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11月9日(水) 岸田政権を覆う統一協会の闇 癒着議員抜きでは組閣できず(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『治安維持法と現代』No.44、2022年秋季号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

はじめに

 参院選の最終盤。驚天動地の事件が勃発しました。7月8日に遊説先の奈良県近鉄大和西大寺駅前で安倍晋三元首相が銃撃され、その後死亡が確認されたからです。
 選挙戦の最中、衆人環視の下で発生した白昼公然たる重大犯罪です。決して許されないものですが、その結果、明らかになった事件の背景も許されざるものでした。
 逮捕された山上徹也容疑者は「母親が宗教団体にのめり込んで破産した。家庭をめちゃくちゃにした団体を、安倍氏が国内に広めたと思って狙った」と述べたからです。世界平和統一家庭連合(統一協会)によって家庭を崩壊させられ個人的に恨みを抱いており、その関連団体にビデオメッセージを送って「広告塔」の役割を果たしていたのが安倍元首相だったので狙ったというわけです。
 その後の展開も驚愕の連続でした。これほど深い闇がかくも幅広く長い期間にわたって日本の政界を覆い、政治と行政を歪めてきたのかと、驚くほどの事実が次々と明らかになってきたからです。その中枢にあったのが自民党の清和会(安倍派)であり、安倍元首相でした。
 
安倍銃撃死で急変した参院選

 安倍元首相が倒れたのは参院選投票日の2日前です。この銃撃殺人は選挙の結果にも大きく影響したように見えます。事件に衝撃を受けた有権者は同情を寄せ、自民党は「弔い合戦」と位置付けて攻勢を強めたからです。メディアは当初、「特定の宗教団体」というだけで「統一協会」の名前を隠していました。
 参院選についてはすでに皆さんご存じのとおり、残念な結果に終わりました。与党の自公が多数を維持して立憲民主・共産の両党が議席を減らし、改憲勢力が3分の2を超えています。もともと選挙情勢は野党にとって厳しいもので、自民党の圧勝が予想されていました。
 安倍・菅政権の下で貧困化と格差の拡大が進み、中間層の没落を背景に社会の保守化と右傾化が深まりました。2月に始まったウクライナ侵略の影響で好戦的雰囲気が高まり、岸田新内閣に対する支持率も堅調に推移していました。
 これらの「逆流」に対して、野党は本気の共闘で巻き返す必要がありました。しかし、総選挙後に高まった「野党は批判ばかり」という批判にたじろいで追及を手控え、共闘についても32ある一人区での一本化は11選挙区にとどまりました。「漁夫の利」を得た自民党は有利な形で選挙を迎えることになったのです。
 しかし、選挙が始まってから、コロナ対策の失敗や医療崩壊、収入減や物価高騰への無策などもあって自民党は苦戦し始めました。この選挙情勢を一変させたのが、安倍元首相に対する銃撃事件です。失われかけていた支持が一気に回復し、再び与党優勢に転じたように思われます。

あぶり出された統一協会との癒着

 参院選に勝利した岸田首相は、解散・総選挙が無ければ国政選挙での審判を免れ、改憲発議などの諸課題の実現に専念できる「黄金の3年間」を手に入れました。岸田首相としてはじっくりと組閣構想を練って長期政権の基礎を固めるつもりだったでしょう。
 しかし、安倍銃撃事件を契機に統一協会と政治との癒着の闇に光が当たり、次々と新事実が明らかになるに及んで事態は急転しました。岸田内閣への批判が強まり始めたのです。危機感を強めた岸田首相は安倍元首相への弔意を支持回復に利用するために「国葬」とすること、統一協会と関係のある閣僚を排除するために内閣改造を早めることを決断しました。
 ところが、事態はさらに暗転します。とりわけ大きな批判を呼び起こしたのは安倍首相に対する「国葬」でした。戦前の国葬令は廃止され、憲法に反し、法的根拠はなく、国会での議論も議決もなしに閣議決定だけで決めてしまったからです。法に基づかない財政支出は財政民主主義に反します。特定の個人に対する特別扱いは法の下の平等に反し、弔意の強制は内心の自由を犯します。
 しかも、特別扱いされる対象が数々の批判と疑惑にさらされてきた安倍元首相でした。アベノミクスによって収入は減り、円安と物価高をもたらし、国民生活を苦しめています。特定秘密保護法や「共謀罪」法、戦争法(平和安全法制)の制定などによって憲法を踏みにじり、コロナ対策でも「アベノマスク」と一斉休校などの失政を繰り返してきました。
 アメリカの言いなりに武器を爆買いし、北方領土の「2島返還」論でプーチンに取り入り、拉致問題は利用するだけで一歩も動かず、モリカケ桜前夜祭については国会で118回も嘘の答弁を繰り返し、公文書の改ざんを苦にした自殺者まで出しています。このような人をなぜ17億円もかけて「国葬」し美化しなければならないのでしょうか。
 多くの疑問や批判が寄せられるのはあまりにも当然です。その後も「国葬」に対する国民の反対は高まるばかりで、改造されたにもかかわらず支持率はほとんど増えず、中には減ったものさえありました。
 最も象徴的なのは『毎日新聞』の世論調査で、内閣支持率は改造前から16ポイントも激減し、36%になってしまいました。通常の内閣改造では「ご祝儀」として支持率が上昇しますが、今回は「罰金」を取られたようなもので、3割台の「危険水域」に入り込んでしまったというわけです。

統一協会をめぐる政治の闇

 ところで、統一協会とはどのような団体なのでしょうか。1954年に文鮮明によって韓国で設立され、「世界基督教統一神霊協会」と名乗っていたように、キリスト教系の新興宗教の一種と見られています。2012年に教祖の文鮮明が死去した後は、妻の韓鶴子がその跡を継いで組織全体の責任者になりました。
 統一協会の発足にあたっては、アメリカのCIAや韓国のKCIAなどの支援があったとされています。日本に進出して以降は、岸信介元首相、笹川良一や児玉誉志夫などの右翼の巨頭と結びつきました。安倍元首相が深いつながりを持っていたのは、祖父の岸や父親の晋太郎と続く「3代の因縁」があったからです。
 一般のメディアなどで統一協会は「旧統一教会」と表記されていますが、その本質は反日謀略工作機関であり、反共・改憲推進団体にして反社会的詐欺集団です。宗教団体としての仮面はこの本質を隠すための隠れ蓑にすぎず、「教会」という表記は正しくありません。
 協会は1994年に「世界平和統一家庭連合」と名称を変更し、日本では2015年に文化庁が改称を認証しました。しかし、この名称変更は世論を欺いて批判をかわすためのものにすぎず、「協会」の本質は何も変わっていませんから「旧」をつけるのも正しくありません。
 その実態は宗教団体ではなく、反社会的なカルト団体です。したがって、「信仰の自由」の名で霊感商法や巨額献金、集団結婚や信者へのマインドコントロールを弁解することはできません。政治家との癒着や持ちつ持たれつの腐れ縁も「宗教と政治」との関係ではなく、政治家と反社会的カルト団体との結びつきが許されるのかという問題なのです。
(続く)

