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5月8日(水) 緊急発言:小選挙区制に根本的欠陥 多様な民意の排除=社会の統合機能低下 「身を切る」なら政党助成金こそ(その1) [論攷]

 〔以下の論攷は、日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙『ジャーナリスト』第661号、2013年4月25日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 前回の選挙から得票数を減らしたにもかかわらず、自民党が過半数の議席を獲得した昨年の総選挙結果は、あらためて小選挙区制の欠陥を浮き彫りにした。
 現在の小選挙区比例代表並立制は、1993年の「政治改革」の時に導入が図られ、94年に区割り法案が成立。マスメディアもこの制度を強力に支持し世論に影響を与えた。
 当時から小選挙区制の矛盾を指摘してきた五十嵐仁氏は、マスメディアは当事者意識を持って小選挙区制について検証すべきだという。

――小選挙区制度の矛盾を示した総選挙結果でした。

 小選挙区制は、本来、選挙に求められている機能を果たせません。選挙は選出母体が代表を選ぶ仕組みですから、選出母体と代表の関係が歪むことがあってはならないからです。しかし、この点で小選挙区制には根本的な欠陥があります。
 第一に、票の分布によっては、総得票数の多い政党より少ない政党が多数の議席を占めることがあります。実際にイギリスでは2回ありました。
 第二に、少数の得票で多数の議席をとることができる。5人が立候補し、うち一人が21%の得票、一人が19%で残りの候補が20%だったら、21%で当選できる。全選挙区でそうなれば、議席を独占することも可能で、あとの89%は議席に反映されない「死票」になります。
 今回の選挙では「死票」が56%と半数を超え、約3730万票の票が「殺され」ました。その結果、自民党は小選挙区でも比例区でも得票数を減らしたにもかかわらず、議席を増やして勝利したわけです。
 第三に、僅差によって、簡単に政権交代が起きます。直近でみても、小泉郵政選挙では自民党が大勝し、09年の選挙では民主党が大勝して政権交代、今回の選挙ではまた自民党が勝って政権が交代しました。
 こうして政治が不安定になります。今回のように、有権者の4分の1(小選挙区)、6分の1(比例区)しか支持していないのに、望まれざる政権交代も起きる。
 第4に、「選挙互助会」のような政党ができることです。その典型は民主党でしょう。考え方がバラバラなのに、当選のために一緒になり、当選できないとなると飛び出す。
 今回は当選目的の政党間の野合も目立ちました。政党の形もゆがめられたのです。
 さらにもう一つ、「一票の格差」の問題があります。小選挙区では、どうしても区割りをいじらなければなりません。中選挙区制でも一票の不平等がありましたが、小選挙区では定数を変えることができず、格差の是正はより難しくなります。

――小選挙区制につながった「政治改革」が問題だと思いますが。

 リクルート事件や金丸金脈問題などを契機に金権・腐敗政治批判が高まり、小選挙区比例代表並立制が出てきたのは海部内閣の時でした。第8次選挙制度審議会が提案したのが最初です。
 審議会の構成は27人で、うち11人がマスコミ関係者でした。会長が小林与三次読売新聞社長で、大手メディアの論説委員クラスが並んだ。
 その結果、新聞各紙は社説などで並立制導入の大キャンペーンを張りました。その後につくられた民間政治臨調にもマスコミ関係者が名前を連ねました。
 政治改革の時に自分たちがどういう議論をしたのか。その結果はどうだったのか。マスメディアには当事者意識を持って検証してもらいたいものです。
 小選挙区制にすることでサービス合戦がなくなり政治に金がかからなくなる、二大政党になって政権交代が起きる、政策本位の政治になるなどと言われた。実際には、金がかからなくなったわけでも、政策本位になったわけでもない。今回の選挙で二大政党制は崩れ、政策本位ならマニフェスト違反などは起こらなかったはずです。
 確かに、政権交代は起こりましたが、有権者の望まない政権交代まで起きてしまった。
 そもそも制度によって選挙結果や政党を誘導しようというのが間違いです。政権交代をできやすくするという発想も間違っています。政権交代は、有権者が望んでいるかどうかが基本でしょう。
(続く)

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