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7月14日(火)  「安保法案」について安倍首相に聞かなければならないこれだけの疑問 [戦争立法]

 「安保法案」(戦争立法)についての審議が進んでいます。この過程で不思議な現象が起きました。
 審議が進めば進むほど、「反対」意見が増えていることです。説明すればするほど「説明不足だ」という声が強まるという珍現象をどう理解したら良いのでしょうか。

 審議が進んで反対意見が増えるのは、「法案」の内容が知られるようになるにつれて、そのいい加減さや危険性が理解されるようになっているからでしょう。ということは、今後も審議を続ければ、反対が増えることになります。
 また、説明すればするほど「説明不足だ」と言われるのは、もともと説明できない違憲の「トンデモ法案」だからです。説明しても理解できない内容が多く含まれていること、説明の仕方が不十分なこと、そもそも論理的に破たんしているから説明する方もされる方も理解不能なことなどの問題がありますから、いくら説明しても理解が進むはずがありません。
 そこで、法案のデタラメさを明らかにし、その論理的破綻ぶりを示すために、以下、箇条書きで疑問を提起したいと思います。これらについて、国会での質疑などでさらに追及していただければ幸いです。

 ① 「安保法案」が必要なのは日本周辺の安全保障環境が悪化しているからだとされていますが、冷戦時代と比べて悪化していると言えるのでしょうか。ソ連太平洋艦隊が北海道を侵攻するという危機説と、中国が尖閣諸島を占領するという危機説とでは、どちらの方の安全保障環境が悪化しているということになるのでしょうか。

 ② 安全保障環境が悪化している証拠として、安倍首相は自衛隊機による緊急発進(スクランブル)の回数が10年前より7倍になったことを挙げていますが、30年前の1984年の944回より2014年の943回は1回少なくなっています。10年前ではなく30年前と比較すれば、安全保障環境が悪化したとは言えないのではないでしょうか。

 ③ 1990年代以降、スクランブルの回数はほぼ500回を下回っていましたが、2012年567回、13年810回、14年943回と、安倍首相になってから急増しています。これを減らすためには、安倍首相が退陣して中国との関係を改善する方が効果的で手っ取り早いのではありませんか。

 ④ 周辺の安全保障環境が悪化していると言いながら、今回の「安保法案」では「周辺事態法」の「周辺」を削除して「重要影響事態法」に変えようとしています。周辺が大変だと言いながら、法の対象範囲を地球の裏側にまで拡大するのは論理的な整合性が取れないのではないでしょうか。

 ⑤ 日本周辺の安全保障環境の悪化を理由に集団的自衛権の行使容認を正当化しながら、その具体例として出されるのはホルムズ海峡での機雷掃海です。これも論理的な整合性がとれません。ホルムズ海峡の機雷を掃海できるように法整備を行えば、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事費増が抑制されるのでしょうか。

 ⑥ ホルムズ海峡を機雷封鎖する能力を持つのはイランですが、そのような現実的な可能性があるのでしょうか。封鎖はイランにとってもマイナスで、核開発問題での欧米との和解や「イスラム国」(IS)対策での協調という動きもあります。安全保障環境は改善しており、機雷掃海のための法整備など必要なのでしょうか。

 ⑦ もし、ホルムズ海峡が封鎖されても、日本には半年分以上の石油が備蓄されており、パイプラインもできていてオマーン経由での石油輸入も可能です。イラン以外の他の国や地域からの輸入もできます。「他に適当な手段がない」とは言えませんから、「存立危機事態」として認定できないのではないでしょうか。

 ⑧ 機雷掃海は極めて危険な作業であり、朝鮮戦争では掃海作業に当たった船が沈没して戦後唯一の戦死者が出ています。後方支援活動でも自衛隊員のリスクは高まらず、危険性は通常業務と変わらないと説明されていますが、それなら戦死者に対する特別の追悼や取り扱い、処遇などは行わないということなのでしょうか。

 ⑨ 安倍首相は北朝鮮がアメリカに向けて発射した大陸間弾道弾(ICBM)を撃ち落とすために集団的自衛権の行使容認が必要だと説明していますが、北朝鮮からアメリカ本土に向かうミサイルは日本の上空を通らず、カムチャツカ半島方面に向かいます。それをどのようにして撃ち落とすというのでしょうか。領空を通らないミサイルを勝手に撃ち落とすようなことが許されるのでしょうか。

 ⑩ 北朝鮮がハワイやグアム、在日米軍基地などに向けてミサイルを発射する前に攻撃しようという「敵基地攻撃論」があります。しかし、発射されるミサイルが訓練や実験ではなく実戦であること、これらの基地を狙って発射されようとしていることが、どのようにして判断できるのでしょうか。このような攻撃は先制攻撃そのものではありませんか。