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8月29日(月) 混沌としてきた改憲動向 今こそ9条の「ありがたさ」を語ろう(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』No.1072,9月号に軽視されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕


軍事への忌避感が薄れてきた

 こんな時だからこそ、世論の動向が決定的に重要だと思います。
 その点で最近気になるのは、改憲世論の強まりです。9条については、まだ「守るべき」という声が多いものの、憲法全体については改憲への支持が増えているようです。「時代に合わなくなっているのだから変えてもいいんじゃないか」という意識ですね。
 そうなったのは、与党が憲法の規範力を弱めてきたことの影響ではないでしょうか。憲法を守らず、逆に反することを閣議決定し、既成事実化するやり方を取ってきました。憲法の正統性を掘り崩し、権力を規制する力を弱めてきたことが大きいと思います。
 もう一つ、憲法9条を支えてきたのは戦争体験に基づく「軍事」への忌避感情。軍隊は信用できない、戦争はもうこりごりだという思いだったのではないでしょうか。しかし、災害救助などで自衛隊の市民権が拡大し、軍隊として忌避する感情が薄れてきた。そこに、ロシアによるウクライナ侵略が起きました。やっぱりそれなりの軍隊を持つ必要があるという感覚、軍事・戦争を身近なものとして受け止め、軍事力の強化に理解を示す声が強まったように見えます。

憲法9条の「5つのありがたさ」

 こうした状況も踏まえ、改憲を阻止する上でいま何が必要かをあらためて考えたい。
 まず、日本は「軍事対軍事」を選択できない国なのだということを、国民合意として改めて確認する必要があると思います。日本は世界の中で「平和国家」のブランドを保ってきました。9条のありがたさ、有効性を捨て去るのではなく、再確認し強調すべきだと思います。
 それは5点。①憲法9条は戦争加担への防波堤となってきた②自衛隊員を戦火から守るバリアーだった③戦後における経済成長の原動力だった④学術研究の自由な発展を促進する力でもあった⑤平和外交を生み出す力になるはずだった――ということです。
 戦争加担への防波堤という点について言えば、ベトナム戦争が好例です。米国の同盟国は軍の派遣を要請され、韓国は延べ30万人を送り、約5000人が戦死しています。日本は戦争に加担したものの自衛隊を送らず、戦死者を出していません。9条という憲法上の制約があったからです。「台湾有事」が懸念され戦争法もできている状況で9条が改憲されれば、名実ともに米国の戦闘に全面的に巻き込まれることになります。
 自衛隊員を守る点でも9条は威力を発揮してきました。イラクのサマーワに派遣された陸上自衛隊の任務は給水と道路の補修で、戦闘に加わることはありませんでした。これも憲法9条があったおかげです。
 こうしたことを国民に訴え、理解してもらう活動が大事になります。事実に照らして、草の根から「戦争は駄目だ」「9条は大切」の声を大きくしていきたいですね。

平和外交が今ほど大切な時はない

 そもそも島国の日本が戦争に巻き込まれたら、私たちは生きていけません。食料とエネルギーの自給率は低く、陸続きのウクライナのように他国に逃げることもできません。貿易では中国がトップで密接な関係にあり、戦争などやれるはずがありません。
 平和外交が今ほど大切な時はない。戦後の日本は外交・安保について米国に追随し、9条を生かした自主外交を怠ってきました。米国追随では、平和と安全を確保することはできません。戦後の米国は間違いだらけで、ベトナム、イラク、アフガニスタンを見ただけでも、うまくいった戦争などないのですから。
 「米中対立」でも、日本は中国に自制を求めると共に、米国にも中国を挑発するなと忠告するべきです。9条に基づく自主的な外交を展開し、対立緩和と戦争回避を最優先にした独自の取り組みを行わなければなりません。

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8月29日(月) 混沌としてきた改憲動向 今こそ9条の「ありがたさ」を語ろう(その2) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』No.1072,9月号に軽視されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕


軍事への忌避感が薄れてきた

 こんな時だからこそ、世論の動向が決定的に重要だと思います。
 その点で最近気になるのは、改憲世論の強まりです。9条については、まだ「守るべき」という声が多いものの、憲法全体については改憲への支持が増えているようです。「時代に合わなくなっているのだから変えてもいいんじゃないか」という意識ですね。
 そうなったのは、与党が憲法の規範力を弱めてきたことの影響ではないでしょうか。憲法を守らず、逆に反することを閣議決定し、既成事実化するやり方を取ってきました。憲法の正統性を掘り崩し、権力を規制する力を弱めてきたことが大きいと思います。
 もう一つ、憲法9条を支えてきたのは戦争体験に基づく「軍事」への忌避感情。軍隊は信用できない、戦争はもうこりごりだという思いだったのではないでしょうか。しかし、災害救助などで自衛隊の市民権が拡大し、軍隊として忌避する感情が薄れてきた。そこに、ロシアによるウクライナ侵略が起きました。やっぱりそれなりの軍隊を持つ必要があるという感覚、軍事・戦争を身近なものとして受け止め、軍事力の強化に理解を示す声が強まったように見えます。

憲法9条の「5つのありがたさ」

 こうした状況も踏まえ、改憲を阻止する上でいま何が必要かをあらためて考えたい。
 まず、日本は「軍事対軍事」を選択できない国なのだということを、国民合意として改めて確認する必要があると思います。日本は世界の中で「平和国家」のブランドを保ってきました。9条のありがたさ、有効性を捨て去るのではなく、再確認し強調すべきだと思います。
 それは5点。①憲法9条は戦争加担への防波堤となってきた②自衛隊員を戦火から守るバリアーだった③戦後における経済成長の原動力だった④学術研究の自由な発展を促進する力でもあった⑤平和外交を生み出す力になるはずだった――ということです。
 戦争加担への防波堤という点について言えば、ベトナム戦争が好例です。米国の同盟国は軍の派遣を要請され、韓国は延べ30万人を送り、約5000人が戦死しています。日本は戦争に加担したものの自衛隊を送らず、戦死者を出していません。9条という憲法上の制約があったからです。「台湾有事」が懸念され戦争法もできている状況で9条が改憲されれば、名実ともに米国の戦闘に全面的に巻き込まれることになります。
 自衛隊員を守る点でも9条は威力を発揮してきました。イラクのサマーワに派遣された陸上自衛隊の任務は給水と道路の補修で、戦闘に加わることはありませんでした。これも憲法9条があったおかげです。
 こうしたことを国民に訴え、理解してもらう活動が大事になります。事実に照らして、草の根から「戦争は駄目だ」「9条は大切」の声を大きくしていきたいですね。

