SSブログ

6月12日(水) 国内外から孤立する安倍政権 TPP・原発・改憲・安保ノー、くらし守る政治の実現を(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『月刊 女性&運動』2013年6月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップします。〕

 繰り返される破綻した政策

 今の内政を一言でいえば、失敗したリーダーによる破綻した政策のオンパレードです。まず、自民党が失敗した旧来型の官僚指導型利益ばら撒き政治です。「国土強靭化」をかかげ、200兆円とも言われる公共事業を主体とした財政出動。次に、小泉「構造改革」亜流の規制緩和で、その中心は貧困と格差を拡大した「労働ビックバン」の再来です。
 そして、異次元の量的・質的金融緩和をおこなってジャンジャンお札を刷り、国債を発行して日銀に買い取らせる。これも、2006年まで小泉「構造改革」の下でやられた金融緩和とよく似ています。その結果も、同じようなものになるだろうと思われます。
 この時、大企業は5年連続で最高益を更新し続け、大儲けしました。ところが、労働者の賃金は下がってしまった。「実感なき景気回復」と言われたものです。個人消費は上向かず、国内市場は狭隘なままで設備投資も増えず、資金が国内でだぶつきました。
 本来は投資に向かうべきだった資金は、景気が上向いていて住宅投資を中心にミニバブル状態だったアメリカへの投機にまわってしまった。それがリーマンショックを引き起こす原因の一つになりました。金融危機の遠因を作ったのは日本だったのです。
 いま、アメリカの景気が上向いていますから、また同じように日本の余剰資金が来るのではないかと心配しています。アメリカは「アベノミクス」による金融緩和についても警戒しつつ注視しているのではないでしょうか。

 アベノミクスで景気は回復しない

 景気回復のカギは、可処分所得が増大するか、購買力が高まるかということにあります。収入を増やす、税金などの義務的支出を減らす、安心してお金を使えるようにセーフティ・ネットを充実させる、買いたいと思わせる商品やサービスを提供するという4つの条件が整えば、景気は回復します。こんな簡単なことがなぜできないのでしょうか。
 インフレになれば物価は上がりますから、個人消費という面では購買力は低下します。だから、物価が上がる以上に収入が増えなければなりません。
 春闘での賃上げがひとつの目安でしたが、定期昇給をベース・アップする企業はほとんどありませんでした。また、この4月の新入社員採用を増やした企業もほとんどなかった。給料が増えない、雇用も拡大しないというのでは、安心してお金を使えません。
 消費税が増税され、社会保険料が上がり、震災増税もある。義務的支出は増大する一方です。セーフティ・ネットは「社会保障と税の一体改革」で切り下げられる。年金は10月から引き下げられ、年金支給年齢も先延ばしですから、将来のために貯金しておこうという話になります。 新しいサービスやヒット商品も少ない。電機業界不況は深刻です。
 国民にとっては、厳しい状況がこれから来るでしょう。4月の共同通信の調査で安倍内閣支持率は72%と高いものの、具体的な質問では、「アベノミクス」で所得が増えないと思うという回答は69%で、景気好転を「実感できない」という声は82%にも達していました。国民生活も実体経済も改善されていないのです。

 日本社会のブラック化

 小泉「構造改革」の規制緩和で派遣労働者は増大し、労働時間の規制や裁量労働制も緩和されました。その結果、非正規労働者が増え、貧困は増大し格差も拡大しました。長時間・過密労働は過労死・過労自殺やメンタルヘルス問題を深刻化させ、働く人たちの健康が損なわれました。
 こういう問題をなんとかしなければいけないと、労働者派遣法や労働契約法の改正によって派遣労働や有期雇用に対する規制強化という動きが出てきました。ようやく去年、極めて不十分な形ではあるけれど、改正労働者派遣法と改正労働契約法が成立しています。
 このように少しずつ改善の方向に歩み始めたとき、またもや解雇の金銭解決や地域・職種などを限定した「限定正社員」などの逆行する政策を打ち出そうというのです。このような政策が実行されれば、いまでさえ違法状態にある「ブラック企業」が合法化され、日本社会全体がブラック化してしまいます。
 同時に、安倍首相は国民からの反発も恐れています。職員などを労働時間管理から外そうというホワイトカラー・エグゼンプションが問題になった2007年1月、安倍首相は法案の提出を断念しました。その年の7月に参院選があったからです。それにもかかわらず選挙で大敗しました。
 今回も参院選前ということで、6月の「骨太の方針」に解雇の金銭解決やホワイトカラー・エグゼンプションなどを出さないとして軌道修正しました。しかし、参院選が終われば、これらの問題が出てくる可能性は高いと思います。
(続く)

nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

トラックバック 0