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7月13日(火) 参院選に大きく影響した「大貧困社会」の到来 [参院選]

 昨年の10月、次のような記事が報道されました。

 全国で生活保護を受給している人が、7月時点で171万9971人に上っていたことが8日、厚生労働省の集計で分かった。今年6月からは1カ月で2万1102人も増えており、昨年7月に比べて14万8267人増と大幅に増加した。
 厚労省は「7月は完全失業率が過去最悪となるなど、雇用情勢の悪化が主な要因」とみている。
 受給者が170万人を超えるのは、月平均で174万4639人だった昭和38年度以来の高水準。
 受給世帯数は、124万4660世帯に上り、今年6月より14653世帯増加。昨年5月以降、毎月過去最多を更新している。(『産経新聞』2009年10月8日付)

 つまり、生活保護受給者の数から言えば、日本の社会は高度経済成長前の1963年の水準に戻ってしまったということになります。現在の日本は、「大貧困社会」へと逆戻りしつつあるということです。
 貧しい人が増え続けているというこの現実こそ、今の政治が取り組み解決するべき最大の課題です。今度の参院選で、各政党はこの現実に向き合い、解決に向けての政策を打ち出していたでしょうか。
 この「大貧困社会」という社会の現実は、参院選の結果にも大きな影響を及ぼしていたのではないかというのが、私の仮説です。いくつかの例を挙げましょう。

 一つには、民主党の惨敗です。その主たる要因は消費税率の引き上げ論だったとされていますが、これへの反発と警戒が急速に高まった背景には、人々の生活の貧しさと苦しさがあったのではないでしょうか。
 日本の財政の現状からすれば、何らかの形で財源を確保しなければならないということは理解しているから、消費税率の引き上げに頭から反対することは難しい。けれども、実際に上がるとなると、生活できるかどうかが不安になる。
 消費税率の引き上げについて、当初賛成の意見が多かったのに、菅さんが「10%」という数字を口にした途端、急速に反対論が増えていった背景には、このような国民の心理が存在していたように思われます。

 第2に、みんなの党の躍進です。選挙では、「消費税率の引き上げの前にやるべきことがある」として、公務員改革や財政の削減を訴えていました。
 もちろん、みんなの党が支持を拡大したのは、自民党を見限り、民主党にも裏切られ、行き場を失った有権者の受け皿となったという面が大きいでしょう。しかし、それだけではなかったように思います。
 貧しい人々の多くは、自分たちに比べれば公務員は恵まれていると考えています。みんなの党の公務員攻撃は、公務員や恵まれた人々に対する密かな反感に火をつけたのではないでしょうか。

 第3に、公明党の健闘があります。昨日のブログでも指摘しましたが、公明党は事前の予想よりも良い成績を上げました。
 その背景には、昨日指摘したような投票率低下による「棒杭効果」もあったえしょうが、それと同時に、都市貧困層を多く信者に持つ創価学会の役割も大きかったように思います。公明党は、東京、大阪、埼玉という大都市部の選挙区に候補者を立て、「完勝」しましたから……。
 創価学会には、貧しい人々に精神の「救い」をもたらすだけでなく、互いに生活を支えあう相互扶助的な助け合い機能もあります。このような機能を政治的に補完する役割を果たしている公明党への期待は、貧困化が進めば進むほど強まるに違いありません。

 それにもう一つ、付け加えるとすれば、タレント候補の不振があります。今回の参院選でも多くのタレント候補が立候補しましたが、民主党の谷亮子候補、自民党の三原じゅん子候補や石井浩郎候補などを除いて、軒並み落選しました。
 ここにも、「大貧困社会」の到来が影響していたのではないでしょうか。あまりにも生活が厳しく、実績のないタレント候補に一票を投ずる「余裕」はなかったということでしょう。
 たちあがれ日本の比例候補者で、元巨人軍の人気選手だった中畑清候補ではなく元自民党参院幹事長だった片山虎之助候補が当選したように、政治家としてアマチュアではなくプロを求めたということです。それほどに、政治が取り組むべき課題は切実さを増しているということを、今回当選した人々は十分に認識していただきたいものです。

 このように、今回の選挙結果を生み出した大きな要因として、「大貧困社会」の到来という現実があったように思います。そしてこの現実は、これからの政治のあり方を大きく規定することになるでしょう。
 生活を支え守るのか、それとも破壊し困難を増やすのか。菅首相は消費増税論議をあきらめていないようですが、前者の視点を忘れれば、国民によって今回以上の大きなペナルティを課せられるにちがいありません。
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