平和外交が今ほど大切な時はない

 そもそも島国の日本が戦争に巻き込まれたら、私たちは生きていけません。食料とエネルギーの自給率は低く、陸続きのウクライナのように他国に逃げることもできません。貿易では中国がトップで密接な関係にあり、戦争などやれるはずがありません。
 平和外交が今ほど大切な時はない。戦後の日本は外交・安保について米国に追随し、9条を生かした自主外交を怠ってきました。米国追随では、平和と安全を確保することはできません。戦後の米国は間違いだらけで、ベトナム、イラク、アフガニスタンを見ただけでも、うまくいった戦争などないのですから。
 「米中対立」でも、日本は中国に自制を求めると共に、米国にも中国を挑発するなと忠告するべきです。9条に基づく自主的な外交を展開し、対立緩和と戦争回避を最優先にした独自の取り組みを行わなければなりません。

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8月28日(日) 混沌としてきた改憲動向 今こそ9条の「ありがたさ」を語ろう(その1) [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、日本機関紙協会の『機関紙と宣伝』No.1072,9月号に軽視されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 7月の参院選では、改憲に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」が179議席となり、発議に必要な3分の2(166議席)を大きく上回りました。きわめて危険な状況ですが、8月半ばの時点でみると政局は改憲一直線とはなっていません。むしろ混沌としてきたという印象を持っています。このような状況の下で私たちは何をなすべきかを考えてみたいと思います。

改憲勢力が3分の2を確保しているが…

 確かに参院選では改憲勢力が3分の2を確保(維持)し、衆参ともに改憲発議が可能な状況です。安倍晋三元首相の遺志を継いで、岸田文雄首相も一気に発議へと進むつもりだったかもしれません。
 特に、昨年の衆院選を経て、改憲に前のめりの状況が生まれていました。改憲手続法が改定され、法的ブレーキが解除されました。日本維新の会が議席を増やし、改憲アクセルが強まりました。その結果、衆院の憲法審査会が質的に変化。以前のように、野党の意見を尊重する姿勢・ルールが後退していきました。むしろ、維新など「野党」側からこうしたルールを破る動きが強まったのです。衆院憲法審査会の暴走が始まっていました。
 参院の憲法審査会は衆院ほどひどくはありませんでしたが、今回、参院でも維新が議席を増やしたため、衆院と同様の暴走が始まるのではないかと心配でした。改憲勢力にとっては国政選挙がない「黄金の3年間」となり、改憲に反対する側にとって容易ならざる危険な局面を迎えていました。

統一協会との闇の関係で支持率低下

 ところが、です。安倍元首相の銃撃事件によって、状況はガラリと変わったように見えます。
 第一に、安倍氏の死去によって改憲の推進力・旗振り役がいなくなりました。もともと岸田氏は改憲にそれほど積極的ではありません。安倍さんの支持を得るために顔色を見ながらリップサービスをしてきましたが、もうそんな気遣いをする必要はなくなったのです。
 岸田という人は先頭に立って引っ張るというよりも、周りからせっつかれて腰を上げるタイプの政治家です。「公家集団」と言われた派閥(宏池会)の伝統的なカラーを色濃く受け継いでいるように思います。
 第二に、改憲への積極的な旗振りをしてきた維新の動向です。代表の松井さんの辞任で、後任をめぐって内部はすったもんだの混乱状況となっています。改憲への取り組みも、今後どう展開するかわかりません。
 第三に、自民党と統一協会との闇の関係が明らかになり、岸田政権として対応に苦慮しています。世論の関心も高く、内閣支持率が急落するなどの悪影響が出ています。

世論の反発を招く岸田政権

 そのうえ、岸田政権に対して世論の一層の反発を招く問題が起きています。
 その一つが、大軍拡路線を突っ走ろうとしていることです。軍事費の2倍化に向けて動き出し、敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有もめざしています。収入が伸びず、物価が高騰して生活が苦しい中で、なぜ防衛費だけ大幅増加なのか、という疑問が出るのは当然です。
 さらに、安倍元首相の国葬実施をあっという間に閣議で決めてしまいました。事件の衝撃は強く、多くの弔問客が悼む姿を見て即断即決したのでしょうが、世論を見誤りましたね。その後の調査を見れば、国葬について「賛成」よりも「反対」の方が多い。国民の過半数が反対している調査もある。今後、反対はもっと増えるでしょう。
 支持率低下に焦ったためでしょうか、追い込まれる形で内閣改造を決断し、前倒しで実施しました。統一協会との関係を払拭し、人心一新でリセットするのが目的だったと思われます。これで乗り切ろうとしたわけですが、新内閣でも統一協会と関係した閣僚数は変わらず、腐れ縁を断ち切る方向は見えてきません。

「金メッキの3年間」に?

 本来、改憲に向けた「黄金の3年間」を手に入れたはずでしたが、「金メッキの3年間」に変わりつつあるように見えます。これからこのメッキが剥げるのではないでしょうか。
 もともと改憲の動きは安倍元首相が「変えたい」と言って始まった。変えること自体が自己目的化していました。憲法を変えなければならない「立法事実」がないのに、改憲を主張してきたのです。
 例えば、9条への自衛隊明記。「違憲状態に終止符を打つ」と言いながら、他方で自衛隊は合憲だと言ってきました。国民の中でも自衛隊はおおむね市民権を得ており、合憲だと思っている人も少なくありません。合憲ならわざわざ改憲する必要はないわけで、これは大きな自己矛盾です。
 私は9条改憲を、集団的自衛権の行使と自衛隊の海外派兵を合理化し全面的に可能にするためだと見ていますが、自民党からすれば、安保法制という名の戦争法を制定し、敵基地への先制攻撃も打ち出すなど、実質改憲を進めてきました。いまさら、明文改憲に時間とエネルギーを費やすのがいいのかという声が出て来かねません。せっかく実質改憲をやってここまできたのに、明文改憲に手を出して国民投票で失敗したらどうするのか、というリスクとジレンマがあるからです。


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8月13日(土) 参院選の結果と憲法運動の課題(その3) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕


3 今後の課題と展望

(1)命と暮らしを守り、経済と社会保障を再建する課題

 参院選後、新型コロナウイルス感染の急拡大が生じ、第7波がやってきました。オミクロン株のBA.2型がBA.5型に急速に置き換わっているからです。コロナ感染防止のための検査体制の強化やワクチン接種などの対策を急ぎ、病床の確保などで医療体制のひっ迫を防がなければなりません。
 参院選でも大きな争点となった物価高騰の大波が到来するのはこれからです。選挙で野党が一致して求めた消費税の減税を引き続き要求し、中小企業や業者を苦しめるインボイスの導入を中止させることが必要です。岸田政権は実効性の低い賃上げ政策や小手先の物価対策に終始し、実質賃金は2か月連続でマイナスになっています。
 アベノミクスによって儲けを拡大した大企業は内部留保を466兆円もため込み、異次元の金融緩和が「黒田円安」を生み、物価高に拍車をかけています。三本の矢を堅持する「新しい資本主義」ではなく。新自由主義とアベノミクスから転換し、内部留保への課税や金融所得課税、富裕層への累進課税の強化などが必要です。
 「全世代型社会保障」を口実に世代間対立をあおって負担増・給付減を正当化してはなりません。10月からの75歳以上の病院窓口「2割負担」導入に反対し、6月支給分から減額された年金をこれ以上カットさせず、防衛費倍増の財源として狙われている社会保障を削減するのではなく、その充実を求めていく必要があります。

