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12月27日(日) ブログへのコメントももっと勉強せよ [マスコミ]

 昨日のブログに対して、「労働分配率は過去最高を記録しましたよ。あなたこそ勉強したら?笑」という「通りすがり」のコメントがありました。日経新聞の記者の身内の方でしょうか?(笑)

 確かに、労働分配率は過去最高を記録しました。日経新聞社の集計によれば、上場企業の2008年度の労働分配率は55.1%となり、過去25年間で最高になっています。
 だから、労働者は貧しくないと言いたいのでしょうか。可処分所得は減っていないと言うのでしょうか。
 企業の内部留保はそれほど多くないと反論したいのでしょうか。『2010年国民春闘白書』では、2008年10~12月の内部留保はプラスの1.7%(5頁の表2参照)と記述されているのに……。

 そもそも、労働分配率とは何でしょうか。それは、財やサービスなどによって生み出された国民所得のうち、労働者が受け取る雇用者報酬の割合を示すもので、労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100によって得られます。
 これを見ても分かるように、変数は二つあります。人件費と付加価値です。
 人件費が増えても付加価値が減っても、労働分配率は増えます。短期的には、労働分配率は景気循環とは逆方向に動く傾向があり、景気拡大期に低下し、逆の縮小期には上昇します。

 今回の場合、リーマン・ショック後の急速な景気後退がありました。景気が急激に縮小したから、労働分配率が急上昇したのです。
 それは、人件費が増えたからなのでしょうか。それとも、付加価値が減ったからでしょうか。
 答えは明らかです。世界的な景気後退の影響によって業績が悪化し、企業の付加価値額が大幅に減少したためです。人件費が増大したからでも、労働者の取り分が増えたからでもありません。

 こんな簡単なことも分からないようでは困ります。ブログにコメントする場合も、もっと勉強してからにしてもらいたいものです。

12月26日(土) 日経新聞の記者は俗論・俗説の垂れ流しをやめてもっと勉強せよ [マスコミ]

 日本は何で稼いでいくのか―。「日本のように人口が減る国で家計部門への分配にばかり政策が偏ることはリスクが大きい」。米コロンビア大学のロバート・マンデル教授は言う。
 来年の参院選に縛られる政治の事情はあるにせよ、企業が太らないことには家計の回復もままならない。つけを残して今を取り繕うより、雇用の受け皿を育て、未来を拓(ひら)く方がよい。(「日本に成長を①」『日本経済新聞』2009年12月7日付)

 少し前になりますが、日経新聞らしい記事です。記者が、どれほど俗論・俗説にどっぷりと浸かってしまい、いかに勉強していないかが良く分かるような記事です。

 まず、コロンビア大学のマンデル教授の発言から見てみましょう。「日本のように人口が減る国で家計部門への分配にばかり政策が偏ることはリスクが大きい」というのが、それです。
 「日本のように人口が減る国」はその通りです。日本は、05年に戦後初めて人口が自然減になり、06年にはいったん回復しましたが、07~08年と、2年続けて自然減となっているからです。
 しかし、「家計部門への分配にばかり政策が偏る」というのは、真っ赤な嘘です。一体、どこの国のことなのでしょうか。日本であれば、いつの時代のことなのでしょうか。
 少なくとも、最近のことではないでしょう。「家計部門への分配にばかり政策が偏」っていたのであれば、これほど貧困化や格差が拡大し、家計が苦しくなることはなかったでしょうに……。

 これを引用した記者も、おそらくマンデル教授と同じように考えているのでしょう。「家計部門への分配にばかり政策が偏」っていたところに問題があるのだと……。
 だから、臆面もなく、その後にこう続けるのです。「企業が太らないことには家計の回復もままならない」と……。
 このような考え方は、理論的にも経験的にも、すでに完全に破綻したものではありませんか。それを未だに堂々と主張するところに、不勉強さが示されていると言わざるを得ません。

 理論的に言えば、これは一種の「トリクルダウン理論」です。企業が潤えば、その滴くがしたたり落ちるように家計も回復するにちがいないというわけですから……。
 しかし、このような理論は破綻しました。企業は肥え太ったのに、家計はちっとも楽にならなかったからです。
 02年から07年まで、日本は戦後最長の景気回復を経験し、大企業は5年連続で最高益を更新し続け、10年間で内部留保を倍増したことは、すでに労働総研の試算によって紹介したとおりです。しかし、「この10年間で労働者の賃金は月3万5000円以上減収になっている」(『2010年国民春闘白書』10頁)のです。名目の雇用者報酬は6期連続のマイナスで、253兆円と92年の水準にまで落ち込んでしまいました。

 日経新聞の記者は、この事実を知らないのでしょうか。戦後最長の景気回復があったにもかかわらず、家計は潤わなかったという現実が目に入っていないのでしょうか。
 少なくともこのことは、財界団体でさえ、ちゃんと認識していたのです。たとえば、07年12月に発表された日本経団連の『経営労働政策委員会報告』は、「わが国の安定した成長を確保していくためには、企業と家計を両輪とした経済構造を実現していく必要がある」と書いていました。
 「企業と家計を両輪とした経済構造を実現していく必要がある」と07年末に書いていたのは、それ以前の5年間にわたる景気回復があったにもかかわらず、このような「企業と家計を両輪とした経済構造」が実現していなかったからです。この時、日本経団連が「家計」に言及することで、賃上げの容認に転じたと話題になりました。新聞記者なのに、新聞を読んでいないのでしょうか。

 現在の日本経済が抱えている最大の問題は、一方で、大企業は内部留保を218.7兆円も溜め込んだのに、他方で、貧困率15.3%と先進国で2番目に貧しい国になってしまったというところにあります。その原因は、家計に回るべき富が大企業の懐に蓄積されてしまったからです。
 だから、可処分所得が増えず、使える金が少ないから消費に回せず、モノが売れないから内需は拡大せず、ますます景気が悪くなり、賃金が下がってモノが買えなくなるという悪循環に陥ってしまいました。これがデフレ・スパイラルにほかなりません。
 企業から富をはき出させ、家計へと回すべき時に、「家計部門への分配にばかり政策が偏ることはリスクが大きい」「企業が太らないことには家計の回復もままならない」などとお説教を垂れる。何という逆立ち。何という妄言。

 このような妄言を信ずるかぎり、デフレ・スパイラルから抜け出すことは無理でしょう。家計が潤い内需が拡大することは、日本経済新聞社の売り上げ向上にとっても必要不可欠なことだということが分からないのでしょうか。
 俗論・俗説を垂れ流すことは、もうやめてもらいたいと思います。日経新聞の記者はもっと勉強せよ、と言いたくなります。


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