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5月20日(火) 「三択のトリック」を用いたインチキ調査による「集団的自衛権の行使容認」世論の偽造 [集団的自衛権]

 「産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が17、18両日に実施した合同世論調査で、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認について『必要最小限度で使えるようにすべきだ』との回答を含め約7割が賛意を示した」そうです。その後に「賛意を示した人のうち、憲法改正ではなく、首相が主張する憲法解釈の変更での対応を支持する人も約7割に上り、安倍政権にとって追い風となりそうだ」と書かれています。
 記事では「追い風になりそうだ」とあります。しかし、産経のこの調査は、世論の「追い風」を生み出すためになされたインチキ調査だと言うべきものです。

 集団的自衛権の行使容認については、別の調査もあります。毎日新聞の5月調査では、行使容認に反対が54%、賛成が39%で、行使容認を解釈の変更によって行うことに反対が56%、賛成が37%になりました。
 共同通信の5月調査でも、行使容認に反対が48.1%、賛成が39.0%と反対の方が多く、解釈変更による容認にも反対51.3%と、過半数を超えています。一方の産経調査では賛成が約7割、他方の毎日・共同調査では反対が約5割です。
 賛否が逆転し、大きな差が出ています。同じ国民の世論を調査したのに、どうしてこのような結果になっているのでしょうか。

 また、読売新聞社による5月9~11日の調査でも、「使えるようにする必要はない」が25%、「全面的に使えるようにすべきだ」が8%、「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」は63%でした。産経と同様に、約7割が集団的自衛権の行使を容認する考えを示していたことになります。
 実は、毎日新聞も4月19~20日に実施した調査では、「全面的に認めるべきだ」12%、「限定的に認めるべきだ」44%、「認めるべきではない」36%となり、「全面的」と「限定的」を合わせれば56%でした。それが5月の調査で逆転したわけですが、それは何故でしょうか。

 これについては、『朝日新聞』に次のような解説がありました。
 「毎日新聞、産経新聞・FNN、読売新聞の調査では選択肢は三つ。集団的自衛権 の行使を必要最小限に限るとする、いわゆる『限定容認論』を選択肢に加えたのが特徴で、『全面的に使えるようにすべきだ』『必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ』『使えるようにする必要はない』といった三択になっている。
 結果をみると、『全面』賛成派は1割前後にとどまるが、『限定』賛成派は最多の4~6割。反対派は2~4割だった。『』「全面」と『』「限定」を合わせると、賛成派は反対派を上回る。
 二択では反対派が多数なのに、三択になると賛成派が多数になるのはなぜか。
 まず、三択で賛成の選択肢が二つ、反対の選択肢が一つと数が異なると、選択肢の多い方が回答の比率は高くなる傾向がある。
 さらに、集団的自衛権の問題は、多くの国民にとって理解が難しい面があるのは確かだ。こうした問題で選択肢が三つ以上あると、中間的な選択肢に回答が集まりがちだ。また、『必要最小限の公共事業』『必要最小限の国民負担』という言葉を思い浮かべれば分かるように、『必要最小限』という文言が加わると、反対しにくくなる。」
 というわけで、集団的自衛権の行使容認に賛成が多くなる調査では選択肢が三つあり、そのうち「賛成」が二つ、「反対」が一つですから、賛成の方が多くなりがちなのです。「三択のトリック」とでも申しましょうか。

 冒頭に紹介した産経の調査でも、集団的自衛権の行使容認に関して「全面的に使えるようにすべきだ」10.5%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」59.4%で、「使えるようにすべきではない」は28.1%でした。ここでも「三択のトリック」が用いられており、上で紹介した指摘通りの結果になっています。
 さらに冒頭の記事には、「賛意を示した人のうち、憲法改正ではなく、首相が主張する憲法解釈の変更での対応を支持する人も約7割に上り」とも書かれています。これを読んで、解釈改憲への賛成も約7割もあると早とちりしてはなりません。
 これは、集団的自衛権の行使容認に「賛意を示した人のうち」の割合で、反対した人は含まれていません。「憲法改正が望ましいが、当面は解釈変更で対応すればよい」は46.9%、「必ずしも憲法改正の必要はなく、解釈変更でよい」は23.5%と合わせて7割で、「憲法解釈変更は認められず、必ず憲法の改正が必要だ」との回答は25.8%と、「3択のトリック」が用いられているだけでなく、一番目の設問と二番目の設問はほとんど同じになっています。

 さすが、産経新聞というべきでしょうか。世論調査のトリックというかテクニックを駆使して、集団的自衛権行使容認とそれを解釈改憲で行おうとする「安倍政権にとって追い風となりそう」な世論を、こうして偽造したわけです。
 しかし、そのようなインチキ調査でも、集団的自衛権を「使えるようにすべきではない」は28.1%で、「使えるようにすべきだという人」の中でも「憲法解釈変更は認められず、必ず憲法の改正が必要だ」との回答は25.8%ありました。このような世論の状況が、果たして安倍政権にとっての「追い風」になると言えるのでしょうか。


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