SSブログ

8月9日(日) 東京都知事選を振り返って―来るべき総選挙に向けて市民と野党の共闘が大きく発展(その1) [論攷]

〔以下の論攷は「九条の会東京連絡会」が発行する機関誌『生きいき憲法』No.68、2020年7月28日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

1、小池百合子都知事の「作戦」勝ち

 コロナ禍を政治利用し有利に展開

 絵にかいたような「惨事便乗型選挙運動」でした。小池百合子都知事は現職としての有利な立場を生かし、徹頭徹尾コロナ禍を利用した選挙活動を展開しました。その結果、366万票を獲得し、歴代2位の得票数となって圧勝しました。
 小池圧勝をもたらした最大の要因は、「作戦」勝ちにあったと思われます。選挙が近づく前からコロナ対策を理由にテレビでスポットを流したり記者会見を行ったりして、名前と顔の売込みに余念がありませんでした。すでに選挙活動が始まっていたようなものです。
 選挙が告示されたら、今度はコロナ対策に専念するということで街頭演説を行わず、テレビでの討論会にも応じませんでした。テレビ局や新聞社の選挙報道も少なく、候補者の人柄や政治姿勢がこれまでになく注目を集めていたにもかかわらず小池さんは姿を隠したままでした。その結果、政策論争は深まらず、小池都政の業績や「7つのゼロ」公約の検証はほとんどなされないまま「コロナと戦う都知事」という印象ばかりが強まりました。
 コロナ禍の政治利用として象徴的だったのは「東京アラート」です。出した直後から感染者が減ったにもかかわらず都知事自身の露出度を高め、感染者が増え始めていたのに「アラート」を解除して翌日に立候補を表明しました。まさに、選挙のための「アラート」だったというしかありません。
 しかも、前回の選挙で対立候補を立てた自民党は公明党と共に自主投票とし、事実上の応援に回りました。NHKの出口調査によれば、自民支持層の7割、公明支持層の9割近くが小池さんに投票しています。無党派層からも広く支持を集め、立憲支持層の3割近くが投票し、「連合東京」も支持するなど、そつなく組織票を固めました。

 自民、公明党は事実上の小池支援

 それにもかかわらず、小池さんの得票が前回の増田寛也候補の得票との合計である470万票を104万票も下回った点が注目されます。その理由としては、小池支持が前回ほど熱狂的なものではなかったこと、右翼的な支持層や自民党都連の一部が日本維新の会が推薦した小野泰輔候補など他の候補に流れたことなどが考えられます。

2、不利な条件の下での大健闘

 小池候補とは異なり、宇都宮健児候補はいくつもの不利な条件の下で闘わなければなりませんでした。それでも、第2位につけて84万票を獲得しました。候補者がなかなか決まらず、あわや「不戦敗」になろうかという状況の下で、緊急事態宣言の解除を待って記者会見に臨み、これだけの支持を獲得したことを考えれば、大いに「善戦健闘」したと評価して良いと思います。

 コロナ禍の下、都民は「変化」より「継続」を求めた

 宇都宮候補にとっての不利な条件の一つは、すでに述べたように、前回分裂した与党側が小池候補で一本化したことです。しかも、コロナ禍もあって、都民の間では不安感が高まり安定志向が強まりました。このために、都民は新人より実績のある現職に都政をゆだね、変化より継続を求めたのです。
 加えて、緊急事態宣言によって具体的な施策をゆだねられた都道府県の首長は「頑張る知事」として注目を集め、小池都知事はこれを最大限に利用しました。安倍政権の対応を批判したり、休業要請や協力金の支給を打ち出したりするなど、安倍首相に比べればましに見えた「錯覚」も小池都知事に有利に働いたのではないでしょうか。

nice!(0) 

nice! 0