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11月30日(日) これが安倍首相の言う「好循環」の本質ではないのか [首相]

 「やっと動き出した景気の好循環を止めるわけにいかない」
 これは安倍首相の口癖です。これまで、この「景気の好循環」とは経済のことだと思っていました。景気が良くなって、経済情勢が好転することなのだと……。

 しかし、昨日の新聞各紙の朝刊一面を見て、安倍首相が目指している「景気の好循環」とは別のことだったのだと思い当たりました。景気が良くなったのは、日本経済ではなく自民党の政治資金収入だったからです。
 28日に公表された政治資金収支報告書によれば、自民党の政治資金団体「国民政治協会」への企業・団体からの献金総額は19億5408万円で、前年比43%増になりました。アベノミクスによる円安・株高などで業績を伸ばした大企業が献金額を軒並み増やしたからです。
 証券大手では前年比で5倍以上増やしたところもあります。重電も2〜3倍増で、自動車メーカー各社も一斉に増やしています。

 企業献金額のトップは前年に続いてトヨタ自動車で、1300万円増の6440万円でした。このほか日産が850万円増の2900万円、ホンダも700万円増の2500万円で、他の5社も増額しています。
 証券会社では、株高で大もうけした野村ホールディングスが5.6倍の2800万円、大和証券グループ本社も3.6倍の2500万円を寄付しています。商社では最高益を記録した伊藤忠商事と丸紅がそれぞれ4.5倍の1800万円、3.7倍の1300万円で、三菱商事、三井物産、住友商事も4倍近い2300万円を献金しています。
 重電の献金額の増え方も大きなものでした。原発関連の東芝と日立製作所はともに前年の約2倍の2850万円、兵器生産で知られる三菱重工業は3倍の3000万円もの額になっています。

 つまり、アベノミクスによる円安・株高で大もうけした大企業、原発推進への転換や武器輸出解禁によって収益増となる関連企業が自民党への企業献金という形で利益を還流させ、自民党財政は約1.5倍も豊かになり、その見返りに「世界で一番企業が活躍できる国」に向けての政策を推進するという構造ができあがったわけです。このアベノミクス→大企業の大もうけ→自民党への献金増→アベノミクスの継続という大企業と自民党にとって好ましい循環が「やっと動き出した」というのが、安倍首相の発言の本当の意味だったのです。
 今回の選挙で、ようやく動き始めた「この好循環を止めてはならない」と、安倍首相は訴えています。アベノミクスで好業績に転じた大企業も同じ気持ちでしょう。
 また、安倍首相は「この道しかない」とも強調しています。大企業も自民党もともに大笑いできるのは、まさに「この道しかない」ということになるからです。

 しかし、それで日本経済全体の好循環を実現できるのでしょうか。日本全体の景気回復は可能なのでしょうか。
 政治資金収支報告書が発表されたと同じ28日、総務省が10月の家計調査を公表しました。それによれば1世帯(2人以上)当たりの消費支出は4月以降7カ月連続で前年同月を下回り、消費増税の影響が長引いていることが浮き彫りになっています。
 大企業の収益が激増している半面、家計の消費支出は消費税増税以降、前年同月を下回り続けているわけです。まさに、「消費税不況」というべきでしょう。

 安倍首相は「賃金は上がった」と叫んでいますが、それならば、なぜ消費が増えないのか、説明できるのでしょうか。賃上げは一部の民間大企業だけで中小企業や非正規労働者に波及せず、上がったところでも物価高のため実質的には減収になっており、年金生活者に至ってはそもそも収入増などないからです。
 アベノミクスで笑っているのは大企業と自民党だけで、多くの庶民は泣いています。国民を食い物にして大企業と自らの利益を図る「好循環」を生み出したのがアベノミクスの本質なのです。
 それはもともと「成功しても成功しない」政策的矛盾を抱えていました。アベノミクスが成功しても格差が拡大するだけで日本経済の再生には成功しない、間違った経済政策だったからです。

 安倍首相が始めたアベノミクスは自民党を支持する大企業と富裕者にとっては天国かもしれませんが、一般の庶民は地獄に引きずり込まれてしまいます。このような道をこれからも進んで行って良いのかが、いま国民に問われているのです。

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