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11月5日(月) 民意を無視した「政局ゲーム」に熱中していて良いのか [政局]

 息苦しいのは、日本の政治が悪いからだと思っていました。でも、そうではなかったようです。
 鼻の手術をしてから順調に回復し、空気の通りが良くなって呼吸が楽になりました。息苦しかったのは、左の鼻の穴が詰まっていたせいだったのですね。

 などと馬鹿なことを言っている場合ではありません。日本の政界には、未体験の異臭が漂い始めたようです。
 小沢民主党代表の辞意表明によって、政界は大混乱に陥ってしまいました。とりわけ、代表が“自虐的”な総括をし、勢いをそがれた恰好の民主党にとって打撃は深刻です。
 2日前に、小沢さんについて「政権には近づくのですが、最後のところでの詰めが甘いという弱点があります」と書きましたが、またその弱点が出てしまったようです。過去もそうであったように、今回も、結果的に自民党の危機を救うことにならなければよいのですが……。

 これまでも、小沢さんは「豪腕」とか「壊し屋」などと呼ばれることがありました。今回の突然の辞意表明もまた、「壊し屋」としての性格の表れと見ることができるかもしれません。
 小沢さんは、羽田連立内閣の成立時に社会党とさきがけを追い出そうとし、その後の「自社さ連立政権」樹立の遠因を作り出しました。このとき、連立政権から社会党を排除しようとしなければ、その後の自民党と社会党の連立などは考えられず、村山政権の樹立はあり得なかったでしょう。
 この自社さ連立政権に対抗しようとして、共産党を除く野党は新たに新進党を結成しました。しかしこれも、95年の参院選で躍進して自民党との対抗政党に成長し始めた途端、小沢さんによって空中分解させられ、97年12月にバラバラになってしまいました。

 その後、小沢さんは自由党を結成し、自民党に救いの手をさしのべます。98年の参院選で大敗した自民党にすり寄り、11月には「自自連立」で合意したからです。
 これはその後、公明党を加えた「自自公連立」となります。自自連立の合意は、自民党と単独で連立を組むことをためらっていた公明党にとって都合の良い“呼び水”でした。
 その後、自自両党の合併要求が受け入れられなかった小沢さんは連立解消を決断し、協議に臨んでいた小渕首相は脳梗塞で倒れ、急死してしまいました。小沢さんが、「壊し屋」などと呼ばれるようになったのは、この頃からでしょうか。

 2003年9月、小沢自由党は民主党と合流し、2006年4月、「偽メール」問題の責任を取って辞任した前原代表の後任として小沢さんは民主党代表に就任します。代表として臨んだ今年7月の参院選で大勝したことは、皆さんよくご存知の通りです。
 いよいよ、次期総選挙で勝利すれば政権交代も可能だというそのとき、小沢さんは福田首相の誘いに乗って党首会談に臨み、「大連立」を提案されて党に持ち帰り、役員会で拒否されました。これは代表に対する「不信任」であるというのが、小沢さんが辞意を表明した最大の理由になっています。

 こうして見てくると、妙なことに気がつきます。「あと一歩」というところで、小沢さんは、いつも「チョンボ」を続けてきたということです。
 自分で作ってきたものを、完成間近にぶっ壊してしまうといっても良いでしょう。だから、「壊し屋」などと呼ばれたのです。
 しかし、自民党の側から見れば、「あと一歩」で「もうだめだ」というそのピンチの局面で、いつも小沢さんに“助けられてきた”ということになります。渡辺喜美行政改革担当相が「民主党はチャンスをピンチにしてしまった。われわれは、ピンチをチャンスにしたい」と語ったように、今回も小沢さんは自民党を「ピンチ」から救うことになるかもしれません。

 小沢さんは、実は、14年前に自民党によって野党陣営に送り込まれた「秘密工作員」だったのではないでしょうか。これは途方もない嫌疑だと思われるかもしれませんが、彼の政治的行動の軌跡は、客観的には、自民党の危機を救う結果になっているのが、その傍証です。
 「荒唐無稽だ」と、一笑に付すことができない事実の裏付けがあります。少なくとも、主観的にはどうあれ、客観的には、一方では、自民党のピンチを作り出し、他方では、そのピンチを救うことによって国民の期待を裏切り続けてきたことは明らかでしょう。
 今回もまた、陣頭指揮に立った参院選で自民党を惨敗させ、「衆参ねじれ国会」で窮地に立った自民党に救いの手を延べようとしたのです。小沢さんがこのような行動に出たのは、相手が安倍さんではなく福田さんだったという点も大きかったでしょう。