(2)大軍拡と改憲を阻止し、外交・安全保障を立て直す

 参院選でも国民は改憲への信任を与えたわけではありません。選挙の結果を受けて実施された共同通信の世論調査では、改憲について「急ぐ必要はない」が58.4%と過半数を超え、「急ぐべき」は37,5%にすぎません。参院選で重視した項目も「物価対策・経済政策」が42.6%の最多で、「憲法改正」は5.6%という少なさです。
 このような国民の声を無視して、9条改憲に突き進むことは許されません。まして、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有論や11兆円もの規模を目指す防衛費GDP2%への倍増論などは論外です。
 このような方針は戦後保守政治の質的転換を示すもので、これまでの延長線上でとらえてはなりません。質的に異なる本格的な軍事大国路線を選択しようとしているからです。戦後保守政治が採用した解釈改憲の枠に入らないからこそ、憲法の条文を変える明文改憲に転じようとしているのです。
 この点では、9条改憲によって日本は何を失い、どのようなリスクを招くのかが明らかにされなければなりません。大軍拡と9条改憲によって目指されているのは、簡単にいえば、次のような軍事大国の姿にほかならないからです。
 ① GDP2%の11兆円を超える世界第3位の軍事力
 ② 米軍とともに戦う自衛隊の自由な海外派兵
 ③ 日本が攻撃されていなくても集団的自衛権による参戦
 ④ 外国の指揮統制機能等の中枢を攻撃しせん滅する攻撃能力
 ⑤ 攻撃される前に行う国連憲章違反の先制攻撃
 このような国のあり方が憲法の平和主義の原則に反し、専守防衛の国是を吹き飛ばすものであることは明らかです。周辺諸国の警戒心を強めて軍拡競争をあおり、戦争のリスクを高めるにちがいありません。
 これに対して、憲法9条の平和主義原則に沿った外交・安全保障政策は、本来、以下のようなものでなければならなかったはずです。
 ① 必要最小限度の防衛部隊に徹し海外派兵を行わない
 ② 軍事同盟に加盟せず外国の軍事基地を置かない
 ③ 仮想敵国を持たず対立する国のどちらにも加担しない
 ④ 東南アジアの非核武装地帯を東北アジアにも拡大する
 ⑤ 特定の国を敵視せず全ての国を含む集団安全保障体制を構築する
 これこそが、憲法9条が求めている外交・安全保障政策の具体化ではないでしょうか。しかし、現在の自公政権ではとうてい実行できません。だからこそ、このような政策を実施し、憲法を活かして東アジアの平和と安全を実現できる「活憲の政府」が必要なのです。

(3)政治におけるモラルを回復し、疑惑の真相を解明する

 今回の参院選においても、政治家や候補者の暴言が繰り返されました。桜田義孝前五輪相は少子化に言及し、「女性も、もっともっと、男の人に寛大になっていただけたらありがたい」と発言し、現役大臣である山際経済再生担当相は「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない。皆さんの生活を本当に良くしようと思うなら、自民党、与党の政治家を議員にしなくてはいけない」と言って松野博一官房長官に注意され、釈明に追い込まれました。
 たびたび問題発言を繰り返してきた麻生副総裁もロシアによるウクライナ侵略に触れながら「子どもの時にいじめられた子はどんな子だった。弱い子がいじめられる。強いやつはいじめられない」と発言しています。まるで攻められたウクライナの側に責任があるかのような物言いではありませんか。
 これらは政治家としての資質が疑われるような暴言ばかりです。それが本音であっても普段は口をつぐんで表には出てきません。選挙になれば、街頭演説をする必要が生まれます。多くの聴衆を前にした演説をするとき、受け狙いでポロット出てしまったのです。
 自民党ばかりではなく維新の会やNHK党も同じです。有権者に対する誠実さのかけらもなくモラルを欠いた政治家の本質に早く気付いてほしいと思います。この点では、ウソを言い続けて信頼を失ったジョンソン首相を引きずり下ろしたイギリスを見習ってもらいたいものです。
 同時に、これらの暴言よりさらに大きな問題なのが「政治とカネ」をめぐる疑惑です。とりわけ真相解明が急がれるのは、安倍元首相のモリカケ桜と言われる疑惑の数々で、桜を見る会前夜祭での後援会による会費の補填、ホテルの便宜供与、サントリーによる酒類の無償提供など、いずれについても真相解明が急がれます。
 また、安倍元首相については、その死去をめぐって急浮上してきた旧統一協会との深い闇の解明も必要です。祖父の岸信介元首相からつながりがあり、安倍元首相だけでなく自民党政治家の多くが旧統一協会を利用し、利用されてきました。旧統一協会の支援で当選した自民党の井上義行議員をはじめ、このような持ちつ持たれつの関係に光を当て、自民党とカルト教団との腐れ縁を断ち切らなければなりません。

(4)野党共闘を再建し、解散・総選挙を勝ち取る

 昨年の総選挙後、野党共闘は大きな困難に直面しました。そうなったのは、共闘の中心となるべき立憲民主党とその支援団体である連合の腰が定まらなかったためです。
 なぜでしょうか。それは立憲民主の泉健太代表も連合の芳野友子会長も、市民と野党の共闘の戦略的重要性を理解していなかったからです。野党共闘は選挙に勝つための便宜的な方策にとどまらず、新しい政府を作るための唯一可能な戦略的目標だったのに。
 自公政権に対抗し政権交代を目指している立憲も連合も、立憲単独での政権獲得が可能だと考えているのでしょうか。それが無理だというのであれば、連立するしかありません。その相手と想定している国民民主を「兄弟政党」だと言ってみても、先方は共闘に応じようとしていません。
 そうなれば、ともに連携して政権交代を迫ることのできる政党と手を結ぶしかありません。その相手は、現状では共産・れいわ・社民の3党になります。これらの政党との連携は、政権交代を実現するための「パン種」なのです。大切にして発酵するのを待つのが、立憲のとるべき態度ではないでしょうか。
 ところが、立憲はこのような共闘の戦略的重要性を理解せず、攻撃されればすぐにぐらついてしまいます。政権交代に向けての可能な道はこれしかないということ、活路はこれらの政党との共闘にしかないということが分かっていれば、もっと腰の据わった本気の共闘が実現できたはずです。
 連合にしてもこの間の対応は不可解なものでした。芳野会長は共産党との共闘をかたくなに拒んでいましたが、かつて共産党ともかかわりの深い全労連と「花束共闘」という形でエールを送りあったり、メーデーの時差開催で舞台を共有したりしたことを知らないのでしょうか。
 立憲も連合も存在意義が問われています。立憲は連合という一部の労働組合のためにあるのでしょうか。連合は傘下の大単産の組合員だけの利益のためにあるのでしょうか。そうではないでしょう。全ての国民と全ての働く人々のためにあるのではありませんか。
 今回の参院選の総括を通じて共闘の再建のためにどのような方針を打ち出すのかが、試金石となるにちがいありません。昨年の総選挙以来の教訓をしっかり学び、野党の共闘態勢を立て直してもらいたいと思います。
 来年5月に広島で開かれる主要国首脳会議(G7)後、有利な情勢だと判断すれば岸田首相が解散に打って出るかもしれません。来年秋以降、総選挙から2年を経て解散風が吹き始める可能性もあります。「黄金の3年間」を待つことなく、それ以前に政権を追い詰めて解散・総選挙を勝ち取り、野党共闘による政権交代を迫ることがこれからの課題です。

