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1月12日(日) 今日において必要なのは「遠交近攻」ではなく「遠交近交」という外交政策だ [国際]

 この間、ブログの更新が滞ってしまいました。正月休みが明けて仕事に追われたということもありますが、年末・年始の休み期間中に読み始めた本に熱中してしまったためです。
 このようなことが起きるから長編を読むのを自制していたのですが、「退職真間近なのでそろそろ良かろう」と思って読み始めたのが、「間違い」のもとです。途中でやめられなくなってしまいました。

 私が夢中になって読んだ本は、いずれも宮城谷昌光さんの著作です。実は、私は宮城谷さんのファンでして、これまでも時間を見つけては彼の長編を図書館から借りだして読んできました。
 今回は、年末と年始の休みが長かったので、宮城谷さんの『風は山河より』(全6巻)、『新三河物語』(全3巻)、『青雲はるかに』(全2巻、いずれも新潮文庫)を借り出しました。昨日、最後の『青雲はるかに』を読み終えたというわけです。
 昨年末から延々と11冊を読み続け、すっかり宮城谷ワールドにはまってしまいました。これで、文庫で出されている宮城谷さんの長編はほとんど読み終え、残るのは昨年完結した『三国志』(全12巻)ということになります。すでに吉川英治の『三国志』もかなり前に読んでいますので、これは退職後の楽しみに取っておこうと思っています。

 さて、昨日読み終えた『青雲はるかに』という本の中に、「遠交近攻」という言葉が出てきます。文字通り、遠くの国と交わり、近くの国を攻めるという方策です。
 中国の戦国時代にこの秘策を秦の昭襄王に説いて宰相となったのが、この本の主人公である范雎という人物でした。当時、諸国は絶えず戦争を続け、1国を攻める場合には複数の国々が同盟を組みましたが、同盟相手として選ばれるのは自国と隣接した国でした。ですから、他国に攻め込んで領地を得ても、同盟国を挟んだ飛び地となるために領土の維持が難しく、すぐに取り返される場合が多かったのです。
 このようなとき、范雎は遠い国と同盟を組んで隣接した国を攻めれば挟み撃ちにすることができ、領地を得ても維持が容易であるという「遠交近攻」策を唱えました。これに感銘を受けた秦の昭襄王は遠い斉や楚と同盟して近い韓、魏、趙を攻め、やがて6つの国を平定して中国統一への道を拓くことになります。

 この物語を読んで、安倍首相の活発な首脳外交を思い出しました。安倍首相は第2次政権発足以降、積極的な首脳外交を繰り広げ、昨年1年間で25ヵ国を訪問し、今も遠くアフリカにまで出かけています。
 しかし、隣国である中国や韓国とは、首相就任以来、1回の首脳会談も開かれていません。昨年末には、両国が反発したり批判したりすることを承知のうえで靖国神社に参拝し、その後も「たとえ批判されることがあったとしても(首相として)当然の役割、責任を果たしていくべきだろう」と居直り、在任中の再参拝に意欲を示しています。
 近くの国とは意識的に対立を激化させようとしているとしか思えません。まさに、「近攻」の現代版だと申せましょう。

 このように、安倍首相はとりわけ中国との対抗と包囲網の形成を意識しつつ、現代の「遠交近攻」策を展開しようとしているように見えます。しかし、「遠交近攻」策はあくまでも戦国時代の外交政策に過ぎず、近くの国を攻め、領土と人を奪うための方策にほかなりません。
 現代において「近攻」はあってはならず、国と国との交わりは遠くの国以上に近くの国との関係において重視されなければならないでしょう。今日において求められている外交政策は「遠交近攻」ではなく、「遠交近交」であるということを忘れないようにしたいものです。
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