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8月25日(日) 今日の政治・経済情勢の特徴と労働組合の役割(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、5月16日に開かれた全農協労連2013年単組三役専従者会議での講演を文章化したものです。『労農のなかま』NO.543、2013年7月号、に掲載されました。4回に分けてアップします。〕

はじめに

 第2次安倍内閣が発足してから次々と新しい政策が打ち出されてきました。なかでも、憲法、労働の規制緩和、選挙制度改革問題は、私が研究対象にしてきたものです。それがどっと出てきました。第2次安倍内閣の発足で悪いものが全部出てきた。「断末魔の内閣」ではないかと思っています。
 このような情勢の特徴はなにか、そして労働組合はそのなかでどのような役割を果たさなければならないのか。これらに焦点を当ててお話したいと思います。

Ⅰ 第2次安倍内閣の特徴

 (1)最悪・最低の内閣―失敗した政治家による破綻した政策のオンパレード

◆ノダメ政権からアブナイ閣へ
 昨年末の総選挙で、自民党が勝って第2次安倍内閣が成立しましたが、その前の民主党政権もひどかった。私はこの政権交代を、「ノダメ政権」(野田ダメ政権)から「アブナイ閣」(危ない安倍内閣)への交代(笑い)、駄目な政権から危ない内閣への交代と呼んでいます。
 どちらにしても、政治を変えて国民の生活と労働を守るということにはなりません。政権交代と第2次安倍内閣の発足によって、経済的にも政治的にも危ない方向が強まってきているというのが、今日の状況です。

◆安倍内閣は最悪の内閣
 安倍内閣は「最悪の内閣」と言っていいでしょう。その政策は最悪で、それを実行しようとしている安倍首相は、一度は総理大臣の職を投げ出した人です。その安倍さんが返り咲いたわけです。
 この人は良かったから、もう一度首相をやってもらおうじゃないか、というのであれば話はわかります。しかし、第1次内閣の時、体調不良ということで辞めた人です。しかも、所信表明演説をした直後に政権を放り出した無責任な人でした。その人が、もう一度〝昔の名前で〟出てきたというわけです。

◆最低の内閣というわけ
 「最低の内閣」というのは、副総理に麻生太郎さんが入っているからです。麻生さんは歴代総理大臣の中でも一番ひどかったのではないでしょうか。漢字が読めないし、感じも悪い(笑い)。結局、何をやったかわからないうちに総選挙で大敗し、民主党に政権を奪われました。歴代の自民党総裁、あるいは自民党出身の首相の中でも極めつきのひどさだったこの人が副総理ですから最低です。
 しかも、法務大臣で入閣したのが、谷垣さんです。野党時代の自民党総裁で、消費税率引き上げの3党合意をやった張本人ですが、その後の自民党総裁選挙には立候補できなかった。というのは、幹事長だった石原伸晃さんが立候補したために派閥の親分から留められ、泣く泣く立候補を取りやめたという、まあ、根性のない人です(笑い)。
 このように、いまの内閣の中心を構成している人たちは、いままでよかった、政策能力がありリーダーシップがあってよかったからもう一度やってもらおうというので出てきたわけではありません。民主党から政権を奪い返し、「新生自民党」ということで新しい人たちでやっていこうじゃないかというのならわかります。そうではなく、どこかで聞いたことのある昔の名前がずらずらと出てきました。これが、第2次安倍内閣の姿です。

◆閣僚19人中15人が「靖国派」
 そればかりか、古い時代錯誤な歴史認識を持っている「靖国派」は内閣19人中15人にもなります。自民党の方も、憲法本文には手を付けずに解釈だけを変えようという「解釈改憲派」から、憲法の条文を書き換えようという「明文改憲派」にシフトしています。このように、自民党は変質したと言っていいでしょう。
 かつての自民党にはハト派やリベラル派もいて、良識のある人もいました。政治的対決点を前面に出すことを抑えて合意を尊重して少しずつ進めていく「合意前進路線」的な政治姿勢を持っていた。政権を担っているときには、それなりに政権政党としてのバランス感覚のようなもの、あるいは矜持のようなものがありました。いまではそのような政治家はいなくなり、タカ派路線で行け行けどんどんというような形になっています。その先頭に立っているのが安倍首相です。