 むすび―憲法運動における新たな課題

 参院選の結果、憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」は179議席となり、改憲発議に必要な3分の2である166議席を大きく上回りました。岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」と強調しています。いよいよ改憲発議の阻止に向けて正念場を迎えることになります。
 この点では安保体制による日米軍事同盟と憲法9条の相互関係、憲法上の制約を生み出している9条の意義の再確認が重要です。9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を幅広く知らせていくことが、ますます大きな意味を持つことになるからです。
 特に強調しておきたいのは憲法9条の効用であり、その「ありがたさ」です。9条改憲を主張している人々はもちろんのこと、それに反対している人々を含めて、その意義や効用が十分に理解されず、9条改憲によって「失われるものの大きさ」が良く分かっていないからです。
 その第1は、憲法9条が戦争加担への防波堤であったということです。安保条約に基づく日米軍事同盟によって日本はアメリカが始めた不正義のベトナム戦争やイラク戦争に協力させられましたが、9条という憲法上の制約があるために全面的な加担を免れました。ベトナムに延べ30万人以上の兵士を派遣して5000人近い戦死者を出し、虐殺事件まで引き起こした韓国とは、この点で大きく異なっています。
 第2に、自衛隊員を戦火から守るバリアーだったということです。安保体制によって自衛隊はイラク戦争に引きずり込まれましたが、「非戦闘地域」で活動した陸上自衛隊は基本的には「戦闘」に巻き込まれず、殺すことも殺されることもなかったのは9条のおかげでした。
 第3に、戦後における経済成長の原動力だったということです。これが「9条の経済効果」であり、平和経済の下で国富を主として民生や産業振興に振り向けることができた結果、一時はアメリカと経済摩擦を引き起こすほどの経済成長を実現することができました。
 第4に、学術研究の自由な発展を促進する力でもあったということです。日本学術会議は9条の趣旨を学術にあてはめて軍事研究を拒否してきたため、兵器への実用化や軍事転用などに惑わされることなく地道な基礎研究に専念し、ノーベル賞並みの研究成果を上げることができました。
 第5に、平和外交の推進を生み出す力だったということです。しかし、残念ながらこれは可能性にとどまりました。日本外交はアメリカの後追いにすぎず、平和な東アジアを構想する力がなく将来のビジョンもうち出すことができなかったからです。9条を活かした「活憲の政府」による独自外交に期待するしかありません。
 今回の参院選は憲法を放棄する「棄憲の国」か、憲法を活かす「活憲の国」かという二つの道の分かれ目にありました。前者は現在の与党と維新などの補完野党による9条改憲によって作られる国であり、後者は立憲野党の連合政権によって築かれる国です。日本の未来を切り開き希望を生み出すのは、後者の道しかありません。そのためのたたかいはこれからも続きます。

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8月12日(金) 参院選の結果と憲法運動の課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕


2 選挙戦の特徴と要因

(1)厳しい情勢と岸田政権の手ごわさ

 以上に見たように、参院選の結果を一言でいえば野党側の自滅と言ってよいものでした。このような結果をもたらした背景と要因は何でしょうか。
 今回の参院選の背景となった情勢はもともと野党にとっては厳しいものでした。野党側はそのような情勢の下での決戦を強いられ、効果的な反撃ができずに自滅したということです。それは、大きく分けて長期・中期・短期の3層構造をなしていました。
 長期的に見れば、第2次安倍政権以降、着々と進行してきた日本社会の右傾化・保守化という問題があります。これは実質賃金の停滞や年金の削減、2度にわたる消費税の増税、アベノミクスと新自由主義政策の失敗、新型コロナウイルス禍による生活苦と営業・雇用の困難などを通じた中間層の没落と貧困化の進展を背景にしたものでした。それは維新の会への支持の増大、NHK党の勃興や今回の選挙での参政党の進出、労働組合・連合の保守化と自民党への接近などの要因にもなっています。
 中期的には、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気の拡大、国民の不安の増大と安全保障への関心の強まり、大軍拡・9条改憲の大合唱などを挙げることができます。強権的な安倍・菅政権という前任者とは異なるソフトでリベラルな印象の岸田文雄首相の手ごわさ、内閣支持率の安定と自民党支持率の高さなどに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない岸田首相の政治姿勢が功を奏したということでしょうか。
 そして短期的には、安倍晋三元首相に対する銃撃と死去という衝撃的な事件の影響があります。参院選投票日2日前の最終盤という微妙な時点で勃発したこの事件によって自民党に同情が集まり、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の名前が隠され安倍元首相との関係も明らかにされることなく、その死が政治的に利用されたようにみえます。
 序盤で堅調とされていた与党ですが、物価高騰が選挙戦の争点に浮上してくるなかで守勢に回り勢いが弱まっていたのではないでしょうか。それが安倍首相の死によって巻き返しに転じ、自民党は当初の堅調さを回復して勝利したというわけです。

