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6月19日(火) 民主党が提出した衆院選挙制度改革法案をどう考えるか [選挙制度]

 今日の『朝日新聞』を読んでいて、オヤオヤと思いました。「小党に有利 連用制導入」という3面の記事で、私の発言が引用されていたからです。
 記事には、次のように書かれていました。

 (連用制については)民主党内にも「わかりにくい」との指摘がある。5月の衆院政治倫理確立・公選法改正特別委員会では、参考人の五十嵐仁・法政大教授(政治学)が「有権者が票を投じれば投じるほど、比例区の議席が減ってしまうという形でゆがめられる」と述べた。

 昨日、民主党が国会に提出した衆院選挙制度改革法案には、公明党が主張していた比例代表の連用制が盛り込まれたからです。この連用制は、1993年の政治改革でも民間政治臨調が提案したことがあり、決して新しいアイデアではありません。
 今回民主党が単独で提出した法案は、衆院小選挙区で5、比例区で40の計45議席を削減するというものです。比例区については定数140のうち35議席分について「連用制」を採用し、現行の11ブロックは全国比例に改めるとしています。
 この選挙制度に基づいて、2009年衆院選の結果から試算すると、民主党は87から47へ、自民党は55から30へと激減し、逆に、公明党は21から29へ、共産党は9から17へ、社民党は4から7へ、みんなの党は3から8へと大幅に増え、幸福実現党も1議席を獲得する計算だといいます。

 私の選挙制度についての基本的立場は、最悪である小選挙区制以外、どのような制度も検討の対象になるというものです。連用制も、小政党が有利になるという点で、小選挙区制に比べればましな制度だといって良いでしょう。
 ただし、この制度には、次のような問題点があります。第1に、『朝日新聞』の記事で引用されているように、有権者が小選挙区で票を投じれば投じるほど、比例区での議席が減ってしまうという形で、やはり民意が大きく歪められるという点です。
 第2に、これも民主党内の声として『朝日新聞』が紹介しているように、制度が複雑で分かりにくいという点です。とりわけ、今回の案では比例区全体が「連用制」になるのではなく、その一部である35議席だけに導入されるという形で、さらに複雑になっています。
 第3に、法律論としては、このような小選挙区「反比例代表」並立制によって選出された議員が、憲法前文にある「正当に選挙された国会における代表者」と言えるのかという問題があります。選挙後に提訴されれば、このような問題が争点となり、憲法違反とされるかもしれません。

 さらに、この問題を考えるうえで重要なことは、そもそも、何故、小政党への配慮が必要とされるのかという点です。それは、小選挙区制が大政党に有利な制度だからです。
 この制度的欠陥を是正するために、比例区で小政党に有利になる「連用制」を導入しようというわけです。つまり、小選挙区での歪みを、比例区での逆の歪みによって是正するということです。
 それなら、もともと歪みを生むような小選挙区制をなくせばいいじゃありませんか。そうすれば、比例区で是正する必要はなくなります。

 今回の連用制の採用には、小手先の是正策によって小選挙区制を維持しようとする姑息な意図が隠されているのかもしれません。消費増税法案に賛成してもらうために、公明党に秋波を送ったという政治的な意味合いもあるでしょう。
 さらに、今回の法案には、次々回の選挙での比例区40削減が前提されているという含みもあります。もし、このような形で比例区の定数が削減されれば、ますます小選挙区の比重が高まり、その害悪も大きくなるでしょう。
 「連用制」になれば議席が増えるという目先の利益に釣られて賛成すれば、将来、痛い目にあう可能性があります。公明党が賛成に回れば成立するかもしれず、また、そうなる可能性もありますが、公明党にはこれらの点を熟考してもらいたいと思います。

 選挙制度は、国民主権を実体化し、議会制民主主義を支えるための、極めて重要な仕組みです。自分の党の有利・不利や当面の利益に引きずられて軽々に判断しないよう、各党には慎重な対応を求めたいものです。

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