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7月6日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』7月6日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「ヤキが回った自公政権 処理水もマイナカードも政権末期のような支離滅裂」

 4日、岸田首相は国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長と面会。福島第1原発の処理水の海洋放出計画について「国際的な安全基準に合致している」とした包括報告書を受け取った。

 IAEAは日本政府の依頼に応じて、放出計画の安全性を検証してきた。グロッシ氏は、処理水の放出が人や環境に与える影響は「無視できる程度」だと言い、報告書は「科学的かつ中立的なものであり、日本が決断を下すのに必要な要素が全て含まれている」と強調。これで政府は処理水放出の前提条件をひとつクリアした格好だ。

 処理水の海洋放出には、地元の漁業関係者や周辺国からの反対や懸念が根強い。それは当然の反応だ。IAEAの報告書を手にした岸田は「科学的根拠に基づいて、高い透明性をもって国内外に丁寧に説明したい」と言うのだが、本当に安全性は担保されているのか。なにしろ、報告書をまとめて安全性にお墨付きを与えたIAEA自体が「海洋放出を推奨、支持するものではない」と責任回避している。

 「そもそもIAEAは原発推進団体だということを考慮する必要があります。世界が再生可能エネルギーにシフトしつつある中で、事故を起こした日本が先頭切って原発推進に突っ走ることは、世界の原発回帰に向けた大きなメッセージになるでしょう。そして原発推進に舵を切った岸田政権は、まず処理水の問題を片づける必要がある。IAEAと利害が一致しているのです。処理水放出については、公明党の山口代表が『海水浴シーズンは避けた方がよい』と言ったことがすべてを物語っている。処理水の安全性は疑わしいと与党の代表も思っているわけです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

■政権政党の体をなしていないのに運だけで持っている

 「多核種除去設備(ALPS)を使っても除去できないのがトリチウムで、海外の原発も基準値以下に薄めてから海洋や大気中に放出しているのは確かですが、決定的に違うのは、福島第1原発の場合はメルトダウンしたデブリの汚染水ということです。通常運転時の処理水とは違う。

 ALPSで取り除けない危険な核種がトリチウム以外にも含まれている可能性は排除できません。それに、どんなに薄めても総量は変わらないのだから、近海の食物連鎖で濃縮されていくリスクは消えない。IAEAや東電の言うことが、どこまで信用できるのか。政府も安全だと断言できないから、1キロ先の沖合で放出するのでしょう。国民や周辺国の不安は一向に解消されないのに、納得いく説明がないまま、結論ありきで強権的に進めるのがこの政権の特徴です」(五十嵐仁氏=前出)

 あの過酷事故を経て原発を動かす必要性もきちんと説明しないまま、今なお国論を二分する原発推進をいつの間にか勝手に決めていたのが岸田政権である。防衛費の増額も、マイナンバーカードの問題もそうだ。財源問題は「先送り」するくせに、国民の不安を置き去りにして、頼んでもいないことをスケジュール優先で拙速に進めようとする。

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