(2) 野党の失敗と混迷

 このように厳しい情勢の下で、ただでさえ弱体化した野党は決戦を強いられました。本来であれば、対抗するための強固な陣形を築くべきだったにもかかわらず、右往左往するばかりでした。「これでは勝てない」と選挙の前からある程度予想できるような対応に終始した結果、負けるべくして負けてしまったようにみえます。
 何よりも大きな問題は、昨年の総選挙の総括を間違えたことにありました。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそ野党勢力にとって必要な最善の策だったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
 総選挙後、自民党やメデイアなどから野党に対して「批判ばかりだ」という批判が沸き起こり、それにたじろいだ国民民主は政権にすり寄りました。当初予算に賛成して内閣不信任案に反対するなど補完政党へと転身したのです。これに引きずられる形で立憲民主も政権批判を手控えて対案路線に転ずるなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波にのまれていきました。これでは政権の問題点が明らかにならず、与党を追い詰めることもできません。
 加えて、「共闘は野合」「立憲共産党」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲民主党の執行部は、共産党との連携や野党共闘に対して消極的な姿勢を強めてきました。まさに、自民党の思うつぼにはまってしまったというわけです。
 その結果、32ある一人区での共闘は11にとどまり、たったの4勝に終わりました。こうなることは選挙の前からある程度予想されていたことです。一人区での分裂が自民党に漁夫の利を与えて参院選での勝利をもたらすことは自明でした。
 野党間の共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲民主と、背後から揺さぶりをかけ続けた連合の責任は大きいと言うべきでしょう。形だけの共闘によって表面を取り作ってみても、真剣さが欠けていれば本気の共闘にはならず、力を発揮することができないのは当然です。
 このように、政権チェックという野党の本分を忘れて批判を手控えるという戦術的な失敗と、連合政権を展望した共闘の構築から後退して形だけの選挙共闘に矮小化するという戦略的な混迷に陥った点に大きな問題がありました。この戦術的な失敗と戦略的な混迷こそが、今回の参院選で野党のオウンゴールを生み出した最大の要因だったのです。


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8月11日(木) 参院選の結果と憲法運動の課題(その1) [論攷]

〔以下の論攷は憲法会議の機関誌『憲法運動』第513号、8月号に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 参院選が終了し、与党の勝利、野党の敗北という結果が出ました。野党にとっては厳しい情勢の下での選挙となり、結果も残念なものとなりました。とりわけ、改憲勢力とされる政党の合計議席が参院での発議に必要な3分の2を超えたことは重大です。
 この結果が憲法の改定を目指す勢力にとっては有利に、改憲阻止を目指す勢力にとっては不利に働くことは否定できません。9条改憲を阻もうとする憲法運動にとっては重大かつ危険な局面が生じ、大きな課題を提起するものとなりました。
 このような結果になった背景としては、新型コロナウイルス感染第6波の収束、ウクライナ侵略による好戦的雰囲気の強まり、大軍拡と改憲の大合唱、岸田政権の支持率の安定と自民党支持率の高さ、野党の分断と一人区での共闘の不十分さがありました。それに加えて、選挙最終盤での安倍晋三元首相への銃撃・殺害による自民党への同情票の増大などがあったと思われます。
 参院選がなぜ、どのようにしてこのような結果になったのか。各党の選挙結果とその意味はどのようなものなのか。それが今後の政治と憲法運動にどのような課題を提起することになるのか。憲法運動はどう対応するべきなのか。以下、これらの問題について検討したいと思います。

1 参院選の結果

(1)勝たせてもらった与党

 参院選での各党の当選者数は、別表(省略)の通りになっています。全体の特徴は「与党が勝利した」というよりも、野党間の共闘の不十分さや乱立による票の分散などで対応を間違え、「野党が敗北した」といった方が良いような形になりました。オウンゴールによって自民党は勝利を「プレゼント」されたのです。
 自民党は選挙区で45議席、比例で18議席の合計63議席となり、改選前から8議席増やしました。今回の選挙で争われた選挙区74議席と比例50議席に神奈川選挙区の欠員を合わせた125議席の過半数を単独で確保し、メディアでは「大勝」「圧勝」などと報じられています。
 しかし、その内実は全く違っています。自民党が支持を増やした結果ではないからです。政党支持の実態が比較的正確に示される比例で昨年10月の総選挙と比べれば165万票も減らし、議席で1議席減となっています。有権者全体の中での支持を示す絶対得票率は16.8%にすぎず、2割を切りました。
 自民党が支持を減らしているにもかかわらず議席を増やした秘密は選挙区にあります。特に32ある一人区では28勝4敗となり、前回より6議席も増やしています。特に沖縄県を除く西日本では自民党が全勝しました。
 公明党は選挙区で現職7人が立候補して全議席を維持しましたが、比例では昨年の総選挙に比べて93万票減らし、1議席減の6議席となって計13議席にとどまりました。支持者の高齢化などに加え、自民との相互推薦の難航が背景にあるとみられています。
 公明党も選挙区では野党乱立の恩恵を受けました。大阪の場合、59万票で最下位の4位当選でしたが、共産・立憲・れいわが調整して一本化すれば65万票となり、当選は難しかったかもしれません。
 
(2) 試練に直面した立憲野党
 
 立憲民主党は神奈川県選挙区での5位補欠当選(任期3年)を含めて選挙区6減の10議席、比例は改選7を維持して合計17議席を獲得しました。改選前からは6議席減ですが、それは全て一人区での敗北でした。一人区では、青森と長野で勝利しただけで、旧民主党の力が強かった岩手と新潟でも議席を失っています。
 一人区での議席減は野党共闘が不十分だったことの結果です。前回は全てで共闘が成立し10勝をあげましたが、今回は11選挙区に限られ、青森と長野、沖縄で当選しただけです。本来であれば、野党第一党として共闘のかなめになるべき立憲民主が十分な役割を果たすことできず、野党支持者の失望を招きました。
 立憲民主の得票は、昨年の総選挙での比例と比べて472万票も激減しています。これは共闘しなければ勝てないことが分かっているのに背を向けた立憲への支持者の怒りの表れではないでしょうか。支持団体である連合の干渉と妨害に屈し、国民民主の与党へのすり寄りに動揺して共闘に積極的に取り組まず、市民と野党の政策合意にしても協定に各党の党首が署名するのではなく口頭での約束にとどまりました。
 日本共産党は東京選挙区で議席を維持しましたが、比例では2議席減の3議席となって合計4議席にとどまっています。昨年の総選挙の比例から55万票も減らし、3年前の19年参院選比例と比べても86万票の減です。
 共産党はその要因について、常任幹部会声明で「指導的イニシアチブを十分に果たせなかった」ことと「自力をつけるとりくみ」の「立ち遅れ」を指摘しています。野党共闘を進めるとともに、共産党の自力を強め支持をどう増やすのか、有事における自衛隊「活用」論についての理解をどう広げていくのかが今後の課題でしょう。
 同時に、東京で示された前進面を学ぶ必要もあります。NHKの出口調査では無党派層の投票先で1位でした。選挙ボランティアに若い人の姿も目立ち、SNS(ネット交流サービス)での情報発信も有効でした。山添拓候補は憲法9条にもとづく平和構築を直球で訴え、ほかの野党との違いを明確にし、大軍拡や9条改憲に反対する都民の願いを受け止め維新を退けて当選することができたのです。
 れいわ新選組も東京選挙区で山本太郎代表を当選させ、比例で2議席を得て合計3議席となりました。若い層や革新無党派層からの支持を広げ、一定の地歩を確保しています。
 社会民主党は比例で福島瑞穂党首が当選して改選前の1議席を維持し、得票率も2%を超えたために政党要件を維持できました。2%に達しなかった昨年の総選挙より24万票増やしたためですが、それは共産支持者による戦略的投票の結果かもしれません。

