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10月31日(月) TPPへの参加は日本を破滅へと導くことになる [TPP]

 米軍普天間基地の移設問題と並んで、アメリカのオバマ政権に対する野田政権の迎合ぶりを示すもう一つの典型的な例は、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題です。この問題は野田さんの「ポチ」ぶりを示すにとどまらず、日本をアメリカに売り渡し、破滅へと導くことになるでしょう。

 野田さんはこの問題について11月のAPECホノルル会議を前に結論を出すことを急いでいます。どうしてそんなに急ぐのかと思っていましたら、その答えが27日に判明しました。
 交渉に参加した場合のメリットなどを分析した政府作成の内部文書があり、それは「APECで交渉参加を表明すべき理由」として12年の米大統領選をあげ、「米国はAPECで相当の成果を演出したいと考えている」から、日本が交渉参加を表明すれば「米国は『日本の参加でTPPが本格的なFTA(自由貿易協定)となる』と表明可能」になって大統領の成果になると分析しているそうです。
 何ということでしょうか。急いでいるのは日本の利益になるからではなく、オバマさんを大統領選で有利にさせるためだというのです。オバマ大統領に気に入られたい一心でのTPP参加促進というのですから、呆れかえってしまいます。

 さて、TPPについては、農業分野への影響が甚大であるとされています。政府が10月17日に民主党プロジェクトチームに提出した資料では、「農林水産品(コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等)を含む940品目について、関税撤廃を求められる」と明記されています。
 これが実施されれば、日本の農業は壊滅するでしょう。すでに39%にまで低下している食糧自給率はさらに下がり、農村は荒廃し、地方はとめどなく衰退していくことになります。
 もちろん、規模の拡大によるコスト・ダウンや品質の改善による競争力ある農産物の生産などで、一部には生き残る「勝ち組」の農家もあるでしょう。しかし、それは例外に過ぎず、農業全体がそのような形で再生し、全ての農家が生き残る可能性は皆無です。

 日本の国土は狭隘で山地が多く、農地の拡大といっても絶対的な限界があります。広域化によって農業の生き残りを図るなどという夢物語は、山や丘を崩してから言ってもらいたいものです。
 農産物の自由化とそれに対する農業対策の効果にしても、これまでの失敗の歴史をきちんと総括してから主張するべきでしょう。TPPがどれ程の悪影響を及ぼすか、将来のことだから分からないという人は、人間が過去の歴史や経験から学ぶことができるということを忘れています。
 これまで繰り返されてきた農産物の市場開放、たとえば牛肉やオレンジの自由化がどのような結果をもたらしたのか、コメの部分自由化を決めたウルグアイ・ラウンド対策として計上された6兆円もの巨額の対策費が農業を守ることになったのか、過去の経験をしっかりと検証してもらいたいものです。

 ウルグアイ・ラウンド対策費の6兆円は、農道空港や温泉保養施設などに姿を変えてしまいました。これらの対策が効果をあげていれば、今日のような農業の衰退も、農村の荒廃もなかったでしょうに……。
 これから問題にされるのは、コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等を含む940品目もの多数に上ります。特定の品目についての部分的な関税撤廃とはわけが違います。
 すでに、日本の農産物の平均関税率は11.7%まで低下しています。それが完全に撤廃されるとなれば、オーストラリアやアメリカ産の安いけれど必ずしも安全ではない農産物によって国内市場は席巻されるにちがいありません。

 しかも、TPPは単に農業の問題にとどまらないという点が重要です。このことは、ようやく最近になって広く理解されるようになってきました。
 サービス業の規制緩和、投資の自由化、労働法制や雇用の問題、公的医療保険制度の解体や医療の営利化、金融など、その対象はきわめて広い分野に及んでいます。それは21分野(24の作業グループを設定)に及び、国境の垣根が低くなってモノやサービス、人の移動が拡大することになるでしょう。
 端的に言って、日本の市場がアメリカによってこじ開けられてしまうというわけです。これまでもアメリカは、日米構造協議や年次改革要望書によって市場開放の圧力をかけ続けてきましたが、TPPという形を借りて、ついに積年の野望を実現しようとしているわけです。

 さて、ここで特に注意しなければならない事柄をいくつか指摘しておきましょう。これらについては、多くの誤解があるからです。
 一つは、今回のTPPには中国や韓国が加わっていないということです。
 二つ目は、多国間交渉のTPPは二国間交渉のFTAやEPAとは基本的な枠組みが異なっているということです。
 三つ目は、いったん交渉に参加すればそこからの離脱は実際には不可能だろうということです。

