義運動研究会」の合同講演会に出席したからです。会場は明治大学のリバティータワーでした。

 地下鉄新宿線の神保町の駅から出ようとしたときのことです。大きな、叫び声が聞こえました。
 地上に出ると、道の反対側に林立する「日の丸」の旗が見えました。デモの隊列のようです。
 「外国人参政権反対」「在日外国人の特権を許すな」などと叫んでいます。日本版ネオ・ナチとも言うべき極右集団のデモでした。

 講演会には、100人ほどの方が参加されていました。加藤さんの講演の前に、もう1人の方が講演されましたが、対照的とも言うべきものでした。
 最初の方の講演については、「こんな講演もあるのか」と、呆れかえってしまいました。前置きのつもりかもしれませんが無関係な話で時間を取り、内容は散漫で脈絡が亡く、エピソードの羅列で何を言いたいのか良く分かりません。
 聴衆に、「関係ない話は止めてください」などと注文され、「皆さんに怒られるかもしれませんが」などと言いながら、それでも話を続けていました。そう思うならやめればいいのにというのが、率直な感想です。途中で聴衆から文句が出る講演を、初めて聴きました。

 結局、何を言いたいのか、良く分からないまま、1時間ほどで終了です。そのお陰で時間が残され、加藤さんの話をタップリと聞けたのは幸いでした。
 加藤さんの話だけでも良かったのに……。3時間くらいの独演会の方が、もっと充実していたんじゃないでしょうか。
 加藤さんについては、「こんな講演もあるのか」と、感心しました。相変わらず精力的な話しぶりだっただけでなく、大変、学術的で緻密なお話だったからです。

 加藤さんの講演は、「GHQ/G2 vs. CIA vs. 日本共産党-米国立公文書館所蔵CIA・MISファイルから見る占領下日本の情報政治」というものでした。大変興味深い演題でして、これに惹かれて、私もノコノコとお茶の水まで出かけて行ったわけです。
 ただし、実際の講演の内容からすれば、最初の「GHQ/G2 vs. CIA」はその通りでしたが、最後の「vs. 日本共産党」というのはちょっと違う、という印象でした。そもそも、「占領下日本」にあっては、「vs. 日本共産党」などということは不可能だったでしょうし、実際の話もそのようなものではありませんでした。
 共産党も情報収集の対象とされていたということであって、決して「vs.」などという関係ではありません。それも、CIAファイルには共産党関係のものは少ないようで、レジュメには、「なぜ左翼のCIAファイルはないのか?」などと書かれていました。

 加藤さんが強調されていたのは、アメリカが収集している海外情報には中央情報局CIA関連のものと陸軍情報部MIS関連のものがあり、互いに補い合う関係にあったということ、米軍基地のあるところには必ず情報部隊が存在し、今も情報収集を続けているということです。これまではCIA関連のものが重視されており、MIS関連の資料が十分に検討・利用されてこなかったのは、大きな問題だと指摘されました。
 とりわけ占領期においてこのことは重要で、本国の指令を快く思っていなかったマッカーサーは、本国と直結していたCIAではなく、GHQ/G2(ウイロビー、キャノン機関)の方、つまりMIS系統の方を重用していたそうです。これが変わるのは、1951年4月のマッカーサーの解任以降のことだったといいます。
 これ以降、CIAは本格的に日本への要員派遣を行い、①米国大使館アタッシェ、②日本郵船ビル、大蔵省、林野庁ビルを転々としたジョージ・ガーゲットのグループ、③市ヶ谷の旧陸軍士官学校跡の基地パーシング・ハイツ、④横須賀米軍基地内などの4箇所のグループに分かれて、約100人から200人が活動していたそうです。朝鮮で戦争が行われていた1951年頃の話です。

 ということで、秘密の文書ファイルを元に、野坂参三の在米非合法活動、服部卓四郎らの吉田茂暗殺とクーデター計画、児玉誉士夫への評価の変化、ゾルゲ事件についての川合貞吉の証言、緒方竹虎への期待、テレビ開局と原子力発電推進についての正力松太郎の役割、賀屋興宣の売り込み、岸信介を通じての自民党への資金提供、鹿地亘事件の真相、民社党結成の背景、ヴェノナ文書の重要性など、興味深い話が次から次に出てきました。加藤さんのお話では、つい最近、これについての論攷を脱稿されたばかりだと言います。
 『年報日本現代史』に掲載される予定だということですので、これ以上、書くのは止めましょう。いずれ、その詳細は、加藤さんのウェッブ・サイト「加藤哲郎のネチズンカレッジ」http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtmlにも掲載されるでしょうし……。
 加藤さんは、この春に一橋大学を退職され、早稲田大学の客員教授になられました。今後、タップリと確保された時間を生かして、収集した資料を解読し、新たに同僚となられた元共同通信の記者でアメリカの情報活動に詳しい春名幹男教授との共同研究もされるそうですから、どんどん新しい成果が発表されることを期待したいと思います。

 ソ連崩壊によってモスクワの闇に埋もれていた事実が明らかにされました。今また、アメリカのナチ戦争犯罪情報公開法(1998年)や日本帝国政府情報公開法(2000年)によって、ワシントンの闇に隠されていた事実が明るみに出され解読されつつあります。
 これらの法律を作ったのはクリントン時代の民主党政権でしたが、日本でもようやく民主党政権になって密約問題を契機として外交秘密の闇に光が当てられようとしています。このような点にも、政権交代の意義があると言えるのではないでしょうか。

 歴史は無数の事実の積み重ねによって成り立っています。その事実を発掘し、意味を解明することによって、新しい歴史が書かれることになります。
 その光の中にどのような像が結ばれることになろうと、たじろいではなりません。どのようなものであっても、私たちは歴史の真実と向き合う勇気を持たなければならないのです。それは過去において、まぎれもない「現実」だったのですから……。

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miki

訪問させていただきました。
by miki (2010-04-18 10:57) 

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by モンクレール (2011-08-24 13:15) 

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これ以降、CIAは本格的に日本への要員派遣を行い、①米国大使館アタッシェ、②日本郵船ビル、大蔵省、林野庁ビルを転々としたジョージ・ガーゲットのグループ、③市ヶ谷の旧陸軍士官学校跡の基地パーシング・ハイツ、④横須賀米軍基地内などの4箇所のグループに分かれて、約100人から200人が活動していたそうです。朝鮮で戦争が行われていた1951年頃の話です。
by replica watches (2011-08-29 22:15) 

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