(3) 存在感を示した補完野党

 日本維新の会は選挙区で4議席、比例で8議席の合計12議席を獲得し、改選前の6議席から倍増しました。特に、比例区では立憲民主党を上回り、野党第一党となって存在感を示しました。
 しかし、東京と京都では次点で落選しています。大阪・兵庫などの近畿以外での当選は神奈川だけでしたが、松沢成文候補は元県知事ですべてが「維新票」とは言えません。基本的に「全国政党」化は成功せず、一時の勢いを失って頭打ちとなりました。
 昨年の総選挙での比例と比べても、20万票ほど減らしています。その支持層の多くは比較的恵まれた現役世代のホワイトカラーなどで、貧困化が進み中間層が没落するなかで不満を強め、将来への不安もあって「改革幻想」に期待を寄せた人ではないかとみられます。その一部は同じような性格のNHK党や参政党に流れたかもしれません。また、維新は暴言やスキャンダルなどが多く、問題候補者の「吹き溜まり」のようになっています。その実態が知られるようになって支持を失っている可能性もあります。
 国民民主党は選挙区で2議席、比例区で3議席の合計5議席を獲得しました。改選前からは2議席の後退です。「対決から解決へ」と言って予算案に賛成し、政権への接近を強めた国民民主の変身は必ずしも効果を生んでいるとは言えません。
 NHK党は82人を立候補させて比例で1議席を獲得し、選挙区・比例とも得票率2%に達して政党要件を維持しました。立花孝志党首は政党助成金目当ての大量立候補を公言し、22年度は2億6000万円が助成されると推計されています。このような立候補が許されるのか、改めて助成金の趣旨に反する問題点を浮かび上がらせました。
 諸派では新たに参政党が比例で1議席を獲得し、政党要件を満たしました。参政党が力を入れて取り組んだユーチューブへの動画投稿などSNSを通じて急速に関心を広げた結果だとみられています。

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8月8日(月) 自民に「漁月夫の利」与えた参院選(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『全国商工新聞』第3517号、8月1日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 分断攻撃に屈し 戦術戦略で失敗

 このような不利な情勢の下で選挙に臨んだ野党でしたが、昨年の総選挙の総括を間違えて戦術的な失敗と戦略的な混迷に陥りました。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそが必要な策であったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
 総選挙後、「批判ばかりだ」という批判にたじろいだ国民民主は「対決より解決」を掲げて政権にすり寄り、これに引きずられた立憲も政権批判を手控えて対案路線を打ち出すなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波に飲み込まれました。これでは政府・与党を追い詰めることはできません。
 加えて、「共闘は野合」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲は野党共闘に消極的な姿勢を強め、自民党の思うつぼにはまってしまいました。立憲が比例で大きく得票を減らしたのは、野党共闘の要としての役割を果たせず有権者の失望を招いたからです。
 その結果、32ある1人区での共闘は11にとどまり、自民28勝、野党4勝という結果に終わりました。こうなるのはある程度予想されていたことで、一人区での分立が自民党に漁夫の利を与え、勝利をプレゼントしたのです。共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲と、背後から足を引っ張った連合の責任は大きいと言うべきでしょう。

 「活憲の政府」へ 展望生む運動を

 今後の課題の第1は、コロナ禍と物価高から命と暮らしを守るために、医療体制を整備し、消費税の減税とインボイスの中止などを求めていくことです。新型コロナの第7波が訪れ、値上げの大波が押し寄せてくるのはこれからですから。
 第2の課題は、大軍拡・9条改憲阻止のための憲法闘争です。選挙後、岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議」することを強調していました。戦争に巻き込む安保体制とそれへの防波堤となってきた憲法9条の相互関係、9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を、事実に照らして説得的に訴えることがますます重要になります。
 第3の課題は、野党共闘を再建することです。きちんとした総括と反省の上に立って、草の根から立て直していかなければなりません。
 これらを通じて、憲法に寄り添い活かせる「活憲の政府」に向けての展望を生み出すことが第4の課題です。国政選挙での審判を受けることのない「黄金の3年間」を許さず、自民党と旧統一協会の闇の解明などによって早期に与党を追い込んで、解散・総選挙を勝ち取りましょう。

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8月7日(日) 自民に「漁夫の利」与えた参院選(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『全国商工新聞』第3517号、8月1日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

消費税減税、憲法闘争広げ
共闘再建で解散総選挙早く

 日本の命運をかけた参院選が終わりました。新型コロナ禍や物価高などによって傷ついた国民生活をどう立て直すのか、ロシアによるウクライナ侵略を受けて日本の安全保障をどうするのか―などが大きな争点となった選挙でした。
 選挙結果は与党が過半集を維持して勝利しています。自民党は改選過半数の63議席を確保し、1減で13議席となった公明党と合わせて76議席になりました。しかし、自民党は比例で昨年の総選挙から165万票も減らし、有権者全体の中での絶対得票率は16.8%でした。支持を減らしているにもかかわらず、一人区で議席を増やして勝たせてもらったのです。
 憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民民主と無所属を合計した「改憲勢力」は179議席となり、発議に必要な3分の2である166議席を上回りました。
 対する野党は、立憲民主党が選挙区で6減の10、比例は改選7を維持して17議席、維新の会は選挙区で1増の4,比例は5増の8となって12議席に倍増しました。比例では立憲を上回って野党第一党となっています。
 日本共産党は東京で1議席を得たものの比例では2減の3となって合計4議席、国民民主党も改選7から2減の5議席、れいわ新選組は3議席、社民党は1議席を得て得票率が2%を超え、政党要件を維持しました。このほか、NHK党と諸派の参政党がそれぞれ比例で1議席を得ています。

 野党不利の情勢 銃撃事件加わり

 野党が敗北した理由の一つは、厳しい情勢の下での選挙だったということにあります。事前の選挙予測でも与党の堅調が伝えられていました。
 その第1は、安倍内閣以降、顕著になってきた日本社会の右傾化や保守化の流れがあります。実質賃金の低下や2度にわたる消費税の増税、新型コロナ禍での生活苦や営業の困難などによる中間層の没落、貧困化などからくる不満や不安が未来志向の「改革」幻想に期待を寄せ、維新の会やNHK党、参政党への支持増大、連合の保守化などをもたらしました。
 第2は、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などです。ソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定などに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない岸田首相の政治姿勢が功を奏しました。
 そして第3には、安倍元首相に対する銃撃死という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前に勃発したこの事件によって自民党に対する同情が集まり、物価高対策で失った支持を盛り返したのではないでしょうか。
(続く)



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8月4日(木) 参院選の結果とたたかいの課題 [論攷]

