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1月14日(水) フランスでの連続テロ事件を考える際に指摘しておくべきこと [国際]

 フランスでの連続テロ事件に対する国際的な批判が高まり、フランスでは全土で370万人以上が抗議行動に立ち上がりました。デモ行進には約50か国・地域の代表も参加し、対立が続くイスラエルやパレスチナ自治政府の両首脳も参加しました。
 このような行動は言論の自由を守ろうとする強い決意の現れです。私も、そのような行動を断固として支持したいと思います。

 同時に、これら一連の事件を考える際に指摘しておきたいことがいくつかあります。それは、前回のブログで「貧困や憎悪、宗教的な敵対や民族的な差別、不寛容や社会的な排除など、敵意とテロ行為を生み出す政治的社会的土壌を可能な限り縮小する地道な努力を続けていくしか、根本的な解決の道はないように思われます。
 長期的な背景としては、中東地域での敵意と対立を強めてきたイスラエルとそれに対する欧米諸国の甘やかし、イラク戦争でのボタンの掛け違えなどを指摘しなければなりません。とりわけ、ありもしない大量破壊兵器の開発・保有疑惑によって力づくでフセイン政権を倒してしまったイラク戦争の過ちは大きかったと言えるでしょう」と書いたことに関連しています。

 その第1は、いかなる理由でも暴力やテロは許されませんが、それとは別に、風刺週刊紙「シャルリー・エブド」についても問題はなかったのか、自省する必要があるということです。たとえ風刺漫画であっても、異なった人種・民族・宗教について蔑視したり、対立を深めたり、憎悪を煽ったりするようなものであってはならず、一定の節度が求められるからです。
 この後の風刺漫画のあり方としても、そのような自己検証や節度は必要でしょう。また、今後のイスラム社会や移民などへの対応としても、暴力・テロによる応酬や排除に結びつくものであってはなりません。
 今回の事件を機に、欧米批判を強めるイスラム過激派と移民の排除を主張する極右勢力との対立が強まっています。互いの過激な主張や行動を利用しつつ社会の分断と対立を強めたり差別や社会的排除を促進したりすることのないように注意し、移民排除を主張する極右勢力を利するような形にならないようにしなければなりません。

 第2に、このようなテロリズムの拡大において、イスラエルという国の存在と欧米諸国の対応にも大きな責任があるということです。そもそもヨーロッパにアラブからの移民がこれほど多く存在するのには中東問題が深くかかわっており、イスラエルによって迫害された難民の多くがそこに含まれています。
 第2次世界大戦後、中東地域に入り込んでアラブ人を排除し弾圧をくわえ続けてきたイスラエルと、この国を守るために周辺の独裁国家の存在を黙認してきたアメリカの対応こそ、中東での混乱を引き起こしてきた元凶なのです。イスラエルによる占領地を拡大してアラブの人々を追い出してきた結果、行き場を失った人々が欧米に逃れ、移民として定着してきたのです。
 しかし、これらの人々はまともな仕事に就くことができず経済的にも恵まれないために困窮し、差別などの社会的排除もあって欧米社会への憎悪を高めてきました。今回のようなテロ事件やイスラム国への共感・参加の背景には、このような事情が存在していることを直視する必要があります。この問題を解決するためには、イスラエルによるアラブの人々に対する敵視と排除を改め、対話と共存に転換しなければなりません。

 第3に、このような対立や憎悪は戦争や暴力によって解決することはできず、問題を生み出す根本原因の除去に地道に努めるしかないということです。何よりも、貧困や差別、怒りや憎しみ、無学や無知、将来への絶望や自暴自棄などの問題が解決されなければなりません。
 このような戦争や暴力の原因をなくすための積極的な努力こそが、本来の「積極的平和主義」なのです。それを安倍首相は逆転させ、軍事的な手段や力による平和、すなわち「戦争による平和」を「積極的平和主義」だと読み替えてしまいました。
 そのような逆転した「積極的平和主義」では、紛争や戦争の原因を除去できないばかりか、対立や憎悪を強めることでかえって紛争の土壌を拡大してしまいます。まさに今、私たちがイラクで目撃しているのは、このような例だと言うべきでしょう。

 このような逆転した「積極的平和主義」は、日本をどこに導いていくのでしょうか。通常国会では、そのことが本格的に問われることになります。
 集団的自衛権行使容認の閣議決定と法制化がいかなるリスクをもたらすことになるのか。今回のフランスでの連続テロ事件は、そのことを示す警告であったのかもしれません。

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