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10月12日(日) ストップ! 集団的自衛権行使 たたかいの展望(その5) [論攷]

〔以下の論攷は、『憲法運動』9月号、通巻434号、に掲載されたものです。6回に分けて、アップします。〕

Ⅲ たたかいの現段階と今後の課題

(1)安倍首相の誤算と亀裂の拡大

 このような安倍首相を早期退陣に追いこむことが当面の課題になります。ということで、たたかいの現段階と今後の課題についてお話させていただきます。
 これまで安倍首相は、「戦争する国」づくりということで既成事実化を進めてきましたが、それが順調に進んでいるかというと必ずしもそうではありません。そのことによって様々な矛盾や軋轢、反発が生まれていることも否定できない事実です。
 とくに、アメリカとの関係は大変微妙です。アメリカは集団的自衛権行使容認を歓迎して いますが、一抹の危惧と不安を抱いています。とくに今回の措置や今後の「戦争をする国」に向けた具体的な措置の一つ一つが、中国への挑発にならないかと心配しています。そもそも、安倍さんは「右翼の軍国主義者」であり、この点で民主党のリベラル派であるオバマ大統領とは話が合いません。4月にオバマさんと日米首脳会談をしましたが、話がまとまらず、日本を出発する直前に共同声明がでるという異例のものでした。昨年の2月、最初の安倍さ んの訪米の時も空港には大統領の迎えもなく、晩さん会もないという形で、共同記者会見も行われませんでした。
 オバマさんは安倍首相を警戒している。安倍さんにはそれがわかっている。だから、最初の訪米の時には、右手に米軍普天間基地の辺野古移設、左手にТPP交渉への参加というお土産をもっていった。いまは、集団的自衛権行使容認ということですり寄ろうとしている。相手が嫌えば嫌うほど、気にいられようとしてすり寄るという関係が生まれているのではないでしょうか。オバマさんは、安倍首相が帝国主義的自立を密かに考えているのではないか、戦後の国際秩序をひっくり返そうとしているのではないかと懸念している。勝手に中国との間で緊張を激化させ、ドンパチを始めて、大変だから助けてということでアメリカを戦争に引き込むということになったら困る、というのがオバマ大統領が心配していることではないかと思います。
 先ほどマスコミ工作が大変用意周到になされていると話しましたが、一部のメディアは 安倍首相から離反しています。秘密保護法制定のときの強引さによって見限られました。
 与党・公明党の抵抗もありましたが、創価学会はいまだに釈然としていない面があります。与党の「弱い環」が公明党であり、ここが「ねらい目」ということがいえます。自民党ОBによる批判はみなさんもよくご存知の通りです。古賀誠、加藤紘一、野中広務さんなどが『赤旗日曜版』にまで登場して安倍さんに対して厳しい批判を繰り返しています。自分たちが育ててきた保守政党としての自民党が、極右勢力である「安倍一族」に乗っ取られてしまったということに、ようやく気が付いてきたのではないかと思います。
 元法制局長官など官僚ОBの反感と異論も特徴的です。とくに柳沢協二さんなどは大活躍です。もと防衛官僚であったという過去が信じられないくらいの厳しい批判を次つぎと発言されている。これらの人々は世論を喚起するうえで重要、かつ貴重な役割を果たされていると高く評価していいと思います。

(2)共同の広がりと世論の変化

 このような中、注目すべき共同の広がり、世論の変化が生じています。私は「反響の法則」と言っています。ボールを地面に強く叩きつければ叩きつけるほど高く跳ね上がるということです。いま国民の世論はそういう形で大きく跳ね上がってきていると思います。安倍改憲と戦争への現実性を伴った危機感が幅広く、国民の間に浸透し始めてきています。
 たとえば、デモと集会の復権があります。これは反原発運動や秘密保護法反対運動、反ヘイトデモなどでも顕著です。こうした集会やデモが頻繁になされているということだけでなく、最近ではマスコミなどでも報道されるようになりました。テレビのニュースなどで日比谷公園での集会が大きく報道されるなどということも一度や二度ではありません。
 国会内の多数勢力と世論とのかい離もどんどん拡大しています。自民党を支持したのは 有権者の4~5分の1です。衆議院選挙、参議院選挙の絶対得票率、対有権者比の得票割合をみれば、一番多かったのが衆議院選挙・小選挙区の得票割合で、有権者の25 %にすぎない、参議院選挙の比例代表でも18 %です。有権者の多数が自民党を支持し、自民党の政権復帰を望んでいたわけではないのです。半分は投票に行かない。投票した半分は野党に入れ、残りの半分ほどが自民党に入れたのです。だから 25 %、4分の1ということなのです。
 民意とのかい離はどんどん拡大しています。共同通信の8月世論調査では、集団的自衛権の行使容認反対は 60.2%、毎日新聞の8月調査でも行使容認に反対は 60 %です。5月に 54 %、6月に58 %ですから、4ポイント、2ポイントと反対が増えてきているのです。しかも8月というと、7月1日に閣議決定がされた後ですから、閣議決定によっていよいよ戦争に巻き込まれるのではないか、「戦争する国」になってしまうのではないかという心配が高まった結果だと思います。
 琉球新報社と沖縄テレビが行った合同世論調査では、辺野古の新基地建設のための海底ボーリング調査について、「中止すべきだ」 が 80.2%で8割です。これだけ多くの沖縄県民が反対しているにもかかわらず、集団的自衛権行使容認閣議決定、あるいはボーリングのためのブイ設置ということを行っている。ますます民意とのかい離が拡大してきているのが現状です。

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