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9月15日(木) 「手のひら返し」の「壊憲」暴走を許さない―参院選の結果と憲法運動の課題(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、憲法会議の『憲法運動』9月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

2、活路は市民+野党の共同にある―次の総選挙はどうなるか

*2015年安保闘争で成長した市民の力

 昨年、安保法案に反対する国民的な運動が展開された。「2015年安保闘争」とも言うべき大衆的な運動が盛り上がったのである。この運動には、それまでにない特徴があった。
 その一つは、SEALDsやママさんの会、市民連合など、従来になく若者や女性、市民が自主的に運動に加わってきたことである。平和フォーラムや全労連傘下の労働組合、9条の会など以前からの運動団体と新たに加わってきた運動団体が連携し、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会を中心に継続的な集会が開かれ、デモやパレードが展開された。
 もう一つの特徴は、このような国会外での運動と国会内での議員の活動や委員会での質疑などが連動して運動を盛り上げたことである。国会前の集会には野党の議員が参加して決意を表明し、市民団体の関係者は委員会の参考人などとして意見を述べ、憲法審査会で「安保法案は憲法違反」だと断言した3人の憲法学者の証言は運動に大きな影響を与えた。
 そして第3に、これらの市民運動は政党との連携を強め、選挙などにも深くかかわることになる。政治や政党と一定の距離をとってきた従来の市民運動とは、この点で大きく異なっており、市民や政党が連携して開いた集会やデモの中で「野党は共闘」という声が上がったのは自然な成り行きであった。
 安保法は昨年9月19日に成立した。この日の午後、共産党は今後の方針を協議し、「国民連合政権」樹立の呼びかけを行った。安保法の廃止を可能にするような新しい政府を市民と野党との共同の力で樹立しようという呼びかけである。
 この時点から「2015年安保闘争」は新たな局面を迎えた。参院選に向けて野党共闘の成立をめざすという、これまでの国政選挙では経験したことのない新たな運動目標の提示であった。同時に、安保法廃止を目指す2000万署名運動も提起された。市民と政党との共同は大衆運動と選挙闘争との連携という新たな運動領域を切り開いたのである。

*市民+野党の共同が生み出した可能性

 国民連合政府樹立の呼びかけは大きな反響を呼び起こし、多方面から歓迎された。そのためには2016年夏の参院選での野党共闘が不可欠であり、とりわけ1議席を争う1人区で野党統一候補が擁立できるかどうかがカギとなる。これまで野党が乱立したため、自民党が漁夫の利を占めてきたからである。
 2016年2月19日、安保法成立から5ヵ月後に野党5党は国会内で党首会談に臨み、安保法の廃止と国政選挙での協力で合意した。いわゆる「5党合意」である。これによって統一候補擁立が可能になったが、それを実現させたのは共産党による候補者の取り下げであった。
 こうして、熊本を皮切りに32ある1人区での野党統一候補の擁立が進められた。最後まで残った佐賀選挙区でも5月31日に合意が成立する。6月22日の参院選公示まで1カ月もなかった。
 こうして、まるで突貫工事での「プレハブ造り」のように野党共闘が成立したが、その威力は絶大で11人当選という成果を上げた。3年前の2013年参院選で2勝29敗だった野党の戦績は11勝21敗と勝率を5倍以上に高めた。
 東北では秋田を除いて全勝し、甲信越でも完勝した。西でも三重と大分で勝利し、福島と沖縄では現職の大臣を破って野党統一候補が当選している。改憲問題と同様に、自民党はTPP(環太平洋連携協定)、原発の再稼動、放射能被害対策や震災復興、沖縄での新基地建設など、有権者に評判の悪い政策について「争点隠し」に徹した。しかし、隠しきれなかった1人区では軒並み苦杯をなめている。
 民進党は、このような野党共闘の最大の受益者だった。複数区でも健闘して北海道や東京では2人当選させるなど、3年前の17議席をほぼ倍増する32議席を獲得した。その他の野党は、共産党が改選議席を倍増させて6議席、社民党は前回と同じ1議席、生活の党は比例で1議席、1人区で党籍を持つ候補者を2人当選させた。
 28の1人区では、これらの党が獲得した比例代表での得票数を上回り、26の1人区では投票率がアップした。与野党が一騎打ちで対決したために選挙への興味が高まって足し算以上の効果を生み出し、有権者の足を投票所に向けることになったのである。

*解散・総選挙でも立憲勢力の共同を

 安倍首相は参院選で議席を獲得するために「争点隠し」に徹し、与党で70議席を獲得することに成功した。選挙前の記者会見では「新しい判断」という詭弁によって消費税再増税の再延期を表明し、本来であれば最大の争点となるはずだった消費税問題を消してしまった。
 改憲についても同様である。参院選で訴えるどころか街頭演説では全く触れず、改憲について国民の判断を仰ぐという形にはならなかった。そのために、これから改憲を最大の争点にした解散・総選挙に打って出るかもしれない。
 8月3日に第3次安倍再改造内閣が発足した。同時に行われた自民党役員人事で注目されたのが二階俊博幹事長の登場である。二階幹事長は参院選後の7月19日の記者会見で「延長は大いにあって当然のことだ」と安倍首相の総裁任期延長の可能性に言及し、幹事長になってからも「党内の意見をよく聞いて結論を得たいが、政治スケジュールのテンポとしては、ずっと引っ張ってやる問題ではない」と述べ、年内をメドに結論を得たいとの考えを示している。
 中曽根元首相のように、総選挙で圧勝すれば問題なく任期を延長できる。その総選挙で改憲を争点にすれば、国民の信任を得たとして一気に「壊憲」策動を加速させることも可能になる。一挙両得である。安倍首相が年内にも解散・総選挙を考えているのではないかとの憶測が生まれてくる根拠がここにある。
 しかし、このような手前勝手な総選挙の私物化を許してはならない。また、そうなった場合でも、「壊憲」策動を阻止する機会として生かす準備を進める必要がある。再び、立憲野党の共同によって統一候補を擁立し、安倍首相の野望を粉砕しなければならない。
 総選挙で勝利すれば、新しい政府を樹立することになる。野党間の協議を進め、選挙で擁立する統一候補の選定だけでなく政策的な合意を拡大し、新たな政権に向けてのビジョンを作る必要がある。憲法についての見解はもとより、安保・自衛隊、沖縄の基地問題、原発とエネルギー、税制と社会保障、TPP、労働や教育、子育て支援などの基本的な政策についての合意を図ることである。



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