 ⑪ 半島有事において避難する母親や子供を載せた米輸送艦を防護するために集団的自衛権の行使が必要だとされています。しかし、軍艦は原則として民間人を載せず、そのようなケースがあったとしても緊急時の例外的な措置としてなされるにすぎません。安倍政権は最優先で避難させられるべき母親や子供が逃げ遅れること、つまり救出の失敗を前提に避難計画を立てているのでしょうか。

 ⑫ この米輸送艦を自衛艦が防護するということは、近くに自衛艦がいるということを意味しています。それなら、米輸送艦ではなく、その近くいる自衛艦で日本人の親子を救出すれば良いではありませんか。自衛艦ではなく米輸送艦によって運ばれなければならない理由でもあるのでしょうか。

 ⑬ 日本人に対する攻撃が予想され、それが日本への攻撃につながる可能性があれば、攻撃への着手を意味することになり、武力攻撃予測事態として反撃することが可能になります。ということは、集団的自衛権の行使は必要なく、個別的自衛権によって対応することが可能なのではないでしょうか。

 ⑭ 中谷防衛相は日本に対する攻撃意図が明確でなくても集団的自衛権の行使が可能であると答弁しています。攻撃意図が明確でなければ、新3要件の「我が国の存立が脅かされる」ような「明白な危険」があるとは言えず、したがって「存立危機事態」と認定することはできないはずです。それを可能だという中谷さんの答弁は、新3要件による「限定」が無意味だということを示しているのではないでしょうか。

 ⑮ 集団的自衛権行使のための「存立危機事態」、重要影響事態法発動のための「重要影響事態」、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態である「武力攻撃予測事態」の違いはどこにあるのでしょうか。いずれも、攻撃はされていないがその危険性があるというのであれば、個別的自衛権による「武力攻撃予測事態」に含まれるのではないでしょうか。

 ⑯ 「後方支援」であっても危険な場所にはいかないというのであれば、今回の法案でわざわざ「非戦闘地域」という限定を外したのは何故でしょうか。今までと変わらないのであれば、変える必要はなかったのではありませんか。法案に明記することを避けたのは「戦闘地域」にまで活動の範囲を広げることを意図しているからではありませんか。

 ⑰ 「現に戦闘が行われている地域」以外であれば、「後方支援」が可能だとされています。ということは、これまで戦闘が行われていた地域やこれから戦闘が行われる可能性のある地域でも活動するということになります。その場合でも自衛隊員のリスクが高まらないと断言する根拠はどこにあるのでしょうか。

 ⑱ 弾薬の補給が必要になるのは戦闘によって消費されるからです。その場所から「後方支援」を要請された場合、「そこは危険だから行けない」と断るのでしょうか。弾薬の補給や武器の運搬などを行っている際に戦闘が生じた場合、自衛隊だけが撤退できるのでしょうか。その結果、大きな被害が出るようなことはないのでしょうか。

 ⑲ 国連平和維持活動(PKO)での「駆けつけ警護」など活動内容を拡大し、任務遂行のための武器使用基準を緩和した場合でも、これまで以上にリスクが高まることはないという根拠はどこにあるのでしょうか。住民に周りを取り囲まれ、任務遂行か困難になるような場合、威嚇射撃などを行うのでしょうか。誤って市民に犠牲者が出るようなことはないのでしょうか。

 ⑳ 今回の「安保法制」整備は「抑止力」を高めるためだとされています。その対象は北朝鮮や中国なのでしょうか。「抑止」ではなく「挑発」となり、かえって軍拡競争を強める危険性はないのでしょうか。また、ISのようなテロ組織に「抑止力」は働かず、かえって「米国の手先」として敵視され、テロの危険性を高めるのではないでしょうか。

 さし当り、以上のような20の疑問を提起させていただきます。これらの疑問や問題点はこれまでの審議でも解明されたとは言えません。
 国民が理解し、納得できるような形で説明されたわけではないからこそ、「説明不足だ」という意見が8割にも上るのです。これ以外にも、まだまだ多くの疑問があり、質疑で解明されなければならないでしょう。
 質疑を打ち切って、特別委員会での採決を強行するような動きが伝えられていますが、とんでもありません。少なくとも、これらの疑問が解消されるまで、さらに審議を尽くすべきです。

 与党と維新の党によって特別委員会の開会が強行され、明日にも採決がなされようとしています。安倍首相の独裁を許してはなりません。
 民意よりもアメリカとの約束を優先する安倍従米政権の暴走を阻止するために、今こそ声を上げましょう。違憲の法案を通してはイケン、と……。
 今日は、私も各党への要請のために国会に行く予定です。行動せず、後になって後悔することのないように……。

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