◆オバマ米大統領とは〝話が合わない〟安倍首相
 安倍さんは、アメリカで言えば共和党の中でも右派グループの「ティー・パーティー(茶会)」です。アメリカ独立戦争は「ボストン茶会事件」を契機に始まるのですが、この原理主義的な保守・極右思想を受け継ぐグループです。したがって、民主党出身でボランティア活動や社会運動の経験があるオバマ大統領とは政治的な立場や考え方が違います。
 オバマ大統領は安倍首相と話が合いません。だから、会いたくなかったのでしょう。昨年12月に安倍内閣が誕生しますが、1月のオバマ大統領の就任式典にも出られず、やっと2月21日になって訪米しました。
 オバマさんは安倍さんを警戒していたのです。尖閣諸島問題などで変なことを言われると中国を刺激することになります。これを恐れていました。ところが安倍さんは、集団的自衛権を行使できるようにしてアメリカがやる戦争をお手伝いしますというわけです。オバマさんにしてみれば、ある種「ありがた迷惑」な話でしょう。
 集団的自衛権について、以前はこれを認めるとアメリカが始めた戦争に日本が巻き込まれるのではないか、という懸念が日本の側にありました。しかし、いまは中国との紛争にアメリカが巻き込まれるのではないかとアメリカの方が心配しているそうです。だから、安倍首相の訪米は待たされたのです。

◆安倍首相の「3ない訪米」
 2月21日に安倍さんはアメリカに行きはしましたが、オバマ大統領は空港に出迎えませんでした。大統領主催の晩餐会もありません。終わってからの共同記者会見も行われませんでした。「3ない訪米」と言われていますが、日本のメディアはこのことを全く報じていません。
 会談の中でオバマ大統領から言われたことは、尖閣諸島問題などで中国を刺激するなということでした。安倍さんはオバマさんに警戒されていて、こうなることはある程度わかっていましたから、ますますアメリカにすり寄り、ご機嫌を取ろうとした。そのために、お土産を両手に抱えて行きました。右手にTPP交渉への参加、左手に普天間飛行場の辺野古移転というお土産です。

◆安倍首相の歴史認識にはアメリカも疑問符
 しかし、すり寄ってもダメでした。「安倍首相の歴史認識はアメリカの国益を損なう」と指摘され、「ストロング・ナショナリスト(強固な国粋主義者)」で「帝国主義日本の侵略やアジアの犠牲を否定する歴史修正主義に与して」おり、「その言動は地域の国際関係を混乱させ、アメリカの国益を損なう可能性を懸念させる」というアメリカ議会の調査局報告書が出てしまいます。
 安倍さんも当初はかなり抑えていましたが、従軍慰安婦問題や歴史認識などで、だんだん「地金」が出てきました。彼の何が問題かというと、先の戦争は間違っていなかったという考え方にあります。高市早苗政調会長も「侵略戦争という言葉には、私はしっくり来ないものがある」と言っています。あれは「ABCD包囲網」による経済制裁をやられたから、やむにやまれず日本が起ち上がった自存自衛の戦争だったと言うのです。
 他国に軍隊を送って攻撃すれば侵略戦争です。真珠湾はアメリカの領土ではありませんか。そこを攻撃する前に、日本はすでに韓国を植民地として併合し、中国に軍隊を送って侵略戦争を始めています。これに対する経済制裁として「ABCD包囲網」が形成されたというのが歴史の流れでしょう。植民地政策や侵略戦争を否定するような見解は、このような歴史的経過をまったく無視しています。

◆一番右の席に橋下さん、そして「面汚し4人組」
 最近、様々な批判に直面して、安倍首相は以前に言ったことを訂正しています。かつての「河野談話」や「村山談話」を内閣としては踏襲すると言い出しました。
 これを見た日本維新の会の共同代表である橋下徹大阪市長は、安倍さんが退いたために空いた場所、つまり一番右の極右空間に入り込もうとしました。参議院選挙を前に、自民党との違いを鮮明にしようとしたわけです。
 こうして、当時としては従軍慰安婦が必要だったなどというとんでもない発言をします。沖縄の米軍司令官に対しては風俗業を活用しなさいとアドヴァイスする。女性蔑視で、人権感覚のかけらもありません。よくこんな人が弁護士になれたものだと思います。しかも、日本維新の会の共同代表である石原慎太郎さんもこの発言を擁護しました。
 日本の「面汚し4人組」です。安倍晋三、石原慎太郎、橋下徹、それにイスラム社会を侮辱するような発言をした猪瀬直樹都知事――こういう品性下劣と言いますか、政治家としての資質を疑われるような人物によるとんでもない発言が次々と飛び出してきました。その背景は、安倍さんが総理大臣に返り咲き、タカ派政策をバージョンアップして憲法を変えようなどと言いだしたことにあります。いまなら許されるということで、このような非常識な発言が相次いだのでしょう。
(続く)

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