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6月26日(金) 一挙に土俵を広げてしまった安倍首相の策略 [国会]

 通常国会は6月24日に会期が終わるはずでした。しかし、安倍首相は戦後最長の会期延長を行い、これを一挙に広げてしまいました。
 世論の包囲によって次第に押し込まれていた安倍首相です。土俵を割ることがないように、その幅を広げて勝負しようと考えているのでしょう。

 衆院は22日の本会議で、24日までの会期を9月27日まで95日間延長することを自民・公明・次世代などの賛成多数で議決しましたが、この延長幅はこれまでの最長記録より1日長くなっています。これは十分な審議時間を確保したというポーズを示すためでしょう。
 国民にきちんと説明して十分な審議を行うべきだという野党の要求に答えたような形になっています。「だから、審議拒否などはやめてちゃんと審議しなさいよ」という圧力を、民主党などにかけたというわけです。
 その結果でしょう。会期延長を批判して審議拒否していた民主党なども復帰して、今日から「戦争法案」についての集中審議が再開されることになりました。

 このような会期延長に、安倍首相の狙いがはっきりと示されています。それはソフトとハードの2段構えなのではないでしょうか。
 当面、維新の党に対する懐柔工作と揺さぶりを強め、その出方をうかがいつつ、あわよくば採決に引き込もうというソフト路線です。そのための橋下大阪市長への接触であり、橋下入閣などの密約説も取りざたされています。
 このようなゆさぶりを受けて維新の党は対案作成という方向で動き出しました。修正交渉には応じないとしていますが、安倍首相からすれば、少なくとも採決に引き出して与党だけでの強行という形にならなければ、それで十分だと考えているのでしょう。

 このようなソフト路線がうまくいかなかったときには、もう一つのハード路線が採用されることになります。自民党と公明党の与党だけの強行採決に打って出ることになるでしょう。
 かつて、日米安保条約の改定批准がなされたとき、最終日に衆院で会期延長と条約の承認が強行採決され、そのために国会は空転して全く審議がなされませんでしたが、条約については衆院優位の原則がありますので新安保条約は自然承認されました。今回も、同様の経過が想定されているように思われます。
 ただし、条約とは違って通常の法案は衆院優位ではなく、自然承認されるというわけにはいきません。そこで活用しようとしているのが、衆院を通過して参院に送られてから60日経ったら否決されたとみなして衆院で3分の2の多数で再議決すれば良いという憲法59条の「60日ルール」です。

 衆院で強行採決し、それに抗議する野党が審議を拒否して国会が空転しても、この「60日ルール」があれば、衆院で3分の2以上の勢力を持つ与党にとって怖くはありません。じっと、時間が経つのを待てばよいのです。
 参院では自民党は過半数を維持していませんから、公明党抜きでは「戦争法案」を採択できません。空転している参院でも審議抜きで与党だけで採決を強行するというのでは、公明党の腰が引ける可能性があります。
 ということで「60日ルール」による再議決路線が登場するわけですが、そうなれば「戦争法案」の衆院通過がいつになるかがポイントになります。恐らく、衆院での審議時間が80時間を超える7月中旬にヤマ場が訪れることになるでしょう。

 このような安倍首相の目論みを打ち砕くためには、会期の大幅延長を逆手にとって「戦争法案」の誤魔化しと危険性を国会審議においてさらに暴露していくことが必要です。当初の会期最終日の24日には3万人もの人が国会周辺に詰めかけましたが、これが10万人に増えるほどにならなければなりません。
 国会内外の運動の連携によって世論に働きかけ、内閣支持率を低下させることです。幸い、この間の世論調査では内閣支持率が5割を切るなど低下傾向を示し始めていますが、これを3割台にまで引き下げ、支持と不支持を逆転させることが必要です。
 地方や草の根での運動を強めることも大切でしょう。地方議会などでは、「戦争法案」の慎重審議や撤回を求める意見書だけでなく、審議促進や採択を求める意見書なども提出されており、民意の争奪戦が始まっていますから……。

 安倍首相の策略によって土俵は大きく広げられてしまいましたが、その中央で投げ飛ばせばいいんです。土俵の広さは関係ありません。
 「こんなに会期を長くしなければよかった」と、安倍さんに後悔させるような取り組みができるかどうかがカギです。平和国家としての岐路に当たって、日本の暑い夏はまだ始まったばかりなのですから……。

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