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5月3日(木) 小沢無罪判決によって幕を開けるかもしれない「政界三国志」 [政局]

 「陸山会事件」によって強制起訴された小沢一郎民主党元代表は、東京地裁の一審判決で「無罪」とされました。判決内容は「白」というよりも「黒」に近い灰色であり、小沢金脈に対する疑惑も解明されず、説明責任も果たされず、小沢さん自身の政治的道義的責任は残ります。
 とはいえ、この判決によって小沢グループは息を吹き返し、小沢さんの復権に向けての動きも始まりました。民主党の野田執行部と小沢グループとの亀裂と対立は深まる様相を見せており、これに自民党を加えた三つの勢力の争いは「政界三国志」の幕を開くかもしれません。

 今回の判決によって、野田執行部は窮地に立たされることになりました。政治生命をかけるとしている消費増税法案を通常の国会運営によって会期内に成立させることはほとんど絶望的です。
 ここで「援軍」としてあてにされているのが自民党ということになります。こうして、野田さんは自民党との連携に「政治生命」をかけるかもしれません。
 そのための秘策は、「丸呑み」路線です。消費増税法案成立の一点を最優先し、その他の問題では自民党の言うことを全て聞いてしまおうというわけです。

 もちろん、この「丸呑み」の最たるものは、消費増税法案そのものということになるでしょう。もともと消費税を10%引き上げるとの方針を掲げていた自民党に独自の対案を出させ、それをそのまま「丸呑み」してしまうかもしれません。
 もし、自民党が対案を出し、野田さんがそれを評価する動きを示せば、このような事実上の連携路線が動き出したと見て良いでしょう。その背後には、解散・総選挙の実施と消費増税法案の成立というバーター取引についての密約があるはずです。
 そうなれば、自民党は内閣不信任案を提出せず、通常国会の延長にも同意するでしょう。延長国会で消費増税法が成立し、密約に基づいて野田首相が解散・総選挙の動きを示せば、谷垣さんは秋の自民党総裁選で再選される可能性が出てきます。

 しかし、そう簡単にはいかないかもしれません。一つには、問責決議された2閣僚の扱いがあります。
 自民党は、これらの閣僚の交代を求めており、いまのところ、野田さんはそれを拒んでいます。自民党との間の「棘」となっているのが、この問題です。
 この「棘」が、いつ、どのような形で抜かれるのか、それとも曖昧にされるのか。この問題がどのように処理されるかが、一つの注目点でしょう。

 もう一つの問題は、小沢さんの証人喚問です。今回の判決では、疑惑とされた問題のほとんどが認定され、最後の「共謀」についてだけ、証拠が不十分だとして有罪とされませんでした。
 しかも、本人は無罪でも、秘書は有罪とされています。小沢金脈についての解明も弁明もほとんどなされていません。
 政治的道義的責任は免れず、野党は一致して国会で説明せよと要求しています。この問題がどう処理されるのか、自民党はどうするのかが、もう一つの注目点でしょう。

 しかも、野田執行部の中心にいて野党との折衝などを担当するのは、小沢さんに近い輿石幹事長です。この人が、野田さんの思い通りに動くでしょうか。
 輿石さんは、小沢さんの証人喚問を拒み続けるでしょう。消費増税法案の扱いについても、審議や採決を急がず、通常国会が延長されても継続審議に持ち込もうとするでしょう。
 小沢さんの復権を密かに後押しし、野田さんを牽制して自民党との連携にくさびを打ち込もうとするかもしれません。野田さんは、輿石さんを御しつつ、自民党との密かな連携を模索するという難しい政局運営を強いられることになります。

 他方、小沢グループの目標は、小沢さんの党員資格停止を解除し、何らかの役職を求め、党内での復権を果たすことです。そのために、鳩山グループなど反・非野田勢力の糾合に努めることでしょう。
 「小沢・鳩山連合軍」が形成されれば、小沢さんを処分した岡田副総理に対する責任追及など野田執行部への揺さぶりを強めるにちがいありません。消費増税法案やTPP参加方針などへの批判を強め、反対運動を高めようとするでしょう。
 今国会中の消費増税法案の採決を阻止し、9月の民主党代表選での野田追い落としを図ることになります。代表選で小沢さんか代わりの人が当選すれば、秋の臨時国会で消費増税法案を廃案とし、民主党をマニフェスト路線に復帰させるような政策転換を試みるかもしれません。

 小沢さんの狙いは、政権交代を実現した当時の路線に民主党を復帰させることであるように見えます。こうして、来年の任期満了まで選挙を先延ばしして民主党を立て直し、反消費税、反TPP、脱原発の政策で総選挙を戦おうとするでしょう。
 こうすることでしか、民主党の支持率を回復して「小沢チルドレン」を救うことができません。もし、そうしなかったなら、小沢という政治家もその程度の人物だったということになります。
 代表選で勝利し、民主党を「国民の生活が第一」路線に復帰させ、総選挙で自民党を叩きのめすことでしか、小沢さんは生き残ることができません。これこそが、小沢さんの言う「最後のご奉公」なのではないでしょうか。

 という見方は、あまりにも小沢寄りだという気が、私自身にもします。でも、野田執行部と自民党の連携という事実上の「大連立」による消費増税とTPP参加という最悪のシナリオを避けるためには、「小沢・鳩山連合軍」に望みを託すしかないのが、日本政治の悲しい現実なのです。
 もし、野田・自民「大連立」が成れば、小沢グループは民主党を飛び出して新党を結成せざるを得なくなり、他党や橋下大阪市長などを巻き込んだ政界再編が生じるでしょう。その場合には、今年の夏から秋にかけて総選挙ということになります。
 そのような選挙になっても、小沢新党は反消費税、反TPP、脱原発の政策を掲げる可能性が高いのではないでしょうか。小沢新党が生き残りを図ろうとすれば、そうする以外に道はないからです。

 かくして、日本の政治は「政界三国志」から天下大乱の「戦国時代」を迎えることになりそうです。いずれにしても、それが必ずしも明るい展望に結びつかないところに、小選挙区制によってタガをはめられた日本政治の閉塞状況が端的に示されていると言わざるを得ません。

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