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1月28日(水) 2014年総選挙の結果をどう見るか(その2) [論攷]

〔下記の論攷は、『学習の友』No.783、2015年2月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップします。〕

 真の勝者は共産党

 さらに詳しく票の動きを見ると、次のようなことが分かります。いずれも、新聞などではほとんど注目されていない重要なポイントです。
 今回の選挙の投票率は52.7%で前回よりも6.6ポイント、約500万票減少しました。他方で、前回の2012年に日本維新の会、みんなの党、日本未来の党で約2000万票(比例)を得票した「第三極」は、今回の総選挙では維新の党、次世代の党、生活の党で約1000万票と半減しています。
 これら3党が失った票の半分(約500万票)は棄権に回り(そのために棄権が500万人、6.6ポイント増えたわけです)、残りの約半分(400万票)は、今回得票を増やした共産党(237票)、自民党(104万票)、公明党(19万票)、民主党(15万票)に投じられたと思われます。このうち共産党が増やした得票数は半分以上の237万票ですから、共産党の一人勝ちであったということ、有権者の共産党への期待がいかに大きかったかということがはっきりと示されています。
 自民党が比例代表での得票を104万票増やしましたから、アベノミクスによる一定の受益とその「おこぼれ」に対する期待が確かに存在したことが分かります。しかし、アベノミクスに対する危惧と反対も強く、それは共産党が増やした237万票に反映されました。つまり、安倍首相の「暴走」にストップをかけてほしいという有権者の願いの方が2倍以上も多かったということになります。
 確かに、安倍首相は「寝込みを襲うよう」な突然の解散・総選挙によって与党全体としての現状維持に成功しました。しかし、それはアベノミクスに対する異議申し立ての機会としても有効に活用され、国会の勢力関係を変えて強力な反対者の登場を促す結果となったのです。

 「一点共闘」の「沖縄方式」が開いた可能性

 今回の選挙で注目されたもう一つの点は、沖縄での小選挙区の結果です。沖縄の小選挙区では県知事選挙での経験を生かして新基地建設反対の一点での共闘が実現し、1区で共産党、2区で社民党、3区で生活の党、4区で保守系無所属の候補者が議席を獲得しました。「小選挙区だから当選は無理」とあきらめず、「一点共闘」によって小選挙区でも勝利した点は極めて大きな成果です。
 今後、他の小選挙区でも、「原発再稼働反対」「TPP(環太平洋経済連携協定)からの脱退」「消費税再増税反対」など、それぞれの県や地域において特に重要な争点になりうる課題で「一点共闘」を実現し、共同で推す候補者の擁立に成功すれば、自民党候補にも十分対抗できるでしょう。
 さまざまな政党が単一の争点で協力する「沖縄方式」は、他の小選挙区でも検討されてしかるべきです。今後、このような「沖縄方式」を広げていけば小選挙制の壁を突破できるという新たな展望を生み出した点でも、これは貴重な経験でした。

 ますます重要になる「ブレーキ役」

 今回の総選挙では、アベノミクスなど安倍首相が進もうとしている「この道」に対して、「もう少しやらせてみよう」と思った有権者は自民党に、「あまり行き過ぎては困る」という有権者は公明党や民主党に、「ブレーキをかけて止めてもらいたい」と考えた有権者は共産党に入れたと思われます。それが各党の得票増になって現われています。
 これまでも政策的には「自共対決」とも言うべき構造が存在していました。しかし、今回の選挙での有権者の投票行動においても、これからの国会での勢力分野としても、一段と「自共対決」の構図が鮮明になってきたといえます。しかも、与野党の力関係はあまり変わらなかった一方で、野党内では「自民党野党支部」のような次世代の党が壊滅状態になるなど様変わりしており、共産党が活躍できる余地は格段に高まりました。
 与党で現状維持となったものの自民党の議席を減らした安倍首相にとっては、「めでたさも中くらいなり」という心境かもしれません。それとも、野党内での応援団を減らして手ごわい強敵を増やしてしまったわけですから、「こんなはずじゃなかった」と思っているでしょうか。
 いずれにしても、暴走を続ける安倍首相への「ブレーキ役」として、共産党が果たすべき役割はこれまで以上に大きなものとなることでしょう。各種委員会への委員の派遣など、新たに獲得した国会内での大きな発言力と党首討論への復帰、議案提案権などを駆使して、安倍首相による「亡国の政治」にストップをかけてもらいたいものです。また、労働運動にとっても、今回の共産党の躍進は大きな援軍の登場となることでしょう。

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