 第1の中国や韓国の不参加については、ほとんど知られていないというより、なるべくその事実を隠そうとしているかのようです。というのは、TPPに参加しなければ「アジアの成長の波」から取り残されてしまうかのように脅す言説さえあるからです。
 「アジアの成長の波」というのに、その中心である中国はもとより、韓国、台湾、フィリピンなど東アジア諸国も、ASEAN最大のGDPを持つインドネシア、タイやインドも、このTPPには参加していません。逆に、中国に対する経済的な包囲網としての意味合いまで持たせられています。
 つまり、中国を牽制するために日本などを囲い込もうというのが、今回のTPPの狙いの一つなのです。中国を主導力とする「アジアの成長の波」に乗ろうというのであれば、TPPに参加してはならず、それとは違った形で中国や韓国との経済・貿易面での連携を強化するべきなのです。

 第2の経済的連携における多国間交渉と二国間交渉との違いの重要性です。これについても、マスコミはほとんどまともな解説をせず、国民もきちんと理解していません。
 今回のTPPは06年に発効したシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ4ヵ国の経済連携協定(EPA)「P4」が母体で、これに、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わろうということで交渉を進めているものです。11月12~13日のAPEC首脳会議で大筋の合意を図り、来年6月に正規の合意にこぎつけようというわけで、野田首相が参加を決めたいと焦っているのはそのためです。
 多国間の交渉ですから、日本だけの都合でものごとを決めることはできず、たとえ日本には不利であっても多数が合意した共通ルールであれば、それに従わなければなりません。これとは違って、二国間の交渉であればどちらか一方にとって不利になる取り決めには合意できませんから、一方的にルールを押し付けられるということはありません。

 第3の交渉からの離脱については、最近、大きな注目を集めることになりました。不利なルールが決められそうになったら抜ければいいんだというわけです。
 それは理論的には可能ですが、実際にそのようなことをすれば日本に対する国際的な信用はどうなるでしょうか。国際的な信頼低下というリスクを冒してまで、交渉に参加するメリットがあるのか、また、アメリカの意向に逆らって日本政府だけが交渉からの途中離脱を決断できるのか、という問題があります。
 これについて、米国のワイゼル首席交渉官は「真剣に妥結に向かう意志がない国の参加は望んでいない」と指摘して途中離脱をけん制しています。つまり、「入るなら出るな、出るなら入るな」と言っているわけです。

 そもそも、TPPの拡大交渉が政治課題として浮上するようになったのは、これにアメリカが加わる意向を示してからのことです。08年のリーマンショックで経済不況に陥ったアメリカのオバマ大統領が成長著しいアジアに目をつけたからです。
 不況から抜け出すために、工業製品や農産物の輸出を増やして雇用増を図り、得意な金融分野でも海外展開を強化したいというわけです。そのために日本も参加させ、あわよくば積年の市場開放要求を実現しようと狙っているわけです。
 こうして、80年代初頭から始まったアメリカによる対日経済攻勢の最終段階が訪れようとしています。これを阻止できるかどうかが、日本の将来を決することになるでしょう。

 かつて、日米構造協議、市場開放、新自由主義と規制緩和、構造改革こそが日本を救うとして、これらの旗を振った人々がいました。今また、TPPへの参加こそが日本を救うとして、その旗を振っている人々がいます。
 しかし、これらの施策はいずれも貧困を増大させ、格差を拡大して、日本社会をぶっ壊してしまいました。TPPへの参加もまた、そうならないという保証があるのでしょうか。
 少なくとも、新自由主義と規制緩和、構造改革によって大きな失敗を犯した政治家、企業経営者、マスコミ人は、これまでの失敗を真摯に反省するべきでしょう。本来、責任を取って蟄居・謹慎すべきこれらの人々が、再び無責任な言説を振りまくことによって日本を破滅に導くことだけは厳に慎んでもらいたいものです。

 私は以前、野田首相について何をやりたいのか分からず、国家ビジョンも持っていないと批判したことがあります。これは間違いだったのかもしれません。
 野田さんは、ひたすらアメリカに気に入られたいと願い、日本をアメリカの属国にする国家ビジョンを抱いているようです。このような人物に日本の行く末と子ども達の未来をゆだねてしまったのは大きな誤りであり、やがて自民党に次いで民主党に対しても、歴史の審判が下るにちがいありません。

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