 いずれにせよ、首脳会談の受け入れ、大連立への志向、政策協議の開始、突然の辞意表明は、参院選で示された民意を根本的に裏切るものです。小沢さんの辞任は当然でしょう。
 それなのに、民主党役員会は慰留する方針で一致し、菅さんや鳩山さんが辞意の撤回に向けて小沢さんを説得することになりました。これに対して小沢さんは、「辞める」と突っぱねるのではなく、「時間が欲しい」と答えたそうです。
 「何を今更。とっとと辞める方が民主党のためだろうに」と、私は思います。民主党も民主党です。辞任会見で民主党の現状について「様々な面で力量が不足しており、政権担当能力に対する疑問が提起され続け、次期総選挙での勝利は厳しい情勢だ」などと言われたのに、辞任撤回に向けて慰留するなんて、どうにかしています。

 もし、小沢さんが、辞めるのを止めて代表を続けることになっても、これまでのようにはいかないでしょう。党内にはわだかまりが残り、疑心暗鬼が生じて団結にヒビが入ることは明らかではありませんか。
 民主党はとっととこの問題に決着を付け、早急に後任の体制を決めて小沢辞任の後遺症を最小限に抑え、民意が望む解散・総選挙による政権交代を目指すべきでしょう。それ以外に、参院選で託された国民の期待を全うする道はありません。
 ここで踏ん張れるかどうか、民主党の真価が問われています。政権交代に向けての大きな関門に直面しているとの自覚を持って、党の団結を回復し、自民党と対決してもらいたいものです。

 それにしても、このような混乱を引き起こすきっかけを作った福田首相の責任は大きいと言わなければなりません。本人は「ビックリしたね」などととぼけていますが、小沢さんに罠を仕掛けたのは福田さんではありませんか。
 それに引っかかった小沢さんの責任も小さくありません。しかしそれよりも、引っかけた福田さんの方に、より大きな責任があるのは当たり前でしょう。
 これで、臨時国会の審議はまたも停滞しそうです。ガソリン価格を始め「値上げの秋」に国民が悲鳴を上げているとき、このような民意を無視した「政局ゲーム」に熱中していて良いのでしょうか。


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ありぎりす

まったく仰る通りだと思います。
独自の機軸、政策が持てなければ
民主党に存在意義はありませんよね。
この際、民主党は自民党に擦り寄る
議員(秘密工作員?)には離党していただき、
”野合”の汚名返上を目指すべきでしょう。
by ありぎりす (2007-11-06 06:04) 

古井利哉

毎日楽しみにこのブログを読ませていただいております。
小沢民主党代表の党首辞任表明とその前後の騒動には本当にびっくりしました。

TV・新聞もこの話題で沸騰しており、やれどちらが先に大連合の話を持ち出したのかとか、小沢代表が17人の仲間を連れて自民に合流するのではないかとか、まさに疑心暗鬼の諸説が飛び交っています。

このブログにおいても、「小沢氏は14年前に自民党から(野党に)送り込まれた秘密工作員では?」などというばかげた妄想が書き込まれています。

今、わが国が未曾有の危機的状況にあることを国民が息を詰めてみつめているところです。
検案のテロ特措法をはじめとする国際問題・年金やC型肝炎にからむ厚労省問題・防衛大臣スキャンダル。果ては、巷では毎日のように報道される業種を問わない偽装問題など、まさしくこの国は国家としての態をなしていません。

この段階において国を憂う心が、自民・民主両党首の会談に行き着いたと素直に見るのが正常な感覚ではないでしょうか?

それをまるで、プロ野球やボクシングの試合を見るような感覚で、「せっかくいいところまで追い詰めたのに・・・・」などと観客席面白がって見るマスメディアの姿勢は断じて許されるべきものではありません。

その論調にあわせたかのように、「お気楽な」本日の五十嵐先生には同意しかねます。
by 古井利哉 (2007-11-06 10:14) 

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