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6月11日(火) 国内外から孤立する安倍政権 TPP・原発・改憲・安保ノー、くらし守る政治の実現を(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊 女性&運動』2013年6月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップします。〕

 7月に参議院選挙がおこなわれます。安倍内閣の政策がめざす根本は何か、女性の切実な願いを実現させるために政党をどう見極めたらよいのか、五十嵐仁さんにお話をお聞きしました。(4月26日)

 アメリカにも反発される極右政権

 安倍内閣は自民党の悪いところが全部出た、断末魔の最悪・最低の内閣と言っていいでしょう。いままで国民がこれでは困ると引導を渡した政策を次つぎに復活させ、中心メンバーは自民党内の良識派を排除した極右のオールスター・キャストです。
 今まで、自民党とはいってもそれなりのバランス感覚を持っていましたし、ある程度国民の批判を恐れ、世論の対応を気にする面がありました。しかし、今回はそういうものは全くなし。剥き出しの財界本位政権です。
 アメリカの中でも、この内閣に対しては懸念を持つ勢力があります。オバマ大統領はどちらかと言えばリベラルで、政府の主流は安倍首相と話が合いません。
 安倍首相は「先の戦争は悪くなかった」という考え方で、中国や韓国から警戒・批判されるだけでなく、アメリカにも反発されるような特異な歴史観を持っています。従軍「慰安婦」や歴史認識の問題、靖国神社参拝や首相談話の見直し、あるいは中国・韓国との領土問題でもそうです。
 第一次安倍内閣の時は「戦後レジュームからの脱却」と言っていましたが、「戦後レジューム」は基本的にアメリカが作った枠組みです。その点で、安倍首相はアメリカ的リベラル・デモクラシーに強い反感を持っている。そのことをオバマ大統領は分かっていますから、安倍首相の言動を歓迎していません。
 内閣が発足してすぐに安倍首相はアメリカに行きたかったのですが、1月には行けませんでした。大統領就任式典にも出られず、ようやく2月21日になってから訪米します。
 しかしこれは、大統領による空港への出迎えがない、大統領主催の晩餐会がない、共同記者会見もないという、異例の「3ない訪米」になりました。これだけ先延ばしにされ、冷遇された。共同声明は出ましたが、会談の中では尖閣問題などで中国を刺激するなと釘を刺されています。
 そうなると、安倍首相はますますアメリカにおもねてご機嫌を取ろうとする。TPPへの参加表明、普天間基地の辺野古移設の推進などの手土産はそのためです。

 特異な歴史観は外交の弱点

 しかし、その後の靖国参拝と居直りが、またもやメリカを刺激しました。再三にわたって懸念が表明されています。
 戦争を肯定し美化している靖国神社に、A級戦犯が合祀されていることを知りながら、また、これまでも参拝に対して中国や韓国が批判していることを十分に理解していながら、主要閣僚が参拝し、首相も「内閣総理大臣」名で真榊を奉納する。これは完全に確信犯です。これに対してアメリカ政府関係者は懸念を表明し、『ニューヨークタイムズ』も批判記事を掲載しました。
 北朝鮮のミサイル危機によって極東の緊張が激化し、日本、韓国、中国、アメリカなどの周辺諸国が結束して対応しなければならないときに、この極右政権は完全に孤立してしまいました。
 韓国の外務大臣は日本訪問を中止して中国へ行きました。アメリカのケリー国務長官も、韓国、中国、日本を廻って対応を協議したのに、日本の閣僚は韓国にも中国にも行くことができません。
 安倍内閣は最も緊急にやらなければならない国際的危機への対応能力を完全に喪失してしまいました。外交上の大失態だったと言うべきでしょう。

 時代錯誤な軍事大国化

 内閣発足時から、安倍首相の歴史認識で軍事大国化を目指すタカ派路線を取れば、国際的に孤立せざるを得なくなるだろうとの懸念がありました。予想通り、その弱点が非常に緊迫した場面で表面化してしまったと思います。
 集団的自衛権行使や軍事費増大は、今の国際情勢に全く適合していません。例えば、北朝鮮危機に対して、アメリカでさえ軍事ではなく交渉で解決しようとしたのですから。
 イラク戦争の時、小泉政権はアメリカの要求でサマーワに自衛隊を送りました。その時官房長官だった安倍首相には、憲法の制約なしに何でもできるようにしたいという思いがこびりついてしまったのです。
 しかし、イギリスだってあのときの参戦が問題になり、ブレア政権の対応への検証がなされています。確たる根拠も国連決議もなしに、多国籍軍という形で勝手に「対テロ戦争」を始めたことが今は批判されているのです。
 国際紛争は軍事的には解決できず、また解決してはならないという憲法の理念のとおりではありませんか。それなのに、安倍首相は昔通りの軍拡の旗をふっている。アナクロニズム(時代錯誤)もいいところです。
(続く)

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