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5月12日(木) 被災者の労働問題に抜本的対策を [論攷]

〔下記の論攷は、中小企業組合総合研究所の機関紙『提言』第64号(5月1日付)に掲載されたものです。〕

 東日本大震災と福島第1原発の放射能漏れ事故が日本を襲った。これまでに経験したことのない未曾有の天災と人災である。早急な復興のためには、大震災と放射能漏れ事故のそれぞれに対応し、短期と中・長期にわたる複合的な対策に取り組まなければならない。
なかでも重要なのは、被災者の住と職、雇用と収入の確保である。全ての生活基盤が押し流されてしまった津波の被災地や放射能汚染から逃れて故郷を離れた人々にとって、住む場所と仕事を確保して収入を得ることは、これからの最重要課題になってくる。
 これは個人的な努力や「自己責任」だけではどうにもならない。公共の力が最大限に発揮される必要があろう。災害からの復興にはボランティアの力も借りなければならないが、仕事の創出と雇用の確保に向けては、政府や自治体、企業の力が大きい。とりわけ、政府の労働対策が重要であり、そのリーダーシップが欠かせない。
 瓦礫の撤去や都市の再建、防災工事など、政府のイニシアチブによる災害復興と失業対策を結びつけた仕事の創出が必要である。すでに政府は、第1段階の雇用対策として「『日本はひとつ』しごとプロジェクト」を打ち出し、厚労相は人材ビジネスの事業者団体に被災者への迅速な就職支援を要請した。
 官民の力を総結集して就業支援に取り組むことは重要だが、窮状に陥っている被災者を人材ビジネスの食い物にするようなことがあってはならない。仕事の量だけではなく、その質についても、きちんとした監視と指導が必要だろう。「非常時」だからといって、劣悪な労働条件や低賃金を押し付けたり、安全衛生を軽視したりすることは許されない。
 また、被災者の意思を尊重すること、ニーズに見合ったマッチングに努めること、幅広く広報して情報を周知徹底することなどにも意を用いてもらいたい。大震災からの復興は単なる復旧であってはならず、労働問題の解決においても、新しい公共と官民共同の新たなモデルを生み出す機会となって欲しいものである。





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