〔以下のインタビュー記事は安保破棄中央実行委員会の機関紙『安保廃棄』第495号、8月号に掲載されたものです。〕

 改憲と大軍拡を止めるために何が必要か

◇今回の参議院選挙の結果をどのように見られますか。

 自民が支持減らして勝った理由

 五十嵐 自民党は勝ったというより勝たせてもらった、野党が負けたといったほうが良いのではないでしょうか。野党側のある種の“オウンゴール“だったと思います。自民党は支持を減らしたのに全体としての議席を増やし、改選過半数を獲得しました。その結果、公明党が1議席減らしたのに与党議席で参議院の多数を維持することができたのです。
 しかし、自民党の比例票を昨年の総選挙と比較すれば165万票も減っています。議席も1減っており、有権者比の絶対得票率は16.8%にすぎず2割未満です。
 自民党は支持を減らしていたのに、なぜ議席を増やすことができたのか。それは野党が1人区で「1対1」の構図に持ち込むことができず、自民党が28勝4敗と圧勝したからです。
 立憲民主は野党第1党として野党をまとめて自民党と対抗する陣立てをつくる責任がありました。しかし、共闘に対して後ろ向きで十分な役割を果たすことができませんでした。そのために期待を裏切って信頼を失い、とくに1人区で勝てず、大きな敗北を喫しました。共産党は比例で総選挙から56万票減らし、議席も6から4に後退しています。維新が議席を増やしたのは、生活苦に不満を持つ中間層の受け皿になったからではないでしょうか。

◇野党が前進できなかった原因はどこにあると思いますか。

 政権すり寄りで野党共闘が後退

 五十嵐 端的にいえば、総選挙の総括を間違えたからです。その結果、とるべき方針とは逆の方向を選択してしまった。戦術的失敗と戦略的混迷です。
 戦術的失敗というのは、「野党は批判ばかり」という批判にたじろいでしまったことです。国民民主の場合は「対決よりも解決」として政権にすり寄り、立権民主も「対案路線」に転換し、選挙前の通常国会では政権批判を十分展開できませんでした。結局、「翼賛体制」づくりの波に呑まれたということです。これでは政権を追い込めません。
 2つ目の戦略的混迷とは、野党共闘の重要性を理解できなかったということです。野党共闘の意味は、当面の選挙で勝つための戦術というレベルにとどまりません。政権交代を単独で実現できない以上、立権・共産・社民・れいわの立憲野党による連立政権を戦略目標として追求するしかありません。この点で腹をくくらなければならなかったにもかかわらず、その位置づけが不十分で共闘に腰が引けたまま本気の取り組みができませんでした。
 総選挙の時は市民連合を仲立ちにして政策協定を結び、各党首が署名しました。しかし、今回は口頭了解で、32の1人区のうち、ようやく実現した11選挙区での共闘も形だけにとどまりました。複数区でも、野党が共闘すれば勝つ可能性がありましたが、それを汲みつくせず、野党は負けるべくして負けたと言えます。
 
◇選挙後の岸田政権の特徴とたたかいについて。

 改憲・軍拡が容易ならざる局面

 五十嵐 容易ならざる危険な局面に立ち至ったと思います。
 昨年の衆議院選挙で改憲議論に反対しない勢力が3分の2を超えていますし、今回の選挙でも、自民・公明・維新・国民民主が3分の2を大きく超えました。
 昨年の総選挙以降、衆議院の憲法審査会では予算審議と併行して議論したり、毎週議論したり、自民党の改憲4項目についても議論するなど、暴走が始まっています。今後は衆議院と歩調を合わせて暴走する危険性があります。自民と維新、公明と国民の間の違いがありますが、今後は改憲発議に向けて動き出す可能性もあり、それを阻止する運動が重要になってきます。
 また、岸田政権は年内に改定される国家安全保障戦略など3文書に大軍拡方針を書き込むこと、来年度予算に向けて軍事費を増やし、5年以内にGDP比2%、11兆円にまで増大することをめざしています。「反撃能力」=「敵基地攻撃能力」保有は、国連憲章の禁止する先制攻撃につながります。軍拡競争の激化を招くことは確実です。

 9条の役割を歴史に即し明確に

 この問題で大事なのは、憲法9条のありがたさ、これを変えることで失うものの大きさを説得的に発信することです。憲法9条は戦争に巻き込まれることを防ぐ「防波堤」です。逆に、安保条約=日米軍事同盟は日本を戦争に引き込む「呼び水」でした。
 その実例は、アメリカが始めた不正義のベトナム戦争やイラク戦争です。安保があるために日本は協力させられましたが、憲法9条があるために全面的な参戦は求められませんでした。ベトナムに自衛隊を送らなかったことは非常に大きなことです。韓国は延べ30万人の兵士を送り、5千人近い若者が命を失っています。日本は憲法9条の制約によって、このような悲劇をまぬかれました。
 イラク戦争で自衛隊はイラクに派遣させられましたが、サマワで陸上自衛隊は給水や道路補修などに従事して戦闘には加わっていません。殺すことも殺されることもなかった。イラクに行った自衛隊は9条のバリアーに守られていたのです。9条を変えることはこのバリアーをなくすことになります。このことを国民に思い出してもらうことが大切です。

 米軍基地・安保のない構想を

 沖縄の米軍基地も日本や沖縄にとってだけでなく、アメリカにとっても無いほうが良かったのです。ベトナム戦争でアメリカの若者が5万8千人も亡くなっています。アメリカはトンキン湾事件をでっちあげてベトナムに軍事介入しましたが、ベトナム戦争で国際的地位を低下させ、ドルの支配力を弱め、多くの若者を失いました。
 沖縄の基地がなければベトナム戦争に介入していなかったかもしれません。あれだけ長く続けられなかったかもしれない。アメリカは基地があったから、戦争という強硬手段に出てしまった。
 いま、アメリカが中国包囲網を強めて「台湾有事」が危惧されています。この問題でも、沖縄や南西諸島に米軍や自衛隊の基地が無いほうが良いのです。アメリカが始めるかもしれない戦争にブレーキがかかるからです。近くに基地があるからということで戦争を始められたら大変なことになります。戦争しにくい状態をつくっておくことこそが戦争を防ぐことになります。この点でも、沖縄の基地を1日も早く撤去することが重要です。
 日本は、本来であれば憲法9条に基づいて平和外交ビジョンを示さなければなりませんでした。それは、①必要最小限の防衛に徹して海外派兵を行わない、②軍事同盟に加盟せず外国の軍事基地を置かない、③仮想敵国をつくらず、対立する国のどちらにも加担しない、④東南アジアの非核武装地帯を東北アジアにも拡大する、⑤すべての国を含む集団安全保障体制を東アジアに構築するというものです。
 このようなビジョンの実現をめざして安保条約のない平和構想を示さなければなりません。それが9条改憲を許さない世論作りにも、大きな力になると思います。


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